売上高は横ばいも、経常赤字幅が拡大=JR貨物/23年3月期2Q
JR貨物(本社・東京都渋谷区、犬飼新社長)の2023年3月期第2四半期連結業績は、売上高がほぼ横ばいを確保したものの、営業費用の増加で前期より赤字幅が拡大し、経常損益で21億円の赤字となった。主力の鉄道ロジスティクス事業では引き続きコロナ禍による需要低迷が続いたものの、前年に山陽線の輸送障害があったため、実質的な収入では前年並みを維持。通期見通しでは、今年8月の前回予想から下方修正したものの、前期比では81億円増という大幅な増収に加え15億円の経常黒字確保を見込む。11日に会見した篠部武嗣・取締役兼常務執行役員経営統括本部長は「高いハードルではあるが、中距離帯の輸送ニーズの掘り起しなど『2024年問題』の解決に資する営業活動に力を入れ、通期見通しの達成を図る」と述べた。
営業・経常段階での赤字幅が拡大
同社の2Q連結業績は、売上高が前年同期比0・1%増の906億6000万円、営業損益は17億4900万円の赤字(前年同期は4億6400万円の赤字)、経常損益は21億3400万円の赤字(同8億1100万円の赤字)、四半期純損益は23億9400万円の赤字(同24億8900万円の赤字)となった。
売上高はコロナによる需要低迷に加え、8月には北海道や東北、北陸を中心に大雨による影響もあったが、不動産事業におけるマンション販売が好調で、全体ではわずかながらも増収となった。一方、費用面では「東京レールゲートEAST」の竣工により不動産取得税、減価償却費が増加し、営業損益と経常損益での赤字幅が拡大。純損益は前期にEAST開発に伴う撤去費用を特損計上していた反動で、赤字幅が若干ながら縮小した。
鉄ロジ系のグループ会社は利益に貢献
セグメント別の状況では、主力の鉄道ロジスティクス事業の売上高は1・6%減の799億円で、営業赤字は77億円(前年同期は57億円の赤字)。減収となったのは前年に17億円の利益保険収入があったことによるもので、運輸収入自体は前年を若干ながら上回った。不動産事業はマンション販売が好調で、売上高は11・8%増の113億円、営業利益は12・1%増の57億円となり、全体業績をカバーした。
なお、単体での鉄道事業の売上高は636億円(2・2%減)、営業赤字86億円(同66億円の赤字)。連結の営業赤字は単体よりも改善しており、「鉄道ロジスティクス事業では、グループ会社による利益押し上げ効果が約10億円あった」(古田真弘財務部長)。グループ会社では積合せ貨物の利用運送収入や石油輸送収入、倉庫収入などが増収増益だった。
「2024年問題」の提案営業で増収確保へ
通期見通しでは、上期業績を踏まえ、今年8月時点での前回予想値から下方修正したものの、前期比で大幅増収を見込むほか、経常黒字の確保を見込む。売上高は前期比4・4%増の1948億円、営業利益は48・2%増の22億円、経常利益は前期比5・44倍の15億円、当期純損失は4億円改善の10億円の赤字を見込む。
会見で篠部氏は、下期の輸送需要について、コロナ影響をどう読むかがポイントだとした上で「現段階では政府から行動制限の動きが出ておらず、インバウンド需要の回復も期待できる。輸送量は来年1月からコロナ禍の水準に回復するとの見通しを立てている」と説明。さらに増収に向けた取り組みとして、「2024年問題」の解決に資する提案営業を展開していくとした。具体的には、ニーズの拡大が予想される中距離帯や成長業種の絞り込みなど戦略的なターゲット選定を進めていく。篠部氏は「すでに『2024年問題』に対して備えを進めている荷主がいる一方で、まだ危機感があまり伝わっていない荷主企業もいる。いたずらに不安感を煽り立てるわけではないが、早い段階から対策を考えていく中で、鉄道利用を選択肢に加えていただく活動を強化していく」と述べ、下期の増送に期待を寄せた。
(2022年11月17日号)