全国通運連盟、大阪で「通運事業フォーラム」開催
全国通運連盟(渡邉健二会長)は4日、大阪市内のホテルで「第3回通運事業フォーラム」を開催した。通運事業者間の相互連携推進を目的として開催しているもので、今回はコロナ感染防止対策に細心の注意を払って開催。オンラインでのライブ配信との併用で、大阪会場には約100人が参加した。
冒頭挨拶した渡邉会長は、社会経済や物流を巡る環境が大きく変化している中で、鉄道コンテナ輸送は温暖化対策や構造的なドライバー不足対応の観点から、ニーズが一層高まってくると指摘。その上で「海運業界は国内において2050年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げて動き出している。我々、通運業界もJR貨物とともにどういう形でカーボンニュートラルを達成していくか、方向性を示す時期に来ている」と強調した。
また、「お客様のニーズを的確に捉え、モーダルシフトの推進や定着に向けた取り組みを強化していく必要がある。そのためには、ラウンドユースによる積載率の向上やパレット化による集配業務の効率化など通運の生産性向上を進めていかなければならない。会員相互の連携や協働が非常に重要だ」と述べ、フォーラム開催の意義を説明した。
来賓として挨拶した国土交通省の金井昭彦近畿運輸局長は、カーボンニュートラルやSDGs、総合物流施策大綱で示された物流DXや標準化の重要性を指摘した上で、「トラックと鉄道の組み合わせは課題解決策のひとつであり、通運事業に対する期待は今後ますます高まっていく」と鉄道モーダルシフトの必要性を強調した。
引き続き行われた講演会では、流通経済大学の矢野裕児教授が「カーボンニュートラルに物流はどう対応するのか」、湯浅コンサルティングの芝田稔子コンサルタントが「SDGsが変える荷主の物流」をテーマにそれぞれ講演した。
矢野氏は、カーボンニュートラルの達成に向けて、各企業は原料などの採掘から商品廃棄に至るまで、自社が担当する部分以外を含めたサプライチェーン全体での対策や目標設定が求められていると説明。2050年のカーボンニュートラルを達成するためには、荷主企業でもさらなる物流部門での取り組むが求められる一方、単体企業や物流部門だけの取り組みはほぼやり尽くしており、今後は部門間や企業間での調整や連携が不可欠になると指摘した。ただ、「環境問題は他部門を巻き込む手段としては非常に有効」だとして、環境問題を切り口にロジスティクスが抱える諸課題を改善していくという視点が重要だと述べた。
芝田氏は、SDGsが掲げる理念や17の目標などを説明した上で、SDGsや近年の物流危機の顕在化などによって、「荷主企業と物流事業者との関係が、強大な敵を前にすることで〝仲間〟になった」と説明。荷主企業が物流部門でのSDGsのために取り組んでいる事例などを紹介しながら、通運事業者もそうした荷主ニーズに適ったサービス提供が必要だとした上で、通運事業者自身もSDGsの取り組みを積極的に発信していくべきだと述べた。
(2021年11月11日号)