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海上運賃高騰で陸上輸送に値下げ圧力

2021.04.06

世界的なコンテナ不足とスペースのひっ迫により海上運賃が高騰し、船会社の業績が大きく改善する一方、そのラストワンマイルを担う海コンの陸上輸送は苦境に立たされている。荷動きは回復が見られるものの、船の遅延が頻発し、受注が混乱。基幹航路を中心にコンテナターミナルが混雑し、ゲートでの長時間待機が発生している。近年、上昇機運にあったドレージ運賃は、海上運賃の高騰の煽りを受けて再び値下げ圧力が強まっている。エジプト・スエズ運河での大型コンテナ船の座礁によるスケジュールの乱れの影響も注視される。

物流コスト上昇、国内運賃で値下げの動き

新型コロナウイルス感染拡大により、昨春は取扱数量が大きく落ち込んだ海上コンテナドレージ。今年に入ってからは例年並みの荷況に戻りつつあるが、海コン業者の表情は暗い。海上輸送はコンテナ不足と荷動きの活況が重なり、運賃が倍以上に上昇しているケースもあるが、陸上輸送はその恩恵を受けられず、むしろしわ寄せがきている状況だ。
「20年前の料率のレートを荷主に提示された」――。海コン業者の幹部はこう打ち明ける。

近年、ドライバー不足の深刻化により荷主や海貨業者はドレージ確保に苦慮し、運賃は上昇基調にあったのが、新型コロナウイルス感染症による市況の悪化で状況が一転。海上運賃高騰で上昇した物流コストを下げるため、陸上輸送の値下げの動きがみられる。

「コンテナ船の運賃が上昇しているため、国内の物流事業者は物流コスト削減の煽りを受け、とくに今年に入ってからは、運賃を下げざるを得ない環境になっている。ドライバー不足が緩和したこともあり、価格交渉で大手荷主は強気な姿勢だ」という。荷主の提示価格よりもさらに安値受注に走る海コン業者もあり、マーケットに混乱が生じている。

フリータイム短縮でドライバーの残業も

世界的なコンテナ不足と北米欧州での港湾荷役の停滞は、遠く離れた日本の海コン業者の業務にも影響を及ぼしている。船の入港遅れにより「受注で溢れかえる日もあれば、いきなりキャンセルもある」(海コン業者)など動静に振り回されている状況。また、船の遅延でターミナルにコンテナが溢れ、ゲートの混雑が発生。7時間におよぶ長時間待機もみられる。

コンテナの在庫が少ないことから、コンテナをピックアップしてからターミナルに返却するまでの「フリータイム」の期間を短くしている船会社もある。「土日も含めて5日間」というケースでは、海コン業者のシャーシの配車繰りがタイトになり、「期間内に返却するため、ドライバーの残業で対応している」例もある。

荷動きは回復傾向にあるものの、値下げ圧力、ターミナルの混雑などによって海コン業者の事業環境は悪化。スエズ座礁でさらなる混乱も予想される。陸上輸送を巡っては、ドライバーの高齢化とともに、2024年4月には時間外労働の上限規制も適用される。ドライバーの余剰感は一時的とみられ、持続可能性を見据えた適正取引が求められそうだ。
(2021年4月6日号)


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