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国交省が異常気象時の運送目安を設定

2020.03.05

国土交通省は2月28日、台風などの異常気象時でのトラック貨物輸送を行う場合に輸送の安全を確保するための目安を定めた通達を施行した。輸送を中止した場合に判断の理由を報告することや、荷主から輸送を強要された場合に通報することなどが盛り込まれた。異常気象時に必要な安全確保を怠って運行した事業者は行政処分の対象となり、輸送を強要した荷主は、改正貨物自動車運送事業法が定める国土交通大臣の「働きかけ」の対象となりうる。

目安によると「50㎜/h以上」の降雨時は車の運転が危険であり、「30m/s以上」の暴風時には走行中のトラックが横転することから「輸送することは適切でない」とした。また、大雪注意報の発表時には、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンの装着、適切な速度で走行するなど安全運行に必要な措置を講じるべきとした。
輸送を中止しない場合、直ちに行政処分とはならないが、国交省の監査で輸送の安全を確保するための措置を適切に講じずに輸送したことが確認された場合、「貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」に基づき行政処分を行う。違反が見つかった場合、初回は警告処分が科せられ、2回目は10日車の車両停止処分となる。3回目以降も同様に10日車の車両停止が科せられる。

荷主勧告制度に基づき「働きかけ」も

また、事業者が気象情報などから輸送中止を判断した場合は、直ちに荷主へ報告し、運送約款等に基づき相談するよう定めるとともに、安全な輸送が行えない状況であるにもかかわらず荷主から輸送を強要された場合は、国交省が設置する「意見募集窓口」や最寄りの地方運輸局・運輸支局などに通報するよう要請した。
寄せられた情報は国交省と農林水産省、経済産業省など荷主所管官庁と共有。その上で、輸送の安全確保について荷主の配慮義務を設けた改正貨物自動車運送事業法に基づき、安全運行確保には荷主の配慮が重要であることについて理解を求めるため、国交大臣による「働きかけ」を行う(2023年度末までの時限措置)。

さらに、輸送を強要し、事業者の違反原因行為を行ったことが明らかになった荷主については、荷主勧告制度に基づき「要請」や「荷主勧告」、「荷主名公表」などの対象となる。今後、国交省は荷主団体に向け、今回の通達について文書によって説明を行うとともに、荷主勧告制度の周知を図る。

「運行中止は荷主と事業者の間で判断を」

トラック運送事業では、貨物自動車運送事業法第17条と貨物自動車運送事業輸送安全規則第11条により、事業者は輸送の安全を確保し、異常気象により輸送の安全確保に支障が生じるおそれがあるときは、ドライバーに対し、輸送の中止など必要な措置を講じることが定められている。昨今の台風などの異常気象時には、事業者が輸送の安全を確保することが難しい状況の下、荷主に輸送を強要され、トラックが横転するなどの事故が発生。こうした場合、ドライバーの生命・身体に傷害などが及ぶ可能性があるほか、当初の運行計画が崩れることで物流全体の効率性が損なわれ、持続的な物流機能にも影響が生じることから、事業者からは運行中止の判断を行うための目安を求める声が上がっていた。

国交省は目安について、安全を確保する観点から、必要な措置を講じるために示したものであり「荷主と事業者が、輸送の安全確保について配慮した上で具体的な取り扱いを定めることは差支えない」としている。また、運送中止の場合の取り扱いについては「事後の紛争を防止するため、事前に荷主との運送契約書などで定めておくことが望ましい」としている。
(2020年3月5日号)


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