鈴与が働き方テーマにトークセッション
鈴与(本社・静岡市清水区、鈴木健一郎社長)は22日、本社「CODO」で“働き方とデザイン”をテーマに据えたトークイベントを催した。CODOは昨年9月に同社講堂をリニューアルした、新コンセプトのワークスペース。当日は鈴木社長がデザイン会社2社の社長とともに登壇し、集まった鈴与グループの社員やデザイン業界関係者らは時折メモを取るなどして興味深そうに耳を傾けていた。
鈴木社長とのトークセッションに参加したのは、CODOのデザインに携わったロフトワークの林千晶社長と、鈴与がスポンサー契約を結ぶサッカーJ1清水エスパルスのクリエイティブディレクターでもあるTkramの田川欣哉社長。両者とも、経産省および特許庁主導による「デザイン経営」宣言のコアメンバーであり、セッションでは「それぞれの会社の空間を変えた理由」「空間のチカラと働き方のデザイン」「これからの働き方とデザイン経営」をテーマに意見を交わした。
鈴木氏は冒頭、「清水や鈴与をマグネティック――磁場を発生させる場所にしたいと考え、色々なチャレンジを進めている」とした上で、今回のCODOリニューアルの狙いを「事業成長の中でオフィスの一人当たりのスペースが縮小していたことに加え、社屋の老朽化、さらには人手不足に対しても、人を引きつけるオフィスの必要性を感じていた。働き方を変え、組織の壁を取り払い、多様なコミュニケーションを可能とするとともに『変化のスイッチ』を入れたいと考えた」と説明した。
田川氏もCODOについて「未来は日々の小さな変化で作られるものであり、このスペースを見た鈴与の社員に『これだけ変化してもいいんだ』とのメッセージが伝われば、個々のビジネスにおいても新しいことが考えられるだろう。世の中は変化の時期に来ている。社内の変化への意識が見えた時がCODOの成果といえるのではないか」と述べ、林氏も「長い鈴与の歴史の中で、ここが変化のポイントになるだろう。場所が変わって一番変化してほしいのは社員であり、社内にこの輪を広げていってほしい」とエールを送った。
デザイン経営については、林氏が「会議室で話される内容は、売り上げをはじめとする数字などの左脳的な要素が強いが、我々の生活で記憶に残るのは右脳的な経験。ビジネスは左脳に寄りがちだが、デザインは右脳的ともいえる」と話すと、鈴木氏も「私は左脳的な人間だが、右脳的な思考がないと新しい発想は生まれず、これからの経営は難しい。CODOを使うことでそのバランスを取りたい。フリースペースとして色々な社員が集い、隣のミーティングが見えるようになると、自分の意見を言えたり、自分の学びや新しい発想にもつながる」と応えた。
また、地域との関わりにも触れ、鈴木氏は「CODOは清水にない空間となった。これを見て、他の会社が『当社もやろう』と思ってくれたら嬉しい。こうした空間が地域に増えれば、清水や静岡が変わる。新しいチャレンジの中で地元の人たちとの交流が生まれ、人やモノが交差し、新たな価値が生じるだろう」と展望した。
今回のトークセッションは、CODOのリニューアルに込めた同社の想いや狙いを、社内外に広く伝えることを目的のひとつに企画されたもの。鈴与としても初めての試みであり、「今後も催していくことで、今日議論に上がったことが一つひとつ実現されていくのではないか」と鈴木社長も期待を寄せる。その上で、「ここが始まりであり、このスペースを使ってどのような取り組みをしていくかが重要。CODOを使って清水という地域の活動も変わっていくのではないか」と話した。
CODOは鈴与本社の5階全フロアを活用し、講堂としてのみならず、個人でもグループでも多様なワークスタイルで働ける空間としてリニューアルしたスペース。名称には、同社の経営理念である「共生(ともいき)」の精神を引き継ぐ「共に生きるCO‐DOing」になぞらえた「CODO」を用い、同社のみならず地域や顧客、パートナーを取り巻く全ての人を「温かく迎え入れる」場所をコンセプトに据えている。
(20年1月28日号)