メニュー

今年の法制度改正、物流業界の影響は…

2024.01.14

2024年も様々な法制度改正が予定されている。物流関係者が最も注目するのが、4月から始まるトラックドライバーに対する時間外労働時間の上限規制と改正改善基準告示の適用だ。今年の通常国会では、大手荷主に荷待ち時間削減や物流改善計画の策定を義務付ける、いわゆる荷主規制法案やトラック運送業界の多重下請け構造の是正に向けた規制について審議される予定。また、貨物軽自動車運送業の安全対策を強化する法案も提出される方向にある。物流業界をめぐる法制度の動向に目が離せなさそうだ。

【時間外労働上限規制が適用】
4月から、トラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用される。5年間の猶予期間を経て実施されるもので、4月以降、トラックドライバーの時間外労働は原則、月45時間以内、年360時間以内とし、特別条項付き36協定を締結した場合でも、年960時間(月80時間)以内とする。

この時間外労働「年960時間」の上限規制は労働基準法により定められたもので、違反した場合は罰則の対象となる。具体的には、30万円以下の罰金または6ヵ月以下の懲役が科せられる。4月までに事業者は正確な労働時間の把握と労働時の間削減、荷主は待機や荷待ちなど長時間労働の原因をつくっていないかのチェックが求められる。

【改正改善基準告示が施行】
自動車運転者の運行時間などのルールを定めた改善基準告示が22年12月23日に改正され、今年4月1日から適用される。1年の拘束時間は原則3300時間(最大3400時間)に、1ヵ月の拘束時間は原則284時間(最大310時間)と現行より短くなり、1日の休息時間は継続11時間を基本に、9時間を下回らないようにする。

1日の拘束時間は原則13時間以内と変わらないが、上限15時間、14時間超は週2回までと現行よりも厳しくなる。また、事故や車両故障など予期せぬ事象への対応時間は、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間から除外できる。改善基準告示は違反しても罰則はないが、貨物自動車運送事業法により行政処分の対象となる。

【テールゲートリフター作業に特別教育】
トラックの荷役作業における労働災害防止措置を強化するために、労働安全衛生規則が改正され、2月からテールゲートリフターを使用して荷を積み降ろす作業への特別教育が義務化される。具体的には、テールゲートリフターの操作者に対し、学科教育4時間、実技教育2時間の安全衛生に係る特別の教育を行うことが必要になる。

「テールゲートリフターの操作」には、稼働スイッチの操作のほか、キャスターストッパー等の操作、昇降板の展開、格納操作も含まれる。事業者は特別教育の受講者、科目等の記録を作成し、3年間保存しなければならない。なお、施行の日時点において6月以上の業務従事歴を有する者、特定の教育や講習を受けた者は一部の科目や時間を省略できる。

【高速道での大型トラック最高速度引き上げ】
トラックドライバー不足が懸念される「2024年問題」に対応するため、警察庁の高速道路における車種別の最高速度の在り方に関する有識者検討会は12月22日に、高速道での大型トラックなどの最高速度を現行の時速80㎞から90㎞に引き上げる方向性を示した。24年4月からの実施を目指し法改正手続きを進める。

検討会は、「現行の速度抑制装置を存置した上で、法定速度を90㎞/hに引き上げたとしても、交通の安全に大きな影響をもたらすとは考えられない」とする一方で、「これより高い速度への引上げは、車両の安全性能が担保されていないこと等を踏まえれば、現時点では不適切」と結論。車両開発の動向によっては速度引き上げ検討の可能性に含みを持たせている。

【労働安全衛生規則改正】
労働安全衛生規則改正が4月1日に施行される。リスクアセスメントが義務付けられている化学物質の製造、取り扱いまたは譲渡提供を行う事業場ごとに「化学物質管理者」の選任を義務化。労働安全衛生に基づくラベル表示・SDS等による通知の義務対象物質を順次追加する。

国内で輸入、製造、使用されている化学物質は数万種類にのぼり、その中には、危険性や有害性が不明な物質が多く含まれる。化学物質を原因とする労働災害は年間450件程度で推移しており、がん等の遅発性疾病も後を絶たない。化学物質による労災を防止するため、労働安全衛生規則の改正を行った。

【フリーランス保護法】
23年5月12日に公布されたフリーランス保護法が、24年秋ごろまでに施行される。個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内の報酬の支払い、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられる。

フリーランス事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額することや通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬の額を不当に定めること、正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制することなどが禁止される。物流業界でも軽貨物のフリーランスドライバーを活用する場合は注意が必要だ。

【障がい者雇用率が4月から引き上げ】
障害者雇用促進法が改正され、24年度から企業が雇用すべき障がい者人数が引き上げられ、また義務対象となる企業の範囲が拡大される。民間企業の障がい者の法定雇用率は現在の2・3%から段階的に改訂され、24年度からは2・5%、対象事業主の範囲は「従業員43・5人以上」から「従業員40・0人以上」へと拡大する。
26年7月からは法定雇用率は2・7%に上昇し、対象事業主は「37・5人以上」とさらに拡大。厚生労働省がまとめた23年の障害者雇用状況によると、雇用障害者数、実雇用率ともに過去最高を更新。法定雇用率達成企業の割合は50・1%だった。なお、「運輸業、郵便業」の実雇用率は2・39%で法定雇用率を上回っている。
(2024年1月16日号)


関連記事一覧