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物流危機で荷主企業に“内製化”“事業化”の動き

2019.01.31

トラックドライバー不足に端を発した物流危機を契機に、荷主企業が物流を“内製化”するとともに、一歩踏み込んで“事業化”に乗り出す動きが出てきた。内製化の手法としては物流子会社を設立したり、実運送機能を持つ物流会社の買収を通じて〝足回り〟を強化するケースが見られる。自社の物流の安定化を目指すことを第一義としながらも、内製化を通じて物流機能を強化し、新たなビジネスにつなげたい思惑もうかがえる。

物流への戦略的投資、新たなサービス提供も

パレットなどプラスチック製品の製造・販売を手掛ける岐阜プラスチック工業(本社・岐阜県岐阜市、大松栄太社長)は昨年12月20日に関東エリアを中心に運送事業を営む橋爪運輸の全株式を取得し、子会社化した。同社の企業規模は売上高15億円、トラック保有台数70台、従業員数154人。物流危機に対応するため、安定供給に向けた物流への戦略的投資を目的としている。

同社が持つ包装資材のきめ細かい配送ノウハウに加え、統合管理システムの導入によりデータの一元管理を図ることにより、事務処理の平準化、車両別の運行管理などのIT技術を充実。デポ倉庫の統廃合によるリードタイム短縮や引き取り物流の模索などの顧客連携により、自社内物流を超えたサプライチェーンの枠組みで最適物流を再構築し、安定的に商品を届ける体制をつくる。

建機レンタルのニッパンレンタル(本社・群馬県前橋市、石塚春彦社長)は10日、100%出資の貨物運送事業会社として、「エヌパワートランスポート」を資本金500万円で設立した。建機の運送分野でもドライバー不足、燃料費の高騰といった課題を抱えており、運賃も高騰。こうした中、子会社を設立することで運送事業を内製化し、効率化を図ることで営業所間の建機の移動にかかる運送費用の削減を目指す。

損害車買い取り最大手のタウ(本社・さいたま市中央区、宮本明岳社長)では、100%出資子会社のTGL(ティージーエル)を資本金3000万円で昨年7月に設立し、今年1月1日から不動車輸送事業を開始。基幹事業である損害車買取・販売で培ってきた不動車輸送のノウハウ・経験と、日本全国に張り巡らされた独自の物流ネットワークを活かし、新たな物流サービスの提供に取り組む。

また、昨年8月には家電量販のビックカメラ(本社・東京都豊島区、宮嶋宏幸社長)は埼玉の運送会社であるエスケーサービスを完全子会社し、家電製品の配送・設置工事を強化している。同社は、家電工事、納品代行、オール電化工事なども展開しており、新たなサービス提供や配送効率化などが実現できるものと判断した。

管理・戦略機能を本体に一本化する動きも活発

内製化を目的に新たな物流子会社が設立される一方で、管理機能の集約や環境変化に迅速に対応するため、物流子会社を吸収合併する“内製化”の動きも依然としてある。ライオン(本社・東京都墨田区、濱逸夫社長)は12月26日に、2020年1月1日付で100%出資の物流子会社であるライオン流通サービスを吸収合併すると発表。物流管理業務の整備と物流政策実現のスピードアップを図るのが狙いだ。

「無印良品」ブランドを展開する良品計画(本社・東京都豊島区、松崎曉社長)は18年3月に子会社であるアール・ケイ・トラックを本体に吸収した。経営プラットフォームを本体に一本化し、柔軟なサプライチェーン戦略の展開により機能強化を図ることが目的。今後は物流安定化のために“現業”運送会社をM&Aする動きとともに、スタッフ部門を中心とした戦略策定機能を本社の物流部門に集約する2つの傾向がトレンドになっていきそうだ。
(2019年1月31日号)


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