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【国交省】運送以外の役務、実態把握に難航=標準運送約款改正

2017.11.07

標準貨物自動車運送約款の改正が4日に施行された。改正約款では運送の対価としての「運賃」と運送以外の役務であるトラックの積み下ろしや積み込み、荷待ちなどの対価を「料金」と規定した。トラック事業者ではこれまで有償化できていなかった運送以外の役務の対価を運賃とは“別建て”で収受できるようになる。しかし、物流現場でドライバーが行っている役務は、業態や商慣習、個々の取り引き関係、現場ごとに多種多様。運賃・料金を支払う側の荷主も実態把握に難航している様子がうかがえる。

荷主に罰則なし、事業者は違反対象に

改正約款の主なポイントは、①「運賃」と「料金」の区別の明確化②荷主都合の荷待ち時間の対価を待機時間料と規定③附帯業務の内容の明確化(附帯業務に「棚入れ」「ラベル貼り」等を追加)――の3つ。施行後は、荷主は運送状に「運賃」と、積込み・取卸し、附帯業務の「料金」を区別して記載。また、トラック業者は新標準約款を営業所に掲示しなければならず、「積込料」「取卸料」「待機時間料」を新たに設定した運賃・料金表の変更届を行う必要がある。

この約款改正に関しては“荷主に甘く、事業者に厳しい”側面もある。トラック業者が新約款に基づき、現行の運送契約の見直しを荷主に求め、これを拒否された場合、貨物自動車運送事業法では強制力や罰則等の規定はない。その一方で、トラック事業者側は運送料金変更届出または約款の認可申請のいずれも行っていない場合や新約款を営業所に掲示していない場合、監査で違反の対象となる。なお、変更届出は施行から30日以内に行わなくてはならず、新約款を使用するトラック事業者は速やかな対応が必要だ。

「現場都合」の附帯作業も、把握には相当な労力

約款の改正に適切に対応するため、大手荷主は自社の工場や倉庫での待機時間やドライバーの附帯作業の調査を始めている。しかし、納品先の附帯作業に関しては、発荷主と着荷主の納品条件、実態や始まった経緯の把握が困難。納品先とドライバーとが双方の「現場都合」で附帯作業が習慣的に行われているケースも頻繁にある。同じ納品先であっても現場ごとに附帯作業の実態が異なり、正確に把握しようとなると相当な労力と時間がかかるとみられている。
荷主が物流現場の実態把握を急ぐもうひとつの背景には、7月からスタートした新たな荷主勧告制度がある。新制度ではトラック事業者の法令違反行為に「荷主の関与」が認められると、荷主勧告が発動され、荷主名が公表される。「荷主の関与」の具体例には「荷待ち時間の恒常的な発生」「非合理な到着時間の設定」「やむを得ない遅延に対するペナルティ」「重量違反となるような依頼」が挙げられており、こうした事案が発生していないかどうか確認を急いでいるようだ。

ある住設関連メーカーでは「工場や倉庫、納品先でドライバーがどのような業務を行っているか」について調査に乗りだした。「まだ完全には把握できていない」との認識だが、同社は3PL業者に物流管理全般を委託しており、末端の運送業務は3PLの管理下にあることから、「荷主勧告が入ることを考えると、当社自らが立ち入らざるを得ないが、3PLを飛び越えて立ち入れるのか、あるいは立ち入らなければならないものか」と物流担当は頭を悩ます。

荷主の指示か、運送会社都合かがはっきりせず

「パンドラの箱を開けてしまった」――。今まで荷主が知らなかった物流現場の実態が明るみになってきたことを、食品メーカーの物流担当者はこう表現する。ドライバーの附帯作業については多種多様で、すぐには全容の把握が困難であるため、“安全性”や“荷主責任”の観点から、「これだけはやめてほしい!」という項目を優先的に改善したり、やめさせるなどし、附帯作業とコストとの紐づけにはまだ明言を避ける。

ある菓子メーカーの物流担当者は、納品先での附帯業務や待機時間に対し「“理想的ではない状態”に対してコストを払うというのではなく、その状態を改善して費用が発生しないようにすることを考えるべきだ」と話す。日用品メーカーの物流担当役員も「現行運賃の中から附帯作業等の料金を切り分け、その上で作業の負荷・労力に見合った料金を収受できていないようであれば是正していくのが妥当」とみる。

ドライバー不足の解消と労働環境改善を図るためには、トラック事業者の適正運賃・料金の収受が不可欠とされる。その方策として今回の約款改正が行われたわけだが、荷主が慎重な姿勢をみせるのは、単にコストアップを警戒しているからではなく、そもそも附帯作業や待機時間が荷主の指示によるものなのか、運送会社都合なのかがはっきりしないことが理由として挙げられる。

また、運送以外の役務は広範囲・多岐にわたり、長い間運送業務の一部ととらえられてきた。荷主からは「もっと業態や商慣習が尊重されてもよいのでは。画一的なルールで縛るとサプライチェーンの不具合や関係者間の軋轢が生まれる可能性がある」(住設関連メーカー)、「附帯作業と言っても一括りにはできず、商慣習や業界特性に配慮しながら丁寧に仕分けしていく必要がある」(日用品メーカー)という声もある。
(2017年11月7日号)


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