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「来年は物流の課題が浮かび上がる1年に」=物流連・池田会長

2022.12.13

日本物流団体連合会(物流連)の池田潤一郎会長(日本船主協会会長、商船三井会長)は6日に記者会見し、2023年の物流業界について「我々物流業界とお客様である荷主とが物流を取り巻く課題に対する認識を共有し、一緒に対応策を図っていく必要性が高まるだろう」との認識を示した。また、中国から日本に生産活動が回帰する動きが出ていることについて、「国内で新たにモノが生産され、物流が発生することは物流業界にとっても有難いことだが、『2024年問題』や労働力不足が深刻化する中で、果たしてそれが可能なのか」との問題点を指摘した。

国内物流は「2024年問題」が焦点に

池田会長は、来年の物流業界に対する展望について、「海運を中心とした国際物流の世界では、米国西岸で多数の船が滞船するよう混乱はひとまず解消した。物量減もあり、昨年や今年前半のような大混乱は起きないだろう。しかし、欧州や米国では引き続きストライキの動きがあり、一部で混乱のタネは残っている」と述べた。

一方、国内物流については「『2024年問題』がいよいよ目先に迫ってくる。国内物流はその対応がクローズアップされるだろう。若年層を中心とした労働力不足によって物流現場は厳しくなってきており、コロナ前のようにスムーズかつ低コストで物流を担うことは難しくなってくる。前々から物流はその重要な役割に見合った対価を受け取るべきだと主張しているが、現実問題として物流にしわ寄せすればいいという状況ではなくなってきている。世間でもそうした認識が高まってくるのではないか」との考えを示した。

業界と荷主が認識共有し対応策を

その上で、個人的に関心がある動きとして、日本への生産回帰の動きに言及。「中国にオフショアリングした生産活動が日本に帰ってくる動きが実際に出ているが、日本国内での労働力が不足している中で、国内回帰ができるものなのか、さらに回帰したとして物流が対応できるのか――。国内で新たな生産活動が起き、モノの流れができることは物流業界にとって大変有難いことだが、果たして対応し切れるのか、スムーズにオペレートできるのか」との問題点を提示した。「そうした意味からも、物流業界が抱えている課題がくっきりと浮かび上がってくる1年になるだろう」との見通しを示すとともに、「物流業界と荷主とが課題についての認識を共有し、一緒に対応を図っていく必要性が高まるだろう」と述べた。

パレット循環スキーム、年内に取りまとめ

物流施策の推進で物流連と共同歩調をとっている国土交通省の物流部門が、来年度の組織改正で自動車局に統合され「自動車・物流局(仮称)」になることについて、池田会長は「国交省が様々な課題や環境変化に対応すべく組織を不断に見直していく中で、今回の動きになったと承知している。これまで通り緊密な連携を取りながら、諸課題に取り組んでいくことが当連合会の役割だ」との見解を述べた。その上で「個人的には、物流を巡る諸課題はトラックに関連する部分が多いため、今回の形になったのだと理解している」とした。

長谷川伸一理事長は「物流の太宗を占めているのはトラックであり、物流施策を一体的に運用しようということだと理解している。国交省の物流部門は総合物流施策大綱など省内の各部門や省をまたいで連携する部分も多いが、新体制ではそうした観点についてさらに推進してほしい」と述べた。

会見では、今年度の物流連の活動についても報告。物流標準化では、6月に立ち上げた「物流標準化調査小委員会」で物流事業者が考えるパレット循環スキームについて検討しており、運用面での課題などを年内に取りまとめ、国交省の官民物流標準化懇談会の下部組織であるパレット標準化推進分科会に報告する予定。

池田会長は「カーボンニュートラルなど環境が大きく変わっていく中で、物流がその流れに沿ってしっかりと発展を遂げていく。そのための『改革の波』をつくっていきたい。物流連としては先進的な取り組みを皆さんに広く知ってもらい、ベストプラクティスを展開していくことが課せられた使命だと考えている」と強調した。
(2022年12月13日号)


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