メニュー

Amazon ECサミット、クール宅急便の新たな仕組み構築へ

2022.10.18

ヤマト運輸(本社・東京都中央区)の長尾裕社長(写真右)は12日の「Amazon ECサミット2022」のセッションで、クール宅急便においてEC利用を前提とした新たな仕組みを構築中にあることを明らかにした。長尾氏は「(EC市場における)食品領域は今後、非常に有望」との考えを示した上で「この領域でいかにオンライン消費に適したプロセスを作るかがこれから非常に重要となる」と強調した。

「食品EC領域は今後、非常に有望」

「Amazon ECサミット2022」はアマゾンジャパンがAmazonに出品する販売事業者や、出品を検討中の事業者などを対象に12~13日の2日間オンラインで開催したイベント。長尾社長はアマゾンジャパンの吉沢直大・FBA&MFN事業本部長(写真左)と「ヤマト運輸とAmazonの物流・フルフィルメントサービス」をテーマに対談し、販売可能なEC商材拡大に向けたフルフィルメントサービスの拡充に関して質問に答えたもの。

ヤマト運輸はこれまで、クール宅急便を利用した鮮度維持配送を通じて、商圏拡大や販売機会増といった生産者支援に取り組み、「全国の非常によい食品を作ったり調達したりする生産者様と長くお付き合いしてきた」と長尾氏。一方で、コロナ禍などを背景に食品EC市場は急拡大しており、今年6月に開かれた同社記者説明会でも、鹿妻明弘専務執行役員が「(クール宅急便の需要は)19年まではしばらくフラットだったが、コロナ禍の20~21年で2割くらい伸びている」と説明していた。

クール宅急便は従来、「ドライの空いたスペースで運んでいた部分もある」(鹿妻氏)ことなどから、「キャパシティを用意すればもっと使ってもらえるのではないか」と考え、新たなクール宅急便のネットワーク構築を検討。長尾氏は「さらなる利便性向上に向けて今、新しい仕組みを徐々に構築しているところであり、そうしたサービスを(Amazonに出品する)販売事業者へタイムリーに提供できるようにしていく」とアピールした。

併せて、セールスドライバー(SD)が集荷業務にとどまらず、販売事業者のニーズや困りごとに、きめ細かく対応できる体制が整っていることも紹介。SDだけでは解決できない課題も、法人営業組織などとタイムリーに情報連携できる仕組みを現在構築中にあり、長尾氏は「当社では単に荷物を運ぶのみならず、お客様への物流を通した価値提供を目指しており、ぜひ多様な要望や問い合わせをいただきたい」とWeb視聴者へ呼びかけた。

昨年開始の2サービス、「多くの販売事業者が利用」

対談の中では、昨年4月の「Amazon ECサミット2021」で発表された両社連携による「FBAパートナーキャリアサービス・ヤマトオプション」と「マーケットプレイス配送サービス」についても取り上げ、「非常に多くの販売事業者が利用している」(吉沢氏)ことを報告した。

「FBAパートナーキャリアサービス・ヤマトオプション」は、Amazonによる物流アウトソーシングサービス「フルフィルメント by Amazon(FBA)」の利用時に必要となる同社フルフィルメントセンター(FC)への納品にヤマト運輸の輸送を使うと、運賃が割引価格になるサービス。ヤマト運輸が各FCへ配達荷物を引き取りに行くトラックを利用することで多頻度運行によるリードタイム短縮も実現した。

「マーケットプレイス配送サービス」は、販売事業者が自社の拠点から商品を出荷する際、ヤマト運輸の配送サービスを特別料金で利用できるうえ、商品出荷通知の自動送信や伝票番号の自動登録などにも対応するもの。長尾氏は「ポスト投函型商品でありながらも履歴追跡が可能な『ネコポス』も対象で、宅急便と同じく配達日が明確であることなどから、商品購入者からも好評を得ている」とした。

これらと並行して、Amazon側では自社出荷におけるオペレーションの効率化にも取り組み、具体的には、配送日数の自動算出システムなどを導入。配送担当会社の過去の実績などをもとに配送日が算定されるため、販売事業者の負担を減らしながら、より正確でスピーディな配達予定日を表示可能となり、「顧客購買体験の改善と販売強化が期待される」(吉沢氏)とした。

米Amazonでは年内にEV車数千台を運用開始

同日のセッションではアマゾンジャパンの島谷恒平・オペレーション事業本部代表も講演。島谷氏は同社が進める物流ネットワークの構築状況を説明し、今期は関西最大の拠点となった尼崎FC(兵庫県尼崎市)と関東2拠点のFCを開設し、現在の国内FC拠点は20ヵ所以上に上ることを紹介した。

その上で、「この3年間の日本における大きな取り組み」として指摘したのが、自社ラストワンマイルネットワークの構築。今期は18ヵ所のデリバリーステーション(DS)を開設し、既存拠点と併せて45ヵ所のDSから直接購入者へ発送するネットワークを確立した。

「これは当社にとって非常に画期的なこと」と同氏。「最高の品質とスピードを提供するには、多くの無駄を省き、テクノロジーと実務能力でつなげることが不可欠」であり、エンドtoエンドのネットワークを構築したことで「お客様の購買体験を飛躍的に向上できるようになった」と述べた。

また、Amazonが「2040年の温室効果ガス排出量実質ゼロ」達成に向けてグローバルで取り組むサステナビリティ施策にも触れ、とくに商用電気自動車の導入状況を説明。米国ではリビアン社製のカスタム式電気配送車両が既に稼働しており、年内には米国内100以上の都市で数千台の運用を開始する予定にあることを明らかにした。

反面、日本においては「商用電気自動車がビジネス利用できるレベルの解決策は見えていない」とコメント。経済産業省や自動車メーカーらで構成されるプロジェクトへの参画が決まっていることを報告しつつ「これからも、世界のベストプラクティスと日本の主要関係者および政府と連携して解決策を探していく」と展望した。
(2022年10月18日号)


関連記事一覧