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航空不況、減収分を「貨物」で稼ぐ=航空会社

2020.11.19

ANAホールディングス、日本航空(JAL)が貨物輸送を強化している。両社の2021年3月期第2四半期決算によると、大規模な旅客便の運休・減便の影響で、貨物の輸送重量は両社とも前年同期を大幅に下回ったものの、単価の上昇によりANAHDは前年並みの売上水準を、JALは前年比2割弱の増収を確保した。新型コロナウイルス感染症拡大で航空不況が続く中、旅客の減収分を貨物で補強するため、貨物専用機の投入や貨物便の強化を図っている。

スペース供給量は低位、運賃は高止まり

世界的な旅客便の運休・減便により、航空貨物スペースの供給量は低位に推移している。マスクなどの緊急物資輸送需要の増加に加え、半導体・電子機器等、自動車部品などの需要回復が重なり、スペースのひっ迫が続く。航空運賃は高止まりで推移し、コロナ不況にあえぐ航空会社の業績の下支えとなっている。

ANAHDは貨物専用機による臨時便・チャーター便の設定や旅客機を使用した貨物臨時便の運航を推進。第2四半期の国際線貨物収入は0・6%減、国内線貨物収入は31・6%減に踏みとどまった。傘下のANA cargoは10月28日、成田~フランクフルトのチャーターによる貨物臨時便を定期便化。より多く積載できる大型機ボーイング777型機を投入した。

同路線は6月からチャーター便として運航していたが、単価が前年比で約6割上昇していることから、定期便に変更した。クリスマスや年末商戦を控え、年内は週2往復、1月以降は週1往復する。コロナ下での貨物の輸送需要について「上期は好調で、下期は世界各国の経済活動再開に伴い、需要がさらに回復すると思われている。引き続き需給がひっ迫している状況のため、できる限り貨物機を運航し、顧客ニーズに最大限応えていきたい」(ANA Cargo成田ウェアハウスオペレーションの浦野敏央副センター長)と説明する。

ANA Cargoが航空貨物のジョイントベンチャーを実施している独ルフトハンザカーゴも同日、関西~フランクフルト線でB777F型機による初便を就航させ、搭載量の増強を図った。また、ANA傘下のLCC(格安航空会社)ピーチ・アビエーションも11月1日、ANA Cargoとの共同運航により貨物の取り扱いを開始している。

一方、JALの第2四半期の貨物・郵便事業の売上収益は前年同期比18%増となった。航空貨物輸送の需要に対応するため、旅客機を利用した貨物専用便を積極的に運航し、上期には計7228便となった。JAL傘下のLCC、ジップエア トーキョーは当初旅客便として就航を予定していた成田~ソウル線を、9月から旅客を乗せない貨物専用便として運航を開始している。

新型コロナの影響で旅客需要は低迷し、世界の航空各社は業績悪化による経営危機に陥っている。出向による雇用の維持とともにリストラ、資本増強で経営の安定化を目指すANAHDとJALの21年3月期通期の純損益はそれぞれ、5100億円、2700~2400億円の巨額の赤字となる見通し。国際航空運送協会(IATA)は旅客需要の回復は24年と予測しており、貨物への注力は生き残りの綱となる。
(2020年11月19日号)


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