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東洋メビウス、海上モーダルシフトを推進

2020.11.19

東洋製罐グループの東洋メビウス(本社・東京都品川区、篠山健司社長)では、海上モーダルシフトを推進している。トラックドライバー不足による“運べないリスク”や近年多発する自然災害のBCP対策として、昨年に関西~九州間、今年10月に関東~関西間のトラック輸送の一部を海上輸送にシフトし、同社における一連の海上輸送ネットワークの構築が完了。将来的には異業種との共同輸送も視野に入れるなど海上輸送のさらなる拡充を目指していく。

関西~九州、関東~関西も海上にシフト

同社は以前より関東~北海道間、関東~九州間などの幹線輸送でフェリー・RORO船を活用。2011年に発生した東日本大震災では、“モノを運べないリスク”に直面したことから、BCP対策として複数の輸送手段と航路を確保する事業方針に転換した。それまでは、関東~北海道間、東北~北海道間の輸送ルートにおいて、太平洋航路のみで運航していたが、日本海航路も新たに確保。台風や豪雨などの自然災害が発生した場合でも、臨機応変に対応できる物流体制を整備した。

最近ではトラックドライバー不足により、将来運べなくなる事態が起きることを見越し、海上輸送のネットワーク構築をさらに加速している。従来の関東~北海道、関西~北海道、東北~北海道、関東~九州に加え、昨年から新たに関西~九州、関東~関西の航路を追加し、一連の海上輸送ネットワークが確立した。現在は1日平均15便が運航し、東洋製罐の容器製品を輸送している。

海上輸送の拡大へ

昨年から開始した関西~九州間では、阪九フェリーを利用し、瀬戸内航路を毎日1便体制で定期運航している。その中で、同区間におけるトラック輸送の10%(年間約300台分)を海上輸送にシフトしたため、日本長距離フェリー協会の「エコシップマーク認定制度」の取得を目指している。一方、関東~関西間では三ッ輪運輸と提携して、東京~大阪航路を週3便で運航するRORO船のルートを利用。関東~関西間ではトラックの輸送量が他の区間に比べて多いため、海上輸送のシェアはまだ高くないが、年間50台分のトラック輸送が海上に切り替わるとしている。

両区間では、利用船社の協力を得て、東洋製罐に適した専用のシャーシ(写真)を使用。エアーサスペンションの導入や荷台に空缶使用の緩衝材を採用することで、製品へのダメージを最小限に留める。床面にはジョルダーレールを設けてコンテナの奥までパレットを簡易に移動できるようにした。
運輸事業部運輸事業課の横澤孝二課長は「新型コロナウイルスの感染拡大で、トラックドライバーの不足感は一旦落ち着いているが、将来的にドライバー不足は加速していく。その対応として海上輸送のネットワークを早い段階で構築する必要があった」と説明。今後については、「海上の輸送量をさらに拡大させていく」と方針を示す。すでに海上輸送の拡大に向けた協議を東洋製罐と定期的に実施している。

運輸事業部運輸事業課の吉川航太氏は「当社単独でモーダルシフトを行ってきたが、荷量の兼ね合いなどで片道運航となる場合はコストが高くなり非効率となる。当面は全体輸送量に占める海上輸送のシェア拡大を目指し、将来的には異業種との共同輸送などにも積極的に取り組んでいきたい」と展望する。

鉄道モーダルシフトで最優良事業者賞

鉄道輸送では、17年12月から缶蓋の工場間輸送で31ftコンテナを使用した往復輸送を開始し、日本物流団体連合会(物流連)が主催する18年度のモーダルシフト取り組み優良事業者表彰で、「最優良事業者賞(大賞)」を受賞した。通常、缶蓋は振動などで荷崩れを起こしやすい製品だが、輸送コンテナに緩衝材や断熱パネルなど様々な工夫を凝らし、鉄道モーダルシフトを実現。安定的な輸送体系を構築したほか、環境面ではCO2排出量を従来比43・2%減、ドライバー運転時間は27・2%減となった。
(2020年11月19日号)


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