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佐川急便など、電力データ活用で不在配送を解消

2020.07.14

佐川急便(本社・京都市南区、本村正秀社長)と日本データサイエンス研究所(JDSC)、東京大学大学院越塚登研究室・田中謙司研究室の3者は9日、共同研究を進めている「AIと電力データを用いた不在配送問題の解消」に、新たに横須賀市とグリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合(GDBL)の2者が参画したと発表した。今年9月頃から世界初の取り組みとして、横須賀市の池田町と吉井地区でフィールド実証実験を行い、不在再配達の削減と配達業務の効率化を図る。

実証実験は環境負荷の低減、労働環境の改善、交通事故の防止、安定的な輸送、電力データの活用に伴う効果の実証を目的とした「不在配送回避システム」の構築に向けた取り組みの一環。対象エリアの各家庭の承認取得を前提に、スマートメーターから取得する電力データをAIが分析し、不在を回避した最適な配達ルートを提示する。佐川急便はそのルートに従って配達することで、再配達の削減状況を検証する。

9月頃から年内にかけて行う実証実験の効果を検証後、来年度には「不在配送回避システム」の本稼働に向けたシステム開発に着手し、2022年以降の実運用を予定している。また、SGHグループでは、検証した電力データを有効活用し、グループ全体の業務効率化と最適化を図る仕組みを構築する。

同日、佐川急便東京本社(東京都江東区)で会見した本村社長は「新型コロナによる外出自粛で一時的に在宅率が向上したが、緊急事態宣言解除後は再び低下し、不在による再配達が増加している。その中で電力データを有効活用し、在宅配達が向上すれば、より高い品質と安定した輸送サービスを提供できる」と強調し、「置き配など様々な不在再配達の解消方法と今回の取り組みを組み合わせながら、以前より効果的に再配達を削減していく」との考えを示した。

また、JDSCの加藤エルテス聡志CEOは「今回の実証実験は世界初の取り組み。他のデータを組み合わせることで、さらに価値を見出せる。多くの場所でこのような実証実験を繰り返し、社会価値を創造していきたい」と展望した。

JDSCは、AIを活用した電力データ解析・活用技術を保有しており、東大越塚研究室・田中研究室との連携のもと、スマートメーターから得られる電力データを使用し、AIが配送ルートを示すシステムを開発。18年9~10月に東京大学内で実施した配送試験では、不在配送が9割減少する高い実績が出た。

19年9月には、同システムを使用して佐川急便が持つ配送実績データでシミュレーションを実施。不在配送の削減と総配送時間の短縮など一定の効果が確認されたことで、3者共同による研究開発を開始した。
(2020年7月14日号)


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