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国交省が倉庫の人手不足の実態把握へ

2019.10.24

国土交通省は倉庫の人手不足の実態把握に乗り出す。フォークマンや庫内作業員の不足が顕在化してくる中、日本倉庫協会、日本冷蔵倉庫協会を通じこのほどアンケートを実施。人手不足解消の手立てとして外国人労働者など多様な人材活用の意向も含めて探っている模様だ。トラックドライバーと比べ、倉庫の人手不足についてはその深刻度合を検証するデータがなく、国交省が過去に実施した労働力不足に関する調査も10年前。労働市場が大きく様変わりし、業界からは人手不足に対する行政の支援を求める声もあり、結果を踏まえた今後の動向が注目される。

働き方改革で働く時間にも制約

国交省は10年前の2009年に「物流施設における労働力調査」を行っており、そこでは倉庫業の20代以下の若年層の割合が30年には15%まで減少する一方、50代以上の高年層は35%まで増加するとの分析結果を提示した。倉庫に限らず、高齢化と労働力不足はこの10年間でさらに深刻化しており、今回のアンケートの目的は労働力不足の実態を把握することとしている。

通販市場の拡大など倉庫で扱う貨物の多品種小ロット化を背景に、倉庫では従来よりも人手を要する作業が増えている。帝国データバンクの7月の「人手不足に関する企業の動向調査」によると、「運輸・倉庫」で正社員が不足していると回答したのは、62・6%。日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の17年の調査では、労働力不足を感じる物流機能として、69・2%が「荷役」を、51・1%が「流通加工」を挙げている。

地域や取り扱い貨物によってばらつきがあるが、「工場でも人が集まらないため、その業務の一部が倉庫にアウトソーシングされており、その分、倉庫での人が足りなくなるという事態が起きている」(愛知県の倉庫)との声も聞こえてくる。トラックドライバーが従来行っていた荷揃えなどの業務が倉庫に移ったり、あるいはパレット化されたことで倉庫の荷降ろし要員を増やさなければならないケースもみられる。

19年4月からの働き方改革関連法の施行も立ちはだかる。年720時間の時間外労働の上限規制の適用(中小企業は20年4月から)により、働く時間も制約され、人手不足を“時間で解決する”ことがコンプライアンス上、難しくなる。年5日の年次有給休暇の取得義務化についても「70人の社員規模であれば、毎日1人有給で休みをとっておかしくない計算になるが、そうもいかない」(千葉県の倉庫)と苦慮している現状だ。

なお、アンケートの項目については非公表で、「結果の公表や今後の取り扱いについても未定」(国交省総合政策局物流産業室)だという。4月から新たな在留資格として導入された、深刻な人手不足が認められた業種に外国人就労を解禁する「特定技能の14業種」に倉庫関係も加えてほしいという要望も一部では強いことから、アンケートには外国人労働者の活用に関する項目も盛り込まれているようだ。
(2019年10月24日号)


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