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未曾有の「10連休GW」での物流対応は?

2019.03.19

未曾有の10連休となる今年のゴールデンウィーク(GW)における物流対応に関心が集まっている。今年のGW期間中は、例年以上にトラックの確保が困難になることから、食品メーカーなどで従来の「翌日納品」からリードタイムに余裕を持たせた「翌々日納品」に切り替える動きが目立つ。4月から働き方改革法への対応が本格的にスタートし、時間外労働の上限規制が開始されることもあり、物流にムリを強いる商習慣や取引慣行の是正に向けた議論が本格化しつつある。そうした中で、GW期間中の物流対応は今後の見直しに向けた〝試金石〟にもなりそうだ。

加食業界では「翌々日納品」実施へ

味の素(本社・東京都中央区、西井孝明社長)は、GW期間中、卸など得意先への納品について、これまで最短で受注日翌日だったのを翌々日に延長する。延長の対象となるのは家庭用や外食用、加工用のドライ食品で、チルド商品は対象外。エリアは沖縄を除く全国。また、同社ではGW終了後にいったんリードタイムを戻すものの、8月からは「翌々日納品」を恒久化して安定供給確保へつなげるとともに、ドライバー不足や労働環境の改善にも貢献していく。
加工食品業界では、同社以外にも「翌々日納品」を検討するメーカーがあり、今後はドライバー不足や物流業界における働き方改革の流れとも連動して、「翌々日納品」がスタンダード化していく可能性もある。

食品卸側は入荷の集中化などを懸念

こうした発荷主の動きに対し、着荷主側の対応はどうか。加工食品卸業界の団体である日本加工食品卸協会(日食協、國分晃会長)では、昨年末に賛助会員である食品メーカーに対し、長期連休時における特別受注、出荷配送体制への協力を求める文書を発出した。
川下の小売業はほとんどが年中無休の営業形態で、卸もそれに合わせた供給体制をとっている。そのため、メーカーの長期連休に伴い入荷の集中化やスペースの狭隘化、欠品が生じないよう、事前の受注体制や出荷配送体制について卸との綿密な打ち合わせの必要性を訴えた。
GW中のメーカー~卸の配送における「翌々日納品」の動きについて、「トラックを確保するため十分に理解できるが、卸にとっては在庫量が1日分増えることになり、前々日と前日の受注では在庫の精度が変わってくる」(日食協の奥山則康専務)と指摘する。さらに今後、「翌々日納品」が広がる可能性について「〝中1日〟をいかに有効に活用するかという視点が必要。ASN(事前出荷情報)を使った発注や検品レスなどメーカー、卸双方の業務効率化につながる施策の検討も必要」(同)とする。

GW期間中は生産と販売間の調整も

このほか、江崎グリコ(本社・大阪市西淀川区、江崎勝久社長)では、GW期間中の得意先への納品日を4月27日、30日、5月2日に設定。状況に応じて、それ以外に特別配送を実施するか判断する。工場~物流拠点間の1次物流については、工場の生産がほぼストップするため、トラック台数を絞りつつ、基本的には4月30日と5月2日のみ運送を行う計画。

また、メーカーの物流部門では、生産と販売間の調整に苦慮する面もうかがえる。大手製紙メーカーの担当者は「GW期間中も工場は24時間稼働しており、エンドユーザーは休みとなる。このため、生産した製品を倉庫に移送しなければならず、受け入れ先の倉庫との調整が必要」と語る。

大手特積も運行や集配を制限

一方、GW期間中における物流事業者の対応はどうか。西濃運輸(本社・岐阜県大垣市、神谷正博社長)は、4月27日は通常営業だが、4月29日および5月1日~3日については幹線輸送は行わず、配達(配達指定分)のみ対応し、集荷・発送は行わない。また、4月28日、30日、5月6日については幹線輸送は行うものの減便など制限が発生し、集荷・配達(配達指定分)は行うが、一部で対応できない地域もあるとしている。5月4日、5日については、幹線輸送は行わず、宅配便(個人宛て、20㎏以下・3辺合計130㎝以内)のみ配達指定で対応する(集荷・発送は行わず)。

また、福山通運(本社・広島県福山市、小丸成洋社長)では、4月28日と5月5日の2日間を休業日とする。4月29日~5月4日の6日間は祝日体制とし、集荷は予約または電話での受け付けとする(電話での集荷受付は15時まで、集荷時間は17時まで)。配達は配達日の指定がある荷物のみ対応する。

JR貨物(本社・東京都渋谷区、真貝康一社長)は、荷主の生産・出荷活動に合わせてGW期間中の列車運行を決める。すでに利用運送事業者や荷主企業に対しては運行計画案を提示している。「現行案では前年比で3割程度運行本数を減らす計画だが、今回の10連休については需要や出荷動向が読みにくく、まだ対応が固まっていないお客様もいる」(営業統括部長の和氣総一朗氏)という。同社ではダイヤが調整できる4月上旬まで待って最終的な運行計画を決める考え。

一方、海上コンテナ輸送業界では、GW期間中のコンテナターミナルのゲートオープン状況の確認と車両の確保への対応に苦慮している。連休中も稼働する顧客に対し、「どの程度の本数を輸送すればいいかを確認中」(京浜地区の海コン業者)だという。インランドデポの活用や期間限定のコンテナラウンドユースの提案、保有するシャーシにコンテナを積載しておくといった対策も検討しているが、「GW前にどれだけ空コンテナの返却を進め、シャーシを空きにできるか。シャーシの数にも限りがあり、すべての顧客の要望に応えることは不可能」だという声もある。

国交省は全ト協に要請文書を発出

政府は2月末に開催した「即位日等休日法の円滑な施行に関する関係省庁連絡会議」で、GWへの対応をまとめており、運輸業では、連休期間前後に運送依頼が過度に集中しないよう、業界団体などに対し荷主とあらかじめ調整することを求めている。

これを受けて、国土交通省は3月11日付で全日本トラック協会(坂本克己会長)あてに要請文書を発出した。その内容は「大型連休期間の前後に輸送依頼が過度に集中することで、荷主企業が依頼した輸送業務に遅延や混乱などが発生することや、輸送業務の遅滞によって国民生活に影響を与えないようにすることが重要」「そのためには、GW期間中やその前後での輸送業務について、事業者は荷主と十分に時間を持って調整し、過度の集中による混乱などが生じないよう対応して欲しい」というもの。

しかし、物流事業者は荷主との輸送調整を主導的に行えないため、準備に苦慮し、連休前後に業務の繁忙のしわ寄せが増大する懸念もある。また、「GW期間中とはいえ、荷主から出庫要請があれば、貨物を出さざるを得ない」という声もある。
(2019年3月19日号)


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