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新たな宅配の担い手、続々参入

2017.07.06

宅急便の総量抑制を発表したヤマト運輸の動きに伴い、通販会社で新たな宅配網の構築に向けた動きが加速している。圧倒的な物量を持つAmazonでは東京23区を中心に自社配送網の組み立てが進み、その担い手となる軽貨物便事業者も顔ぶれが揃いつつある。

配達密集地域で自社配送網を構築

Amazon.co.jpでは東京23区をはじめとする配達密集地域で軽貨物便事業者などを組織した自社配送網を構築し、当日配送などのサービスを継続させる方針。具体的には丸和運輸機関、札幌通運、SBS即配サポート、ファイズなどが地域別に担当し、とくに丸和運輸機関では比較的広いエリアを受託するようだ。一方で地方向けの配送には従来通りヤマトを中心とした宅配サービスを利用すると見られる。

2015年からサービスを開始している、1時間便および2時間便で商品を宅配する「Amazon Prime Now(プライムナウ)」では超短時間の配達リードタイムを守るため、当初より軽貨物便事業者をエリア毎に使い分ける仕組みを構築し、そのブラッシュアップを続けてきた。23区向け配送はウィルポートとSBS即配サポートが中心となり、池袋など一部地域でファイズも受託。Amazon.co.jpとは出庫および在庫管理情報がシステム上連動しないため、「各倉庫からそれぞれに出荷されている」と関係者は話す。

ことし4月にスタートした、生鮮品などのクール商品を専門に扱う「Amazonフレッシュ」でも、Amazonプライムナウのネットワークを組み合わせた配送を想定。「川崎フルフィルメントセンター」(川崎市高津区)で生鮮および冷蔵・冷凍商品を一括保管し、ピッキングした後にAmazonプライムナウの配送倉庫へ移送して宅配するスキームという。

15年からAmazonプライムナウで運用してきた自社配送の仕組みを、今回、Amazon.co.jpにも広げる形とも言えるが、「首都圏は自社配送、地方では宅配サービス」という配送手段の使い分けは、「らでぃっしゅぼーや」や「Oisix」などの食品宅配業者では比較的メジャーな考え方でもある。同社らは自社配送エリアでよりきめ細かな配送サービスを提供するとともに、専属のドライバーが購入者へ商品を届けながらニーズを吸い上げるマーケティングも行うことが特徴だ。

軽貨物便事業を強化する大手3PL会社

「大手宅配会社はCtoCを想定した翌日配送のインフラで当日配送のBtoC物流をやろうとしたから無理が生じた。当社ではBtoC向けの当日配送ノウハウと強さを持っている」「日本最大の宅配会社がお手上げ状態になったことは、大変なチャンスだと思った」――丸和運輸機関の和佐見勝社長は5月末に開かれた投資家向けの決算説明会で、アナリストらに向け雄弁に語った。同社のように、この機を好機と捉えて宅配事業の強化を打ち出す会社は少なくない。

SBSホールディングスの鎌田正彦社長も今年2月の決算説明会で「Amazon専属の仕事はかなり入っている」と明言し、好調さをアピール。2月時点で首都圏の運行台数は160台に上り「もっとやってほしいというオーダーが来ている」ことも明かした。一方で「これまで拡大基調で進めてきたが適正規模へ軌道修正し、収支にも貢献したい」との思いもあり、「運賃契約は車建て(当時)なので収支が悪化しているわけではない」と強調しながらも、急拡大への慎重な姿勢も示す。そして、この6月には鎌田氏が12年振りにSBS即配サポートの社長へ就任。テコ入れか拡大か――いずれにせよ同事業の方向性をグループとして重視していくことに間違いはない。

新規参入会社の素顔は?

ウィルポートは広島市を中心に買い物宅配事業を展開してきた「ブラウニー」の関係者らが立ち上げた会社。狭小地域内におけるオープンプラットフォーム型の宅配ネットワーク構築をビジョンとして掲げ、その実現に向けた共通伝票システムの開発や宅配ロッカー事業なども手掛ける。6月に都内で講演した城山憲明取締役は「地域に『物流ポイント』としてデポを設置し、通販荷物を集約して運ぶとともに域内の買い物宅配荷物を組み合わせることで、地域の活性化と軽貨物事業者の安定的な収益を確保する」と構想を説明。ドライバーの特性と荷物を繋ぐマッチングシステムなども開発している。

ファイズは大阪に本社を置き、売上の約6割をアマゾンジャパン向けが占める。倉庫内業務を請け負うオペレーションサービスが売上の7割に上り、デリバリーサービスは全体の1割に満たないが、17年3月期の事業売上高は前期比88%増を達成し、全セグメントで最も大きく成長。5月28日時点で軽車両20台を運行する。3PLから小口配送に至るEC向けワンストップサービスの提供を最重要戦略と位置付けており、今期も同事業全体の拡大を図る。

こうした企業にとってAmazonの物量は魅力的であり、成長へのトリガーにも成り得る。Amazon側も「車建てで10時間2万円」など高い運賃体系を推奨しているようで、受託会社も軽貨物事業者やドライバーを積極採用して事業拡大への期待を寄せる。ただ、「最初こそいい運賃を払ってくれるが、配完情報を初めとする運行データは全てAmazon側のシステムで管理されており生産性などの情報は筒抜け。『もっと料金を抑えられる』と思ったら躊躇なく値下げ交渉をしてくる」と話すのは、Amazonプライムナウの配送を担当していた運送会社の関係者。“大手宅配会社がお手上げ状態になった”フィールドで生き抜くには、それに勝る工夫や戦略が求められるのかもしれない。

(2017年7月6日号)


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