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「事業法改正は労働条件改善の原資づくり」=全ト協・坂本会長会見 

2018.09.06

全日本トラック協会の坂本克己会長は4日、専門紙記者団と会見し、協会活動の現況について語った。坂本会長はこの中で、議員立法により貨物自動車運送事業法の一部改正を検討していることについて、「事業法は施行から約30年が経過し、新しい時代を踏まえて見直していくべきという声が全国津々浦々から寄せられている。そうした意見を集約して、社会的規制と経済的規制の両面から適切な形にもっていきたい」と語り、「現場で汗を流しているドライバーの労働条件を良くしていくには原資がいる。事業法の一部見直しは、そのための原資づくり、“根っこ”を整備するためのものだ」と見直しの目的について語った。

対策本部を立ち上げ事業法見直しの検討開始

全ト協では今年6月に議員立法による貨物自動車運送事業法の見直しについての対策本部を立ち上げて検討を開始。また、坂本会長は7月12日に開催された理事会の冒頭挨拶で事業法の一部改正を進めていく考えを表明していた。

坂本会長は会見で、「現場で働く従業員の労働条件をもっと良くするためには原資が必要。各社ごとに荷主と運賃交渉を進めているが、それにも限界があり、“根っこ”を整備しなければならない。事業法の一部見直しは、労働条件を向上せしめるための原資づくりだ」と改めて事業法の見直しに取り組む目的について言及した。

具体的な見直しのポイントについては「今後、国会議員の先生方や内閣法制局、国交省などと相談していく」として明言は避けたが、方向性としては貨物運送事業への参入規制強化や荷主に対する罰則強化などを想定。参入規制強化については、「いまのトラック業界には“悪貨が良貨を駆逐する”状況があり、誰がみても悪貨である悪質事業者にはよそに行ってもらう必要がある。ドライバーの健康が何よりも大事であるにもかかわらず、最低限の健康診断も実施していない事業者が入り込んでいる。そこは参入規制できっちりしていく必要がある」。

また、荷主への罰則強化についても「ブラックリストに載るような悪徳荷主をどのような形で制裁していくか」と述べ、現行の荷主勧告制度をさらに強化していく必要性を強調した。

一方、運賃・料金規制については「正直、難しい面がある。条文に書き込むにも限界がある」と述べた。「最低限の適正運賃が収受できなければ、トラック事業者は再投資できない。ただ、憲法には『営業の自由』という大前提があり、どこまで踏み込めるかは微妙だ」と語った。

法案提出時期は、年明け国会が目安に

事業法見直しに向けた今後の進め方について、桝野龍二理事長は「6月に対策本部を発足させ、方向性について一定の了解や承認を得ており、見直しの方向性については共有できている。具体的な条文づくりについては、今後、国会議員や法制局、国交省などと相談しながら進めていく。ある程度の形になった段階で、改めて理事会や正副会長会議などの諮り、機関決定していきたい」と語った。

法案提出の時期について、坂本会長は「できるだけ早くしたいが、国会スケジュールとの絡みもある」としながらも、年明けの通常国会をひとつの目安にしていく考えを示した。

新約款の届出5割以下「業界の悪いところ」

トラック業界の働き方改革については、「現場の第一線のドライバーの労働時間は、全産業平均より2割長く、お給料は2割強低いのが現状。それを何とかしていくのが働き方改革だ。幸か不幸かある程度の時間的猶予をいただいており、その間に普通に働いたら普通の暮らしができるような労働条件にしていかなければならない」と述べた。

また、昨年11月に実施された標準貨物自動車運送約款の改正について「歴史的なこと」とした上で、事業者からの新約款への変更届出が5割以下にとどまっている状況について「あっと言う間に100%に達すると思っていたら、現実はそうでもない。そういうところにこの業界の悪い意味での不公正競争が表れている。その状況を何とか変えたいという思いが、事業法の一部見直しにもつながっている」と厳しい認識を示した。

重要物流道路の創設は働き方改革そのもの

さらに、今年3月の道路法改正で「重要物流道路」制度が創設されたことについて、「我々の事業は道路とともにある」として、「重要物流道路制度が創設され、ミッシングリンク解消など使い勝手の悪い道路を改善していく方向が示されたことの意義は大きい。道路の使い勝手が良くなれば、ドライバーの労働時間の削減にもつながる。その意味では、道路問題は働き方改革に直結するものだ」と述べ、その意義を強調した。
(2018年9月6日号)


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