「郵便」から「物流」へのシフト加速=日本郵政/新中計
日本郵政(本社・東京都千代田区、長門正貢社長)は15日、2020年度までの3ヵ年を期間とするグループの新中期経営計画を発表した。日本郵便の郵便・物流事業では、従来、郵便中心だった事業構造を郵便と荷物の二本柱に転換し、ゆうパックを中心とした物流事業への注力を鮮明にした。17年度に8億7500万個だったゆうパックの取扱個数を、20年度に10億5000万個まで増やす目標を掲げたほか、24~27年度の中長期では15億個まで拡大する方針。進出が遅れている国内BtoB市場では、トールホールディングスのノウハウを活用しながら国内コントラクトロジスティクスを展開していく。
労働力リソースも郵便から「荷物」へシフト
同日会見した長門社長(写真)は、新中計を取り巻く収益環境について「歴史的低金利により、ゆうちょ銀行のパフォーマンスが大きく影響を受ける。もっとも厳しい3年間になる」との認識を示した上で、提携・M&Aなども行いながらグループ全体で収益をカバーしていく必要を強調した。
「日本郵政グループ中期経営計画2020」と題された新中計では、事業の持続的成長と安定的利益の確保を図りながら「トータル生活サポート企業グループ」を目指すのが基本方針。
このうち日本郵便の「郵便・物流事業」では、郵便物の減少が今後も続く中で、EC市場の成長によって拡大が見込まれる宅配便事業に経営資源を傾注する。商品・サービスの高度化に加え、「郵便の集荷担当者を荷物の配達にシフトしていくなど、労働力などのリソースも流動化していく」(長門社長)。
また、24~27年度の中長期をメドに、現在6000億円程度の荷物事業(ゆうパック・ゆうメール)の売上高を1兆円まで伸ばし、郵便・物流事業における収益比率を現行の3割程度から5割まで引き上げる。
トールジャパンを使い国内CL事業立ち上げ
トール社を中心とした国際物流事業では、経営改善をさらに進めることで収益拡大を図る。すでにディビジョン再編や組織簡素化、2000人に及ぶ人員削減を実行しており、今後は部門ごとに分散したIT集約、オペレーション改善によるコスト削減を進めるほか、成長分野・エリアへの集中を加速する。17年度に1億1900万豪ドルだったEBIT(営業利益)を20年度には2億2000万豪ドルまで倍増させる。
また、トール社のノウハウを活用しながら日本国内でのコントラクトロジスティクス(CL)事業にも着手する。トール社は国内にフットワークエクスプレスを前身とするトールエクスプレスジャパンを保有しているが、同社を活用しながらCL事業を立ち上げ、国内外一貫ソリューションが提供できる体制づくりを目指す。長門社長は会見で「近々、詳細を発表できる」と述べた。
M&Aなど成長投資に数千億円規模を投下
期間中の投資はグループ全体で1兆円を計画する。このうち日本郵便の郵便・物流事業で1800億円、国際物流事業で1500億円を見込む。
さらに、これとは別枠として資本提携・M&Aなどの成長投資として3年間で数千億円規模を予定。原資としてゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式売却益の活用も視野に入れる。長門社長は「トール社の減損の経験を踏まえ、規律ある投資を実行していく」とした。
グループ全体では計画最終年度となる20年度に連結当期純利益4100億円の確保を目指す。このうち、日本郵便は連結営業利益900億円(郵便・物流400億円、金融窓口300億円、国際物流200億円)、連結当期純利益650億円を確保する計画。
(2018年5月22日号)