【働き方改革】倉庫も人手不足、価格転嫁は進まず
倉庫の人手不足が深刻化してきそうだ。トラックドライバー不足で、ドライバーの倉庫での荷下ろしや附帯作業の見直しが進む一方、倉庫側の負荷が増大しているが、価格転嫁は進んでいない。国土交通省の調査によると、2030年には倉庫業における50代以上の高年層が占める割合は3割強まで上昇すると予測しており、若年労働者の確保や省力化設備の導入、そのための“原資”の確保が不可避となる。
「荷役」は7割、「流通加工」は5割が労働力不足
倉庫業は従来の保管機能に加え、流通加工や仕分け作業など機能・サービスの多様化が進み、近年、大型化しているため、より人手を要する「労働集約型産業」になっている。日本ロジスティクスシステム協会(JILS、遠藤信博会長)の昨年10月の調査によると、労働力不足を感じる物流機能は「輸送」が71・9%とトップだが、「荷役」は69・2%、流通加工は51・1%。しかし、トラックドライバーに比べ、倉庫の人手不足はあまり表面化してきていない。
倉庫の作業従事者の人件費も上昇傾向にある。17年度の地域別最低賃金の改定額の全国加重平均額は848円と25円上昇。02年度以降、昨年度に並ぶ最大の引上げとなった。また、リクルートジョブズが発表した3大都市圏の12月のアルバイト・パートの平均時給は、「構内作業(フォークリフト等)」が1161円(前年同月比3・8%増)、「物流作業」が1023円(1・3%増)と高水準が続く。
ドライバー不足を背景にトラック運賃は上昇基調にあるのに対し、倉庫では人件費上昇の価格転嫁があまり進んでいないようだ。「作業料については底上げされてきている」との報告があるものの、保管料は「この何十年上がったという話を聞いたことがない」という声も。「人件費など原価が2割上がっている」中、荷主の要請でドライバーが行っていた荷役作業を倉庫にシフトする動きもみられる。
トラック集中で夜中まで作業、倉庫の「手待ち時間」問題も
トラックの長時間待機の問題がクローズアップされているが、倉庫側の苦労はあまり知られていない。「繁忙期のトラックの集中は、裏を返せば、倉庫側の作業員も大変な思いをしている。作業が夜中までかかった上に、ドライバーには『待たせやがって』と怒鳴りつけられ、あれでは精神的に参ってしまう。しまいには誰もやりたがらない仕事になる」とある物流関係者は危惧する。
倉庫の「手待ち時間」の問題も指摘される。例えば、午前中の入庫の後、午後の出荷時間帯まで“アイドルタイム”が発生し、夕方にオーダーが集中するため作業者の残業が増えている。また、ドライバーの手積み・手下ろしを解消するためのパレット化だが、倉庫側では一度に数台分のトラックに同時に積込みしなければならないため、負荷が大きくなっている例もある。
低温の作業環境下となるため、冷蔵倉庫の作業員不足はより深刻だ。「荷下ろしする作業員がいないため、別の冷蔵倉庫まで運んだ」ケースも出てきているそう。冷蔵倉庫の売上構成比は、かつては保管料と荷役料が7対3だったのが、最近では荷役料の比率が保管料を上回る企業もある。細かい作業が増え、それだけ人手が必要だが、新たな作業員を確保できず現行の作業員にしわ寄せがきている。
高年層が3割に、受発注平準化など商慣習の是正も必要
国交省が09年に発表した「物流施設における労働力調査」によると、倉庫業の20代以下の若年層の割合は30年には15%まで減少する見込み。一方で50代以上の高年層の割合は35%まで増加すると分析している。09年よりも全産業で人手不足が深刻化している中、若年層の確保と高齢化対策が急務となる。
省力化・省人化設備の導入も進んできたが、圧倒的に多くの倉庫は人手に依存している。国交省の同調査によると、倉庫業労働者の労働時間は産業全体を上回り、労働者への現金給与額は産業全体を大きく下回っている。人材確保や省力化投資のための適正な料金の収受とともに、少ない人数で作業をこなすため受発注や納品の平準化など商慣習の是正も求められる。
(2018年2月1日号)