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【女性・働き方改革】物流業界、女性活躍推進へ本腰

2017.12.21

物流業界で女性活躍推進への動きが本格化してきた。帝国データバンクが10月に行った「人手不足に対する企業の動向調査」によると、「運輸・倉庫」は「不足」が63・7%で業種別で第3位。物流業界で雇用の多様化は不可避で、中でも求職率と就業率のギャップが相対的に大きい女性の活用に期待が集まる。業界団体では、全日本トラック協会(坂本克己会長)に「女性部会」が発足したほか、倉庫や通関の業界団体でも女性の活躍を支援する活動が広まりつつある。女性の視点を活かした様々な提言により、人手不足に直面する物流業界の閉塞感の打破が期待されている。

女性比率、極めて低い、安心・安全に働ける業界に

全ト協ではトラック運送事業における女性経営者、女性管理者の資質の向上、女性の視点からの協会活動および社会貢献活動への参画、女性活躍推進のための提言を行うことなどを目的に「女性部会」を設立。14日に第1回代表者協議会と設立パーティーを開催した。

部会長に就任した原玲子氏(東京都トラック協会女性部本部長)は「20の都道府県トラック協会の女性組織、813人の参加により設立の運びとなった。トラック運送業界は経営者もドライバーも女性の比率が極めて低く、女性ドライバーは全体の3%に満たない。女性が安心・安全に働ける業界にしていかなければならない」と挨拶。

「それには女性経営者の力を結集し、女性ならではの視点で女性の活躍に向けた提言を行い、実行に移していくことが重要。全国各地で女性部会の数も増えてきており、女性組織の設立を検討している協会もある。まずは全ト協の女性部会を通じて、女性経営者のレベルアップを図り、交流を通じ現状と課題の情報共有をしていく」とした。

全ト協の坂本会長は、「女性がいると職場が元気になり、活気づく。全ト協としても、女性のドライバーが働きやすい職場環境を整備すべきで、ハード面の充実も支援していきたい。女性ならではの繊細な感覚でマーケットのニーズをとらえ、新しい発想で業界の将来をつくっていってほしい」とエールを送った。

悩みや課題の共有、ネットワークづくりにつなげる

倉庫業界でも地区協会での取り組みが進む。神奈川倉庫協会(小此木歌藏会長)では16年度から、倉庫業に女性活躍の場を取り入れていくため「女性活躍推進小委員会」を立ち上げた。17年度は会員店社の女性を中心とした総勢11人のワーキンググループを設置。女性活躍に関する意見を聴取・集約し、年明け以降、指針提言をまとめる。

埼玉県倉庫協会(箱守和之会長)は昨年12月に埼玉県産業労働部ウーマノミクス課と共催で女性活躍推進セミナーを実施したのに続き、11月27日には「倉庫業界女性職員ネットワーク交流会」を開催。横のつながりが少ない女性が倉庫業に定着するよう、女性職員の悩みや課題の共有、企業を超えたネットワークづくりにつなげる。

冷蔵倉庫業界では関西地区での取り組みが活発だ。近畿冷蔵倉庫協議会(西願廣行会長)では「女性活躍推進委員会」を立ち上げており、年に2~3回、女性職員が集まり、研修会や意見交換会、実務者の意見交換などを実施している。直近の研修会には約80人が参加したという。

物流業界の中で通関業界の女性支援の取り組みは早かった。日本通関業連合会(鈴木宏会長)では10年から全国女性通関士会議を毎年開催。14年には女性通関士支援WGを発足させ、地域を超えた女性通関士同士の交流、働き方に関する独自のアンケート、セミナーの企画といった活動を実施している。
通関士全体に占める女性の比率はおよそ2割程度と推計されるが、地方港では他社の女性通関士と接する機会がないケースもある。WGのメンバーが主導し、各地区通関業会での女性通関士ネットワークが誕生した例もあり、地区の特性や事情に応じた活動が展開されている。

物流業界で働く女性からは、「目標となる女性がいない。女性が“特別な存在”過ぎる」(倉庫)、「ロールモデルが少ない」(通関)といった声が聞こえてくる。帝国データバンクの調査では、「運輸・倉庫」は女性管理職の比率が4・6%と調査対象業種中、ワーストで、女性管理者の育成も今後の課題となる。
(2017年12月21日号)


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