【駐車規制】警察庁、トラック働き方改革を支援へ
警察庁は今年度末までに、集配車両に対する駐車規制を一部見直す方針だが、その内容は駐車禁止区域への「駐車可標識」の設置など、道路標識による規制を軸に検討していくことになりそうだ。具体的には、駐車可能な車種や用途、時間帯などを定めることで、集配車が駐車しやすい方向で緩和を検討していく。
働き方改革の一環から規制見直しを実施へ
集配車両の駐車規制緩和は、8月28日に開催された政府の「自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」で、直ちに取り組むべき63施策のひとつとして打ち出された。
2006年6月の道交法改正で駐車違反取り締まりの民間委託が始まって以降、集配業務のために一時駐車する車両への取り締まりが強化され、宅配事業者やトラック業界などから取り締まりの緩和を求める声が高まっていた。
さらに、トラックドライバー不足が顕在化し、ドライバーの時短や集配効率の向上に向けた取り組みが求められるようになったことを受け、一定の範囲で貨物集配中の車両の駐車を可能とする駐車規制の見直しを行うもの。
標識の設置などを通じ駐車可能な場所を増設
具体的には、今年度末までに駐車規制を一部見直し、都道府県警察に対し道交法に基づく通達を出す方針。詳細な内容は現在検討中だが、見直しの趣旨は、道路標識などの設置を通じて集配車両が駐車できる箇所を増やすことで、違法駐車の取り締まりを緩和することでないという。
警察庁関係者によると、「あくまでも安全で円滑な交通の妨げにならないことを前提に、必要性の高い場所を選んでの緩和になる」としている。
実は、警察庁は04年(平成16年)1月15日付で、都道府県警察に対し「きめ細かな駐車規制の実施について」の通達を出している。そこには「物流交通が中心であり、貨物自動車の駐(停)車需要が多い道路の区間では、貨物自動車の駐(停)車の効用に配慮した措置を行うなど、車種ごとや用途ごとに異なる事情がある場合には、対象を限定して行うこと」という一文があり、今回の駐車規制の一部見直しは、この方向に沿って実施されることになりそうだ。
東ト協は会員アンケート全ト協は要望書提出を検討
実際の規制緩和するエリアや車種や用途の特定については、トラック業界の要望などを採り入れ、集配実態などに沿った形で運用していくことが考えられる。
東京都トラック協会(千原武美会長)は9月22日から会員事業者向けに駐車違反取り締まり状況に関するアンケートを実施しており、10月末に締め切り、年内にも結果を取りまとめる予定。調査では、駐車規制を緩和して欲しい場所や時間帯、取り締まりが特に厳しいと感じる場所・時間帯の記入を求めており、東ト協が緩和箇所を求めていく場合の資料にも使うことを意識している。
また、全日本トラック協会(坂本克己会長)も11月中にも警察庁に要望書を提出することを検討している。警察庁もこうした業界の要望や実情を反映した形での通達や運用を想定しているものとみられる。
駐車取り締まりへの事業者の声は…
「駐車違反で違反点数が加算されればドライバーのモチベーションは下がる。このままではトラックの仕事をしたいという人はさらに減ってしまう」(特積みトラックの担当者)――。
駐車取り締まりを巡っては、事業者からこうした声が多く聞かれる。長時間に及ぶ違法駐車は論外だとしても、特に問題なのは5分~10分といった短時間の駐停車でも違反切符を切られることのようだ。生協関係者や大手宅配事業者からは「決まった場所に駐停車することが多いため、取り締まりの対象になりやすい」といった指摘もある。
ある中堅トラック事業者は「納品場所によってはどうしても短時間でも路駐しなければならないケースがある」という。同社はすでに累計で200回以上の罰金を支払っているというが、「荷主に請求することはできない」とこぼす。
一方、取り締まりを避けるために、有料駐車場に駐車したり、場合によっては2マン配送することで集配コストが上昇するケースも少なくない。また、「駐車可能スペースを見つけても、そこから集配すれば距離が長くなり、効率が悪化したり、肉体的負担も大きくなる」といった声も多い。
さらに大手宅配事業者からは「駐車取り締まりはルールなのである程度仕方がないが、郵便車両だけが取り締まりを免れているのはイコールフッティングの観点から看過できない」といった指摘もある。
電動自転車のアシスト力を現行の2倍から3倍に緩和
警察庁では、駐車規制の緩和以外にも、運送業界の人手不足に配慮した取り組みを進めている。
今月末に、リアカー付三輪電動アシスト自転車のアシスト力(人がペダルを踏む力に対して駆動補助機が補助する力の比率)の上限を現行の2倍から3倍に引き上げる改正道交法施行規則を公布・施行する。これにより、女性や高齢者など多様な人材の活用が可能になり、宅配業界などでの労働力不足の解消につながることが期待できる。
ヤマト運輸とヤマハ発動機による、企業実証特例制度を活用して3倍のアシスト力を有する自転車を使った実証実験の結果を踏まえ、道交法施行規則の改正について検討を行い、規制緩和が実現したもの。
(2017年10月26日号)