【ズームアップ】軽貨物の休廃業・解散が過去最多に
東京商工リサーチによると、「2024年問題」が間近に迫る中、宅配などを担う「軽貨物運送業(貨物軽自動車運送業)」の2023年の倒産(49件)と休廃業・解散(74件)の合計が過去最多の123件に達したことがわかった。倒産は1989年、休廃業・解散は2000年の統計を開始以来、最多を更新し、合計は3年連続で過去最多だった。コロナ禍で宅配市場は拡大したが、人手不足や燃料高騰、運賃の引き上げ難、競争激化などで「利益なき成長」に陥っており、24年はさらに淘汰が加速する可能性も高まっている。
相次ぐ新規参入で競争激化、市場競争から脱落
23年の「軽貨物運送業」倒産は3年連続で増加し、49件(前年比36・1%増)となり、2年連続で過去最多を更新、増勢を強めている。負債総額は、30億200万円で前年の約3倍と大幅に増加。前年に発生がなかった負債5億円以上が2件発生し全体を押し上げた。ただ、負債1億円未満は44件で約9割を占め、倒産と廃業は小・零細企業が中心となっている。
原因別では、販売不振が38件(構成比77・5%)と最も多く、過小資本と他社倒産の余波が各3件(6・1%)で続く。形態別では、破産が46件(93・8%)と消滅型が9割超を占めた。再建型は民事再生法の2件(4・0%)、取引停止処分は1件(2・0%)だった。資本金別では、個人企業他含む1000万円未満が45件(91・8%)、従業員数別では5人未満が39件(79・5%)だった。
23年に倒産以外で事業を停止した「休廃業・解散」は74件(前年比12・1%増)で、過去最多を5年連続で更新。12年までは倒産が多く、休廃業・解散は小康状態が続いていた。その後、相次ぐ新規参入で競合が激化するにつれ、市場競争から脱落し、休廃業・解散する事業者が増加してきた。
ただ、コロナ禍では“巣ごもり需要”をあてにした安易な参入組も増え、ゼロゼロ融資をはじめとするコロナ関連の資金繰り支援策で一息ついた。だが、支援の縮小・終了とともに、倒産に加え、休廃業・解散も一気に増加。休廃業・解散は業歴5年未満が目立ち、23年はその比率が約4割まで上昇。スタートアップ企業が、経営が軌道に乗らず倒産する前に早めに廃業を決断したとみられる。
コロナ禍前と比べ4割弱の大幅減益
22年10月期~23年9月期(23年)を起点に、5期連続で売上高と利益(最終利益)が比較可能な軽貨物運送業の269社を分析した。コロナ禍の影響が一部含まれる20年は、売上高は1661億900万円(前年比11・9%増)と在宅勤務などの定着で扱いが増加したようだ。一方、利益は34億9800万円(5・4%減)と減益で、運賃伸び悩みとコスト増が影響した。
直近の23年は、宅配など荷物量の増加に加え、一部で運賃上昇の流れもあり、売上高は1796億1200万円(10・4%増)と増収に転じた。利益も23億6300万円(41・2%増)と大幅増益を達成したが、コロナ禍前の19年との比較では、売上高は21・0%増に対し、利益は36・1%減と大幅な減益にとどまった。こうした業績の厳しさも、倒産や休廃業・解散の増加につながったようだ。
(2024年2月29日号)