【トラック輸送】冷蔵倉庫業界が「トラック予約システム」で商慣習改善?
冷蔵倉庫業界で「トラック予約システム」が注目されている。運送会社から「到着時間」に加え、「運送依頼」情報を事前に入手できれば、冷蔵倉庫側では寄託者からの「出庫依頼」との事前照合や出庫準備を行えるため、トラックの待機時間削減と冷蔵倉庫の作業効率アップの両立が可能だ。「トラック予約システム」の導入を機に、“予約制”と“運送依頼情報の共有”が浸透すれば、「トラックが到着してからしか貨物の出庫準備ができない」という冷蔵倉庫特有の事情の改善が期待できる。
トラックと冷蔵倉庫間の情報連携不足
冷蔵倉庫でのトラックの長時間待機の背景に、トラックと冷蔵倉庫間の情報連携不足がある。貨物の引き取りのトラックの手配は買い手側が行うため、冷蔵倉庫側では「どの会社の、どのトラックが、いつ、何を引き取りに来るか分からない」のが現状だ。
トラックが到着して初めて、冷蔵倉庫側では運送依頼の内容が分かるため、事前の出庫準備ができない。ドライバーが持参する運送依頼と冷蔵倉庫が寄託者から受け取った出庫依頼の中身が一致しないこともあり、出庫作業の遅延を招いている。
日本冷蔵倉庫協会(日冷倉協、大谷邦夫会長)が7月に公表した、待機時間削減に向けての自主行動計画でも、「運送依頼と入出庫依頼の内容の不一致」と「トラックの到着時間情報の不足」を待機を発生させる要因としている。
自主行動計画では、現状では「到着順・並んだ順」になっている受付・作業を「予約順」に変え、トラックが「並ばなくてもよい方法」の導入を提言しており、そのツールとして「トラック予約システム」の活用に関心が高まっている。
冷蔵倉庫の業務特性に合った仕様・要件を
日冷倉協では昨年7月に「物流効率化部会」を発足し、冷蔵倉庫でのトラックの待機時間問題等を検討。冷蔵倉庫としての自主行動計画と各関係先への提言を7月に公表することで当初目的は達成した。
同部会では、「トラック予約システム」について、冷蔵倉庫の業務特性に合った仕様・要件をとりまとめ、システムベンダーに提示するため、9月から活動を再開。1日には、「トラック予約システム」のシステムベンダーを招き説明会を開いた。
当日説明したベンダーは4社(コンテック、エル・スリー・ソリューション、Nmシステムズ、日本ユニシス)で、部会員の7社からシステム担当者も含め20人が参加。システムについて意見交換を行った。
バースの混み具合を到着前に確認できる機能や、パソコンだけでなくスマートフォンからも予約できる機能など様々な特長があるが、「待機時間削減」と「冷蔵倉庫の作業効率アップ」の両立には「運送依頼情報」の照会機能が不可欠とみられている。
「アイテム数が多い」「小ロット」「賞味期限管理」といった昨今の冷蔵倉庫の業務特性を踏まえると、前日に運送依頼情報が入手できれば、翌日の作業のスケジュールを組みやすく、業務の平準化を図れるなど「働き方改革」にもつながる。
なお、「トラック予約システム」を導入しなくとも、電話で到着時間を連絡したり、冷蔵倉庫に運送依頼情報を事前にファクスするなど“アナログ”な方法でもこうした仕組みが広がれば、待機時間削減や作業効率アップの効果が期待できるという。
(2017年9月14日号)