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JR貨物がモーダルシフト倍増、革新的な取り組み不可欠

2023.10.17

JR貨物(本社・東京都渋谷区)の犬飼新社長(写真)は11日に行われた定例会見で、政府が6日に公表した「物流革新緊急パッケージ」の主要施策として、鉄道と内航海運の輸送量を今後10年程度で倍増させる目標を打ち出したことについて、「鉄道に対する高い期待に応えていきたい」との意欲を述べた一方で、「達成に向けたハードルは非常に高い。例えば、貨物新幹線のような革新的なトピックがないと実現は難しい」との認識を示した。同社は今後、目標達成に向けた具体策づくりを国土交通省と進めていくことになるが、非連続的なモーダルシフト推進のためには、法的に担保された鉄道利用促進策なども議論の俎上にのぼっていきそうだ。

「期待の表れだが、ハードル非常に高い」

政府は6日、「2024年問題」対策を協議する関係閣僚会議を開いて「物流革新緊急パッケージ」を策定。再配達率の半減を目指して「置き配」利用者にポイントを付与する取り組みや「標準的な運賃」の引き上げに加えて、貨物鉄道と内航海運の輸送量(トンキロベース)を今後10年程度で2倍に引き上げることを目標に据えた。

この発表を受けて、犬飼社長は11日の会見の中で「貨物鉄道に対する期待の表れだという受け止めがある一方で、達成に向けたハードルは非常に高いというのが率直な思いだ。輸送量を倍増させるためには当然、列車本数を増やさなければならず、そのためには機関車や貨車に加えて、運転士も増やさないといけない。貨物駅での作業要員の確保という課題も出てくる。さらにはダイヤの問題もある。現在も過密なダイヤの中で運転しており、その状況下で、リードタイムをはじめとするお客様のニーズに応える列車をどこまで増やせるかが大きな課題になる」と述べ、「鉄道への期待に応えていきたいが、現状では課題が多いというのが正直なところだ」との思いを語った。

在来線インフラの強化も必須に

JR貨物は現在、国交省が昨年開催した「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」の中間報告で示された課題などを踏まえ、2025年度のコンテナ輸送量を196億トンキロに引き上げることを必達目標、209億トンキロをチャレンジ目標に据えている(20年度実績は168億トンキロ)。

犬飼社長は「そこまでは現状の輸送力の中で積載率を高めることなどによって達成し得る目標だが、そこから先は現在の延長線上でやっていても難しい」として、「倍増は、当社の自助努力だけでは到達しえない目標だ」との認識を語った。

その上で「目標達成には、何か革新的なトピック、例えば貨物新幹線を国の主導で実現していくような取り組みが必要になる」との考えを示した。また、EUが取り組んでいるグリーンディール政策に言及し「フランスでは鉄道で2時間半以内に到着する移動については航空機の利用を禁じているほか、貨物輸送でもEU全体で鉄道輸送量を30年に15年比で1・5倍、50年に2倍に引き上げる方針を示し、そのためのインフラ整備を進めている。日本でもそれと同じように、法的に担保された鉄道利用促進策や制度的な仕組みが必要になるのではないか」と、法律や制度面によるモーダルシフト促進策の必要性に言及した。

さらに、「仮に机上の計算として目標を達成できたとしても、これまでのように在来線で自然災害による輸送障害が頻発すれば達成はおぼつかない」として、在来線インフラの強化も不可欠になると述べた。
(2023年10月17日号)


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