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通関業者の立替払い解消、ベストプラクティスに=公取委

2023.06.15

公正取引委員会の小林渉事務総長は7日の定例会見で、荷主が通関業者に関税・消費税を立替払いさせていることについて、昨年5月に「問題につながるおそれのある事例」と公表して以降、立替払いの解消に至った事例に言及し、荷主と物流事業者の取引慣行改善の「ベストプラクティス」として報告した。通関業者による立替払いは長年、業界特有の商慣習とされてきたが、公取委では「不当な経済上の利益の提供要請」の事例として注意喚起しており、荷主にとっては取引上のリスクになる可能性がある。

立替払いは「問題につながるおそれ」

輸出入者の通関手続きを代理・代行する通関業者は、輸入者に代わって輸入品にかかる関税、消費税等を対価を得ることなく立替払いしているケースがある。公取委は昨年5月25日に公表した「荷主と物流事業者との取引に関する調査結果について」において、問題につながるおそれのある事例として、荷主が通関手続きの際に発生する関税および消費税を荷主が直接支払わず、物流事業者に対し、立替払いをさせた事例を初めて掲載した。

同様の事例を把握するため、22年度の書面調査において新たに回答項目を設けるなどの対応を実施。今月1日、22年度における荷主と物流事業者との取引に関する調査結果および優越的地位の濫用事案の処理状況として結果を公表。その中で、昨年度に続き、通関手続きにおいて荷主が物流事業者に関税や消費税の立替払いをさせた事例を「問題につながるおそれのある事例」として再掲した。

公表資料を活用した取引環境改善に期待

一方で、昨年度の公表資料の内容を把握した荷主が自ら立替払いをさせるのを取りやめたり、物流事業者が荷主に立替払いの見直しの申し入れをし、立替払いを取りやめてもらった事例が認められた。具体的には、包括納期限延長制度の利用やリアルタイム口座振替方式の利用を開始するなど、通関業者による立替払いを不要とする措置を講じた事例について1日の公表資料で紹介した。

公取委の小林事務総長は7日の定例会見で、「問題につながるおそれのある事例」として公表して以降、通関業者による立替払いの解消が実現した事例を念頭に、「このような改善の取り組みが一層加速することを期待し、ベスト・プラクティスとして紹介した。荷主と物流事業者の双方が、この公表資料を活用して、取引慣行の改善に取り組んでくれることを期待している」と述べた。

東京通関業会が昨年行ったアンケート調査では、9割が「関税・消費税等の立替払いを行っている」と回答し、立替払いを行っている理由(複数回答)を尋ねたところ、「荷主からの立替払いの要請」が9割にのぼる。1日の公表資料でも「荷主が物流事業者に支払う手数料に比して極めて大きい額の関税および消費税を立替えさせた」(生産用機械器具製造業)事案も報告されている。

公取委は、こうした事案について引き続き「不当な経済上の利益提供要請」として注視していく方針。なお、1月に公取委が東京通関業会向けに行った講演会では、当該荷主との取引数量や取引額の増加など立替払いよって得られる「直接的な利益」が通関業者に明示され、それが立替払いの負担を上回っていなければ、「不当な経済上の利益の提供要請」とみなされる可能性があるとの見解を示している。
(2023年6月15日号)


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