安田倉庫が医療機器、医薬品物流拠点を拡充
安田倉庫(本社・東京都港区、藤井信行社長)は19日、2023年3月期決算説明会を開き、藤井社長が2022~24年度の中期経営計画における重点取り組みについて説明した。
物流拠点のさらなる拡充では、昨年9月に九州の新たな物流拠点として福岡県小郡市に「九州営業所第二倉庫」を開設。17年7月に開設した九州営業所(福岡県大刀洗町)に続く第二倉庫を立ち上げたもので、両拠点の一体運営により九州地区におけるニーズの対応力や九州全域向けの配送機能の強化を図る。
医薬品専用の輸配送網と、医薬品管理に必要なGDP(医薬品の適正流通基準)を備えた新たな医薬品物流拠点として、埼玉県加須市に新倉庫(約4万1700㎡)を建設中(イメージ)。医療機器総合ワンストップサービスの提供拠点として東京・東雲、辰巳に続く「羽田メディカルロジスティクスセンター」を昭和島に開設を予定している。
23年3月にはエーザイ物流をグループ会社化。両社のノウハウを組み合わせ、国内屈指の医薬品物流プラットフォームを構築し、安定した総合メディカルサービスを目指す。22年11月には、医療機器開発ベンチャーのニューロシューティカルズに出資し、メディカル物流サービスの拡充とさらなる業容拡大を図る。
国内輸配送ネットワークを拡充
近年、運送会社のM&Aを積極的に進めており、23年4月には京都の運送会社YSO Logi(旧社名OSO)をグループ会社化。既存の子会社の安田運輸に加え、近年グループ化した北陸の大西運輸、南信貨物自動車、YSO Logiの運送系4社の連携強化による国内輸配送ネットワークの拡充を図る。
海外では、中国でフォワーディング業と倉庫業、ベトナムでフォワーディング業、インドネシアでフォワーディング業を展開しているが、インドネシアでは3月に倉庫業の開始を目指す法人を設立した。シンガポール、タイ、インドなどアジア太平洋地域における新たな拠点展開を目指す。
IT機器の資産・在庫管理、キッティング、設置・導入、運用・保守、回収、データ消去、廃棄までの一連の業務を引き受ける「IT機器ライフサイクルマネジメント」サービスを拡大。大黒営業所(横浜市鶴見区)に昨年開設したECセンターでは、ギフト包装、メッセージカード同封など流通加工を強みに、24時間365日体制で自社ECによる販売戦略をサポートする。
法人移転・文書保管から発展させたBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業では、昨年9月に芙蓉総合リースと業務提携し、新たな共同ビジネス展開を目指す。DX・テクノロジーの活用では、AGV(自動搬送車)、AMR(自律走行搬送ロボット)、次世代ロボットソーターなどを導入し、物流現場の省人化を進める。
医療機器分野で存在感のある物流会社に
藤井社長は、近年の運送会社のM&Aの効果として、「地域のカバー範囲が広がり、『2024年問題』対策としてスワップボディ車を活用した中継輸送や荷物の受け渡し、帰り荷の融通などが期待できる。グループ運送会社のネットワーク統括を常務に任命し、4社ミーティングも開催している」と報告した。
インドネシアで計画している倉庫事業のターゲットでは、「フォワーディング事業で扱っているアパレルのほか、医療機器関連、自動車部品」を挙げるとともに、「食品の物流も大きなターゲットになる」と指摘。ベトナムでもフォワーディング事業に加え、倉庫業の開始に向けて用地を探索中であるとした。
国際輸送では、「当社が強みを持つアパレル以外の柱として鋼材の輸入に力を入れており、継続的に数社との取引を行っている」と成果を報告。医療機器総合ワンストップサービスについて、物流事業者として初の医療機器修理業許可(修理区分特管第1~8区分まで)を取得していることや羽田空港から至近の物流拠点立地を強みとして挙げた。
医療機器の総合ワンストップサービスの展望として「当社自身も医療行為の一部を担っていることになり、そこに間違いや齟齬があれば健康、さらには生命に影響する。責任の大きな業務だとしっかり認識しないといけない。高齢化が進む中で、医療機器にかかわるマーケットは安定的に伸びている。医療機器の物流において大きな存在感のある物流会社になっていきたい」と意欲を見せた。
なお、24年3月期は、取引先拡大による既存施設の収益力向上や新たにグループ入りした関係会社の収益寄与を見込み、増収を予想。物流施設新設やリニューアル関連費用等により経常利益・純利益は減益も、営業利益は増益に反転させる計画。売上高680億円(前期比13・8%増)、営業利益は26億円(2・6%増)、経常利益35億円(7・3%減)、純利益21億5000万円(4・3%減)を見込む。
(2023年5月25日号)