軽貨物の4分の1が「点呼を実施していない」=国交省/軽貨物運送実態調査
国土交通省は16日、軽貨物運送業の個人事業主を対象とした実態調査結果を公表した。それによると、点呼を実施していない軽貨物運送事業者が全体の25%を占めていた。また、法令が定めている拘束時間や休憩期間などについて遵守していない事業者が39%に上った。事故件数が増加傾向にある一方、法令を遵守していない事業者が一定数存在しており、安全面の課題が浮き彫りになった。国交省は安全対策の強化に向け、対策方針を2024年3月までに打ち出す。
4割が「改善基準告示」を遵守していない
実態調査の結果は16日に開催した「貨物軽自動車運送事業適正化協議会」第2回会合で公表した。調査は軽貨物運送の個人事業主1万人を対象として3月に実施。772者から回答があった。軽貨物運送の事故の特徴は、一般のトラックと比べ「人との事故」の件数が多く、「追突」「出会い頭衝突」が多かった。事故に至った法令違反では「安全不確認」による事故件数が最多だった。また、事故は「20歳代」の割合が多かった。
運行管理(酒気帯びの確認を含めた点呼の実施等)を「実施していない」者は全年齢層で25%を占め、年齢層が高いほうが実施率は低い傾向がみられた。「改善基準告示」など法令が定める拘束時間・休憩期間などを「遵守していない」者は全年齢層で39%を占め、年齢層が低いほうが遵守率は低い傾向がみられた。「遵守していない」事業者4割のうち、「基準は理解しているが遵守していない」が25%、「基準を知らなかったため遵守していない」が14%だった。国交省は今後、軽貨物事業者に向けて「ドライバーの指導・監督マニュアル」を今年度中に作成する方針。加えて、軽貨物事業者に対し、運行管理者講習の受講や運転者の適性診断の受診を推奨する。加えて軽貨物事業者向けの運行管理セミナーを開催することを検討している。
事故発生の要因は半数以上が荷主の違反原因行為
軽貨物事業者の取引先はアマゾンなど大手通販業者が4割と最多を占め、事業者を下請とする大手運送事業者が3割、運送マッチングサービス事業者が3割となっていた。事故発生での荷主による違反原因行為の有無は「ある」の回答が54%あった(図)。違反原因行為では「相当量の荷物を依頼されたため、法で定める拘束時間を超えて配達しないと間に合わなかった」が40%と最多だった。次いで「適正な運行では間に合わない到着時間を指定された」が27%あった。
ノルマ達成のため道交法違反の危険も
無理な依頼を指摘する声が多く寄せられた。通販サイト事業者に関する例では「配る個数が尋常でない量を依頼される」「渋滞状況や運ぶ環境など(タワーマンション、百貨店)が考慮されていない」「配送ノルマが達成できなかったら仕事が来なくなる」「過積載を要求される」「通行量の多い道路を跨いでの配送指示があり、改善を依頼しているが全く改善されない」などの意見があった。
元請については「12~14時の配達があり、昼食を食べる時間もない。20時以降の配達もあり実働時間は15時間を超える」「日曜明けに、契約外にもかかわらず仕分け作業を個人事業主にさせている。(個人事業主は)やむを得ず対応している」「平日も仕分けを手伝わないと配送が間に合わない」など過重労働を訴える声があった。
運送マッチング事業者関連では「とにかく時間厳守で遅れると評価点が下がる。評価点が下がると仕事が減るため、道路交通法に抵触してしまうような危険がある」「駐車禁止場所に駐停車しなくてはならない状況や、駐車違反をしないために時間貸し駐車場を利用した際の駐車場代金が荷主や委託会社からもらえない」など違反原因行為が指摘された。
(2023年5月23日号)