「標準的な運賃」、制度延長に前向き=国交省・堀内自動車局長会見
国土交通省の堀内丈太郎自動車局長は2月28日、専門紙記者会見を開き、現在実施中のトラック運送事業者を対象とした「標準的な運賃」と業界の多重下請構造に関するアンケート調査について目的や概要を説明した。標準的な運賃の浸透度合いや活用状況など把握するもので今月末までに調査結果を集約。これを踏まえ、適用期限が2024年3月末までとなっている標準的な運賃の告示制度について「延長など所要の対応について検討する」と表明するなど制度延長へ前向きな姿勢を示した。
全国の半数の事業者が届け出るも「道半ば」?
「2024年問題」を前にトラックドライバーの賃上げや労働環境改善を図るため運賃水準の引き上げを狙って制定された標準的な運賃の告示制度。改正貨物自動車運送事業法に基づき、20年4月に告示され、まもなく4年目を迎えようとしており、今年1月末の時点で、全国の運送事業者の52・6%が標準的な運賃に基づき運賃変更届を行った。
標準的な運賃制度はスタートの時期がコロナ禍の拡大期と重なった〝逆風〟もあり、当初は事業者への浸透や荷主との運賃交渉を行いにくいなど悪条件下にあった。国交省は全日本トラック協会など業界団体とともに周知活動を続け、制度施行後3年で全国の半数の事業者が届け出るに至ったが実勢運賃の水準をみると「まだ道半ば」との評価もある。
同制度は改正事業法で24年3月末までの時限措置と規定され、運送業界からは延長への要望が強い。「3年の延長が望ましい」と具体的な声も聞こえる。実施中の調査では、標準的な運賃を用いた荷主との交渉状況や延長意向の有無を問う項目もある。国交省はこれらを確かめた上で、制度延長に向けて「所要の対応」に取り組む考えだ。
多重下請構造、一挙に変革は困難との認識も
併せて行っているのがトラック業界の「多重下請」の実態把握調査だ。堀内局長は「持続可能な物流の構築に向け、多重下請の状況を把握することで基礎データを収集し、施策の検討に活用する」とし、多重下請構造の是正や、契約条件の明確化など、取引環境の適正化に向けた施策を実施する考えを示した。
持続可能な物流を構築する観点から「現状の多重下請構造は適切なものだとは考えていない」と述べた上で、一挙に業界構造を変革することは困難な要素があるとの認識も示し、「荷主・元請・下請などサプライチェーン全体で取引環境適正化を図る必要がある」と強調。行政としても改善に向けて積極的に取り組む姿勢をみせた。
事業者アンケートでは、荷主や元請との関係や下請との関係、契約の書面化の状況、契約にない荷役の有無などを調べる。また、今月から荷主、実運送事業者、利用運送事業者へのヒアリングも実施する。荷主には「実際に運送する事業者の把握の有無」「実際に運送する事業者が何次請けかの把握状況」「多重下請構造によるトラブル」などを聞く。調査結果は4月にまとめる。
(2023年3月7日号)