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海コン輸送に「標準的な運賃」適用

2022.10.04

海上コンテナの陸上輸送にも「標準的な運賃」が適用される。トラック運送事業者が荷主と価格交渉する際の目安となる運賃として、国土交通省が貨物自動車運送事業法に基づき定めたタリフだが、海コン輸送に関してはこれまで規定されていなかった。国交省はこのほど、海コン輸送の運賃について「標準的な運賃」における「トレーラ(20tクラス)」の「4割増」とする考え方を提示。海コン輸送でも適正運賃収受に向けた機運が広がる可能性がある。

全ト協の要望を受け、規定を〝追加〟

「標準的な運賃」は改正貨物自動車運送事業法の目玉の施策。トラック運送業は他産業と比べ長時間労働・低賃金である状況を踏まえ、法令を遵守した健全な事業運営を行っていく際の「参考となる運賃」を国が示すことで適正な原価、利潤を収受することを目的に2020年4月に告示され、23年度末までの時限的措置として運用されている。

北海道、東北、関東、北陸信越、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄の運輸局別に距離制の運賃や時間制の運賃、さらには、運賃割増率や待機時間料など、運賃を交渉する際に目安となる金額が定められているが、国際海上コンテナ(40ft・20ft)の陸上輸送については規定されていなかった。

そのため全日本トラック協会(坂本克己会長)は現行の「標準的な運賃」の告示に、国際海上コンテナ輸送に適用される料金規定を追加するよう要望。国交省は、標準的な運賃の告示制度に海コン輸送の運賃割増規定を追加するには運輸審議会での審議が必要で、そのために一定の時間を要することから、通達の発出により基準を示すことで割増規定を〝追加〟した格好だ。

待機時間料も含めて「4割増」と規定

今回、国交省自動車局貨物課では、海コン輸送における運賃の考え方として、「標準的な運賃」における「トレーラ(20tクラス)」の「4割増」となると通達。海コン輸送も「標準的な運賃」を価格交渉に活用できるようになった。「4割増」の基準は、全ト協が海コン輸送事業者を対象に実施した実態調査結果を踏まえ算出した。

加えて、海コン輸送では長時間待機が多く発生している事情を考慮した上で、一定程度の待機時間料も含めた。通達では「4割増」と記すのみで20ftと40ftで差額を設定していないが、「全ト協の調査結果をみると20ftと40ftの輸送コストには2段構えにするほど大きな開きがみられず、平均値を基礎として『4割増』とした」と説明する。

海コンの運賃引き上げの追い風だが…

国際海上コンテナの運賃は通常、20ftと40ftで運賃が異なり、たとえば昭和58年タリフの料金を基に料率で運賃を設定する場合、主に港を起点に「Aという地点まで40ftあるいは20ftならラウンドでいくら」というように、コンテナのサイズと距離で決まることが多い。一般的に20ftは40ftコンテナよりも3割程度安いとされる。

近年では、20ftシャーシ不足により、20ftの運賃が上昇し、40ftコンテナと同水準になったり、「混雑して待機時間の長いコンテナターミナルからの搬出入」「距離が短い港湾地区の倉庫への配達」「待機時間が長い冷蔵倉庫」などは距離やサイズにかかわらず運賃は高くなるケースもある。

今回、20tクラスのトレーラの「4割増し」とされ、「標準的運賃な運賃」の適用対象に海コン輸送が加わったことに対し、「少しでも適正な運賃に近づくものとなるべく期待している」という声がある一方で、「ややアバウトで、どのように荷主(海貨業者)と交渉するのか悩む」との指摘もある。

また、荷主の工場や倉庫ではなく、コンテナターミナルでの待機時間についても、いまだに解消への道筋が明確になっていない。今回、海コン輸送の割増規定が標準的な運賃に設けられたことは事業者にとっては追い風となるものだが、この後には荷主や海貨業者との運賃交渉が控えている。

国交省では「国として標準的な運賃告示に新たな基準を示したが、だからといって運賃が自動的に上がるものではない。事業者は標準的な運賃をツールとして使い、取引環境改善に向けて交渉を行っていただきたい」とし、今後は全ト協と連携し、海コン輸送業者への周知を図っていく考え。
(2022年10月4日号)


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