軽貨物の過労運転防止へ荷主・元請けに要請=国交省
国土交通省が軽貨物運送の交通事故急増を受け、安全対策に乗り出した。1月30日に「貨物軽自動車運送事業適正化協議会」の初会合を開催。荷主・元請けの安全対策や過労運転防止を促進するため、事業者を含めた関係者間で情報共有や意見交換を行った。軽貨物運送の実態把握のため、初めて軽貨物事業の個人事業主を対象にアンケート調査を実施。調査結果を踏まえた上で、状況の改善が見られない場合、新たに検討会を設置するなどして規制強化に踏み込んだ議論に発展する可能性もある。
「適切な労務管理と健康管理を」=堀内自動車局長
近年、ラストワンマイル配送需要の高まりから軽貨物運送への新規参入、輸送頻度が増加。
交通事故も急増していることから、安全対策が緊急課題として浮上している。2024年4月から時間外労働の上限規制や、昨年12月に改正された新・改善基準告示に基づく規制が軽貨物運送のドライバーにも適用されることも踏まえ、国交省では安定的な軽貨物運送業の維持を図る観点から、荷主、事業者、行政が参画する協議会を設立した。
初会合には、荷主関係からはAmazonジャパン、日本フードデリバリーサービス協会が出席。元請事業者からヤマト運輸、佐川急便、丸和運輸機関、SBSホールディングス、CBcloud、ハコベルがメンバーとなり、事業者団体からは全日本トラック協会と全国赤帽軽自動車協同組合連合会(赤帽)が加わった。行政では国交省自動車局が事務局を務め、改善基準告示を担当する厚生労働省労働基準局監督課がオブザーバーとして参加した。
開会冒頭、国交省の堀内丈太郎自動車局長は「軽自動車を用いた貨物軽自動車運送事業は急増するラストワンマイル輸送を担うなど、国民生活を支える事業として必要性・重要性が増大している。これに伴い、輸送の安全確保と従事するドライバーの労働条件改善の重要性も高まっている」と現状に触れた後、「一方で、輸送の安全面を見ると事業用軽貨物自動車以外の事業用トラック全体では死亡・重傷事故件数は減少傾向であるにもかかわらず、軽貨物自動車の死亡・重傷事故件数は、21年においては16年と比べ約8割増になった」と報告した。
また、24年4月から働き方改革関連法に基づき、ドライバーの時間外労働上限規制(960時間)が罰則付きで適用されるとともに、同時施行となる改正改善基準告示では、一般トラックに限らず、軽貨物や自家用などすべてのドライバーが対象となることを指摘。ドライバーの過労運転防止を図るための適切な労務管理と健康管理の必要性を強調し、「法令の周知・浸透とともに、輸送の安全や適正な事業運営の確保、働き方改革の推進を図るため、荷主や元請け事業者、事業者のプラットフォームを運営する企業など関係者が一丸となり、安全対策や過労運転防止に取り組むことが必要だ」と訴えた。
荷主の違反原因行為の有無を調査
軽貨物運送業は地方運輸局に届出をして事業を開始した後、事業計画に変更がない限り、国の窓口を訪れる機会がない。国への事業報告の提出義務もないことから、事業の実態が不透明な状況がある。そこで国交省は初の取り組みとして、軽貨物運送の個人事業主1万者を対象にWEBによるアンケートを行う。調査項目は、年齢、性別、専業・副業など事業形態、取引相手(通販サイト・運送マッチングサービス・大手運送事業者)、1日あたりの平均取扱個数、平均月収、乗務前後の点呼の実施状況、点検整備の実施状況、荷主による違反原因行為の有無、改善基準告示の認知状況など。3月末までに結果をとりまとめる。
軽貨物運送も荷主勧告制度の対象に
事務局の国交省は、元請事業者と荷主に対しドライバーの過労運転を防止するための要請を行うとともに、事業者には、法令やドライバーへの指導・監督の実施マニュアルに定められた運行管理の実施や安全運転の遵守、点検整備の実施などを再度求めた。荷主向けては拘束時間超過となる依頼をはじめ、無理な配送、依頼になかった附帯業務の依頼などを行わないなど適正な運送依頼を行うよう要請した。
過労運転防止措置義務違反など違反行為への行政処分を行う場合、違反原因行為が荷主に起因すると認められるときは貨物自動車運送事業法に基づき、荷主勧告の対象となることも説明。違反原因行為の疑いが認められる場合は、荷主に働きかけや要請を行い、勧告を行った場合は荷主名を公表するとした。その上で、軽貨物事業者に対し、国交省HP内に設置した事業者からの情報収集窓口(通称「目安箱」)への情報提供を呼び掛けた。
(2023年2月2日号)