電力料金、11月時点で40~50%の上昇=日冷倉/年末会見
日本冷蔵倉庫協会(池見賢会長)は5日、年末記者会見を開催し、池見会長、田中一範副会長(総務委員長)、西願廣行副会長(業務委員長)、梅澤一彦副会長(環境・安全委員長)、大石竜司理事(税制補助金特別委員長)、土屋知省理事長が活動を報告した。
池見会長(マルハニチロ)は、「ロシアによるウクライナ侵攻が現在も継続し、食料をはじめモノの価格が上昇し、とくにエネルギーが高騰している。日米金利差により円安が加速し、電気料金の値上がりが冷蔵倉庫の運営に大きな影響を与えている。今年も異常気象による大きな災害があり、温暖化対策も待ったなしの状況にある」と概況を説明。
11月9日に物流倉庫振興推進議員連盟の総会で、冷蔵倉庫に対する各種補助金などの支援継続を要望したことを報告するとともに、「来年は協会創立50周年の節目の年となる。新型コロナウイルス感染症は収束するのか、ウクライナ情勢はどうなるか先が予想できない不安はあるが、しっかり足元を見つめて様々な課題に真摯に取り組む」と述べた。
「2024年問題」、倉庫は「発着荷主」ではない
田中副会長(田中倉庫運輸)は、来年10月12日に創立50周年の記念式典を東京・帝国ホテルで開催し、記念誌を制作中であることを報告。外国人労働者の活用に関する検討については、コロナ禍での外国人の入国減少などを受け、「部会を立ち上げて検討していたが休止している。ただ、再度検討してほしいとの意見もある」とし、再開にも含みを持たせた。
また、トラックの「2024年問題」について自身の体験を話し、「広島地区のトラック地方協議会で、冷蔵倉庫、普通倉庫はともに『荷主』との位置づけの配置だったが、倉庫業は『発着荷主』ではない。荷主の指示なく荷物を出庫することができず、それをトラック業者側から『待たされた』と言われることに少し矛盾を感じる」と語った。
来年度以降、10%程度の値上げではまかなえず
西願副会長(フリゴ)はパレット利用の効率化について11月にレンタルパレット2社に要望を出し、提案依頼を行ったことを報告。具体的には、業界としてパレットを長期でレンタルすることに関し、レンタル会社主導による管理やパレットの材質・規格について積極的な提案を依頼したことを明かした。
庫腹のひっ迫に関しては、「首都圏では再保管先への移管でしのいでおり、仙台、福岡、一部では北海道まで(再保管先が)広がっている。阪神地区も近畿圏での再保管先の確保は限界にきている」とし、入庫時期の調整を行っているとした。今後の展望では、「春ごろまで在庫が多い状態が続くのでは」との見方を示した。
貨物動向としては冷凍食品の増加傾向を挙げ、「冷蔵倉庫会社も庫腹を増やそうと努力しているが、大都市圏では用地が不足している。物流不動産の開発物件がどんどん拡大し、用地を圧迫している」と述べ、土地の入札があっても冷蔵倉庫会社が入札に参加しにくい実態も説明した。
電気料金の高騰では、「夏は前年比30%増だったのが、11月時点では40~50%の値上がりになっている。新電力は夏頃からすでに2倍の料金に跳ね上がっている」とし、来春以降の値上げの可能性にも触れ、「来年の遠くない時期に倍近い料金になると危惧している」と価格転嫁の必要性を訴えた。
価格転嫁の状況に関して、「保管料については、全体の7割程度の会社が料金転嫁に動いてる。値上げ幅は10%程度でお願いしているところが多いのではないか。保管経費に占める動力費は20%前後、会社によっては25~30%にもなり、来年度以降、大幅に電力料金が上がると10%程度の値上げではまかなえない」と強調した。
梅澤副会長(ニチレイロジグループ本社)は、脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業で、今年度3次までに冷凍冷蔵倉庫分野で109事業者(会員事業者は47事業者)が採択されたと報告。業界のカーボンニュートラル行動計画の30年目標について「設備能力tあたりのCO2排出原単位を13年度比51%削減する」目標を説明した。
大石理事(アイセン)は、23年度予算編成・税制改正要望事項として、11月に①冷蔵倉庫における省エネ型自然冷媒機器導入補助の継続等②中小営業冷蔵倉庫向けを中心とした自動化機器設備導入支援③電力の安定供給と価格の安定――について、物流倉庫振興推進議員連盟に要望したことを報告した。
(2022年12月8日号)