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電気料金高騰に悲鳴、前年比4割増も=冷蔵倉庫

2022.11.01

電気料金の高騰を受け、冷蔵倉庫業界から悲鳴が上がっている。火力発電に使用する燃料の高騰分を転嫁する「燃料費調整額」の上昇により、支払い電気料金が前年比で4割増になっているケースもある。一方で、物価高の影響で荷動きが鈍化したことで大都市圏を中心に在庫が積み上がり、庫腹のひっ迫が深刻化。収容可能なスペースに対する貨物の埋まり具合を示す「庫腹占有率」は9割を超えている地域もある。電気料金上昇分の料金への転嫁に加え、一部では取引の見直しの動きも広がっている。

コストに占める割合が上昇、支援の要望も

石炭や液化天然ガス(LNG)などの輸入価格高騰による燃料費調整額の上昇、再生可能エネルギー発電促進賦課金の増額、電力市況の悪化や電力需給ひっ迫、さらにはウクライナ情勢の影響など様々な理由により電力調達価格が上がっている。新電力を含む各電力会社が電気料金プランを見直し、電気料金の値上げが続く。

冷蔵倉庫は冷却のために電力を多く使用し、業界関係者によると、コストに占める電気料金の割合は従来は10%程度だったが、上昇は確実。業界の支払い電気料金の上昇分は事業者によって異なるが、前年比で30~50%超の値上がりになっているという。予算を策定し、前年の倍になる会社もあるという。

日本冷蔵倉庫協会では6月、「電気料金高騰に伴う倉庫料金に関するお願い」と題する文書をホームページに公開。「電力使用量削減に取り組んでいるものの、寄託物の冷却のためにはおのずと限界があり、物価高騰による各種経費の削減もままならない」とし、寄託者に窮状への理解と協力を求めた。

政府は物価高騰対策として新たに6000億円の「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」を創設。地方創生臨時交付金の活用による冷蔵倉庫への支援を自治体に要望する動きも一部ではあるが、「電気代が上がって困っているのは冷蔵倉庫業界だけでない。電気料金の契約も様々で一律に補助金を配るのは難しいのでは」(冷蔵倉庫関係者)と冷静な見方もある。

スペース不足が深刻化、「入れる倉庫ない」

冷蔵倉庫のもうひとつの課題が庫腹のひっ迫だ。コンテナ物流の混乱が改善し、輸入品の搬入の正常化やウクライナ情勢を受けた在庫の積み増し傾向、これに物価高に伴う需要減と出庫の鈍化が重なり、スペース不足が深刻化している。「入れる倉庫がなく、コンテナを引っ張って来られない状況だ」(京浜地区の冷蔵倉庫)という。

日本冷蔵倉庫協会の主要12都市受寄物庫腹利用状況によると、今年の5月以降、在庫水準が急激に上昇し、6月以降、月末在庫量の200万t超えが続く。9月は209万tとなり、在庫率は31・2%。東京の在庫率は40%を超えている。庫腹占有率は92・4%で大都市圏を中心にひっ迫感が強まっている。

需給がタイトな中で、一部では取引を見直す動きもみられる。電気料金のみならず、本格的な経済の再開を受けて派遣などの人件費も高騰し、保管料、荷役料の値上げ機運も広がる。電気料金の上昇の天井は見えず、値上げが受け入れられた企業でも、「再度値上げを検討することになるかもしれない」との声も聞こえてくる。
政府は10月28日に策定した総合経済対策で、企業の電気料金の負担軽減に乗り出すが、その効果も注目される。
(2022年11月1日号)


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