全国通運連盟、埼玉で「通運事業フォーラム」開催
全国通運連盟(渡邉健二会長)は19日、さいたま市内のホテルで「第4回通運事業フォーラム」を開催した。持続安定的な輸送サービスの提供に向けた連盟会員事業者間の連携および協働化促進を目的に企画されているもので、当日は、会場参加とWeb会議システムを活用したライブ配信の併用で行われた。
冒頭、渡邉会長が挨拶に立ち、「物流業界ではSDGsへの対応やDXへの取り組みが本格化するとともに、構造的なドライバー不足や2024年問題を背景に鉄道コンテナ輸送へのニーズは今後一層高まる」との認識を示しながらも、「気候変動問題は輸送障害を始めとする鉄道貨物そのものへの損害も与えている」として、国交省主導による「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」のとりまとめにおいて、輸送障害への対策強化を含めた14の課題と今後の方向性が示されたことを紹介した。
さらに、「我々は物流全体をいかに構築し、鉄道貨物輸送をどう位置づけ、どのようにあるべきかを本来検討すべきで、会員の皆さんと相談していきたい。こうした問題を抱える中、お客様のニーズを的確に捉え、モーダルシフトの推進・定着への取り組みを一層進めるためには会員相互の連携と協働が不可欠。フォーラムでは通運業の生産性向上と青函ルート問題に関する講演を用意し、通運業界をあげて各問題への対策を進めてほしい」と呼びかけた。
講演では、NX総合研究所の大島弘明取締役が「先進事例に学ぶ通運事業の生産性向上方策」と題して、2021年度に通運連盟が実施した「通運事業における労働力不足対策のための調査」の結果および分析を報告。手積み手降ろし中心の荷役作業や手待ち時間の発生などの効率化阻害要因は、前回の15年度調査から大きな改善に至っておらず、「2024年問題を乗り越えるためには物流現場の生産性向上と働き方改革が重要」とした。
具体的には作業効率化や労働条件の改善、共同集配などの取り組みが求められ、とくに物流資材の標準化は手荷役解消や積み合わせ輸送にもつながることを指摘。また、労働時間の短縮に向けて「現場の可視化を進めて、荷主企業にデータを見せられるようにするべき」とした上で、「トラック運送事業者の自助努力も必要だが荷主企業の協力も欠かせない」と述べた。
並行在来線維持へ4者協議に入るとの報道も
続いて「青函ルートの重要性と鉄道インフラの意義」をテーマに、F―LINEマルチモーダルサービスセンター長の和田信幸氏と北海道通運業連合会専任理事の河野敏幸氏、聞き手として湯浅コンサルティングの芝田稔子氏が登壇し、ディスカッションを行った。
はじめに、河野氏が青函ルート問題の概要を説明。北海道新幹線の札幌延伸時における並行在来線の存廃問題と、青函トンネルを含む新幹線・貨物列車の共用走行問題を解説した。とくに、25年を目途とした最終判断を控える並行在来線・海線(函館~長万部駅)の存廃については北海道、JR北海道、JR貨物、国交省が4者協議に入るとの報道に触れ、「海線の維持に向けた前進で、北海道側の存廃判断と国への支援要請は急務」との考えを述べた。
河野氏は「北海道は鉄道と船舶が2大輸送モードであり、現在の輸送力のバランスを維持できなければ、国内の物流インフラ全体に影響を与える」ことを改めて強調。仮に青函ルートが消失すれば、北海道および青森、岩手で貨物列車が走行する並行在来線においても貨物収入が大幅に減少し、「結果として、JR貨物への線路使用料の増額要請、および鉄道運賃の大幅な上昇にもつながりかねない」と業界に警鐘を鳴らした。
これに対し和田氏は、本州から北海道へ商品を出荷するF―LINEの取り組みを紹介し、「輸送モードの複線化、複々線化に取り組んでおり、北海道は鉄道が1割強で、船舶輸送が8割を占める。そのため、青函ルートが棄損されても当社が困ることはさほどないとも言えるが、複線化、複々線化を成り立たせている点では、非常に重要なインフラ」とコメント。他方で、「とくに当社は荷主が大手メーカーであることから物量をまとめることができ、その場合5tコンテナから20tトレーラーへの転換は可能だが、中小規模のメーカーでは出荷単位が5tコンテナ中心になることもある」とし、河野氏も「鉄道コンテナの8割がコンテナ1個当たりで利用されている」と説明して、こうした荷主企業のサプライチェーンへの影響を示唆した。
「なにより鉄道が船舶に優位性を持つのがCO2排出量」と和田氏。「鉄道のCO2排出量は船舶の2分の1であり、お客様からの引き合いには第1に鉄道、第2に船舶、3番目にトラックを提案している。社会への貢献が当社のモットーで、青函ルートがなくなると困るというのが実際のところ」と述べ、鉄道輸送の利用にあたっては「JR貨物および通運業界には自然災害からの早期復旧と、復旧途中のレスポンスの迅速化を期待したい」としながら、「荷主としても、こうした場を借りて青函ルートの必要性を訴えていきたい」と展望した。
(2022年10月25日号)