国交省、荷主対策深度化で1社に初の「要請」
国土交通省が8月下旬、改正貨物自動車運送事業法の荷主対策制度に基づき、荷主1社に対して改善を行うよう「要請」したことがわかった。改善を促す「働きかけ」についてはこれまで62件あったが、もう一段厳しい措置である「要請」は今回が初のケースとなる。当該荷主は昨年、国交省から「働きかけ」を受けており、改善を図る趣旨の報告書を提出していた。しかし、その後も改善が行われていない旨の情報が寄せられことから、国交省は経済産業省と連携の上で調査を行い、今回「要請」に踏み切った。
経産省は「不名誉なこと」と受け止め
改善要請を受けた荷主はトラック事業者に長時間の荷待ちをさせていた。この情報が寄せられた後、国交省は裏付け調査を実施。当該荷主を所管する経産省と情報を共有した上で、長時間の荷待ちを改善するよう、まずは「働きかけ」を行った。当該荷主は改善の意思を表明し、報告書を国交省に提出したものの、実際は改善がなされていないとの情報提供があった。国交省が再調査したところ、情報の通り荷主は改善に取り組んでいないことが判明した。
荷主の所管省庁である経産省関係者は「関係省庁が連携しながらトラックドライバーの長時間労働削減に取り組んでいる中で『要請』を受けた荷主が出たことは不名誉だ」と受け止めている。2019年7月に改正事業法の荷主対策制度が施行されて以降、経産省は国交省とともに荷主団体に向けて周知を行ってきた。施行から3年が経過し、経産省が所管する荷主から「要請」第1号が出たことに少なからず〝ショック〟を受けているようだ。
荷主への働きかけ、延長・恒久化の要望も
改正事業法の柱のひとつである「荷主対策の深度化」は、①荷主の配慮義務の新設②荷主勧告制度の強化③国土交通大臣による荷主への働きかけ等の規定の新設――を骨子とする。荷主が違反行為に関与している〝疑い〟がある段階から、「働きかけ」を行えるようになり、荷主への疑いに相当な理由がある場合には「要請」、要請をしてもなお改善されない場合には「勧告・公表」を行える。
国交省ではトラック事業者からの情報収集窓口として「目安箱」を設置。寄せられた情報を精査の上、経産省、厚生労働省、公正取引委員会などと連携し、荷主へのアクションをとる。ただ、「働きかけ」の規定については24年3月末までの時限措置という位置づけにあり、トラック業界からは延長・恒久化を要望する意見も多い。
荷主とトラック事業者の関係を巡っては、公正取引委員会が5月25日、荷主と物流事業者との取引に関する調査結果を公表。コスト上昇分の転嫁拒否が疑われる事案について、荷主19者に対する立入調査を行い、独占禁止法上の問題につながるおそれのあった荷主641者に対し文書を送付した。厚生労働省も長時間待機の発生要因である荷主に働きかけを行う新制度を創設するなど、関係省庁の荷主への監視の目は厳しくなる。
(2022年9月20日号)