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冷蔵倉庫がひっ迫、出庫鈍り在庫が上昇

2022.08.25

大都市圏を中心に冷蔵倉庫がひっ迫している。北米からのコンテナ輸送が正常に戻りつつあることに加え、ロックダウン解除後の中国からの輸入が増加。円安やウクライナ情勢など不透明感が強まる中で、畜肉中心とした輸入者の「買い置き」や在庫の積み増しもみられる。一方で、物価高やコロナ禍の継続で需要は伸びず、出庫は鈍化。あらゆる要素が重なって冷蔵倉庫の在庫水準を押し上げている。まもなく主力商材のチリ産銀ざけ(チリ銀)の搬入が本格化し、年末に向けてひっ迫感はますます強まる見通しだ。

スペース足りず、再保管先確保は困難

「7月初旬頃から保管スペースが足りなくなり、通路まで使っている状態だ。ほぼ毎日のように再保管の相談があるが、他社の荷物を預かる余裕はなくお断りしている。近隣の冷蔵倉庫も同じような環境で、年内はこうした状況が続きそうだ」――。京浜地区の冷蔵倉庫の関係者はこう打ち明ける。

日本冷蔵倉庫協会が公表している主要12都市受寄物庫腹利用状況によると、世界的なコンテナ不足や東南アジアにおけるコロナ感染による工場稼働率の低下などの影響を受け、2020年9月以降、月末在庫量は200万tを下回り、21年1月以降は在庫率が30%を下回るなど、異例の低水準在庫が続いていた。

変化が表れたのが6月頃から。搬入が増え、まずは京浜地区から冷蔵倉庫のスペースが埋まり始めた。6月の月末在庫量は全国で204万tと200万tを超え、在庫率も30%台を回復。収容可能なスペースに対する貨物の埋まり具合を示す「庫腹占有率」は91・1%に上昇し、庫腹のタイト感が強まってきた。

需要停滞、出庫が鈍く在庫の滞留続く

「低水準在庫」から「高水準在庫」に移行したことには、いくつかの要因が重なり合っている。きっかけになったのが中国・上海のロックダウンだ。物流面では、中国回避によって北米航路の混乱がやや改善し、日本に商材が届くようになった。商流面でも、中国向けの畜肉の一部が日本に回ってきた。

ロックダウンが解除されると今度は中国からの搬入が徐々に増え始めた。一方で、国内ではコロナ感染拡大が収まらず、行動制限がないため人出は戻っているものの、外食向けや業務用冷凍食品の需要が停滞。出庫が鈍く在庫の滞留が続く。「全体として出庫が落ち込み、例年は出庫が旺盛なお盆前も伸びなかった」(冷蔵倉庫関係者)との声もある。

消費が伸びないため、チルドで輸入した牛肉を、賞味期限が切れないうちに凍結し、「チルド庫」から「フローズン庫」に荷物を移し、イレギュラーな“チルフロ”貨物が「フローズン庫」のスペース需要を押し上げたケースも見られた。これについては、現在は解消に向かっているという。

調達難見据え在庫を積み増すケースも

在庫水準上昇の別の要因として挙げられるのが、商社など輸入者の動向だ。円安で商材が高騰し、高級商材もコロナ初期ほど需要はないため、「買い控え」もたしかにある。他方、国際情勢の不透明感が増す中、円安継続による調達難を見据え、「買い置き」や在庫を積み増すケースもみられ、高水準在庫につながっている。

現在、京浜地区では再保管先を探すのが困難となっている。工場直送に変更となった「アイスクリーム」の空きスペースも一部にはあるようだが、次の商材の搬入もあり受け入れのタイミングが難しい。航路事情により阪神地区から京浜地区にシフトしていた荷物を再度戻す動きもあり、阪神地区でも冷蔵倉庫の庫腹がタイトになってきているという。

今後の気になる動向は京浜地区の主力貨物であるチリ銀の搬入だ。すでに7月頃から始まっている。現在でも再保管先が見つからない中で、搬入が本格化すれば、広域に空きスペースを探さなければならないケースも想定される。年末商材の搬入を控え、出庫の停滞がどの程度改善するかも注視される。
(2022年8月25日号)


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