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【ズームアップ】物流DXでSCに貢献=サントリーロジ

2022.07.21

サントリーグループは総合酒類食品企業として「人と自然が互いによい影響を与えあって永く持続していく社会」をめざし、持続可能な社会の実現(サステナビリティの実現)に貢献できるよう事業活動を展開している。グループ各社の物流を担うサントリーロジスティクス(本社・大阪市北区、武藤多賀志社長)は、グループの目指すサステナビリティの実現に向け、サプライチェーンを支える様々な取り組みを推進する。

その一環として、物流DXによる生産性の向上をはじめ、2024年4月から施行されるトラックドライバーの時間外労働規制の厳格化(「2024年問題」)を視野に入れつつ、業界の大きな課題であるドライバー不足への対応として労働環境改善などに取り組んでいる。また、安全の実現が物流サービスの基礎であるとの考えに基づき、様々な場面で安全第一を基本に高品質な物流サービスを提供している。

今後もDX推進と安全な物流サービスを両輪として、持続可能なサプライチェーンの維持に貢献するとともに、カーボンニュートラルなど脱炭素化の流れを踏まえながら、サステナビリティ経営とともに社会的課題への対応を図る。

物流DX推進で工数削減と環境対応を実現

物流DXの取り組みで注目を集めるのが昨年11月に開設した新大型拠点「浦和美園配送センター」(さいたま市緑区、写真)と今年4月に本格稼働を開始した「沖縄豊見城配送センター」(沖縄県豊見城市)だ。浦和美園配送センターはグループの清涼飲料水や酒類を主に取り扱う拠点として首都圏をカバーする拠点で、グループの物流拠点としては東日本最大規模となる。倉庫管理システムを基軸に「自動運転フォークリフト(AGF)・コンベア制御による自動化・省力化システム」「バース予約システム」「リモート・無人車両受付システム」などを連携したシステムを導入。従来の技術を導入した場合と比べ、センター全体で工数を約15%削減できる。センター内の一部エリアにはAGF専用の稼働エリアを設けた。人との接触を回避し、安全を確保しながら有人の作業同等の作業効率性を実現した。また、フォークリフトにリチウムイオンバッテリーを使用するなど温室効果ガス排出量削減の取り組みも進める。

沖縄豊見城配送センターも浦和美園配送センターと同様にバース予約システムを導入し、荷役工数の大幅な削減や環境負荷低減を実施。同社では年内にもシステム運用など同様の取り組みを国内各地の拠点に導入し、さらなる効果創出を図っていく。

サントリーロジの野原浩敬上級執行役員(経営企画部長)は「物流DXの狙いは人手不足への対応であるとともに、強みである高い物流品質を維持・向上するという狙いもある」と述べ、トラックの待機時間削減などの課題克服に物流DXを有効活用することがサステナビリティ経営につながると指摘。「今後も安定的なサプライチェーンを維持していくために、これまで蓄積した〝人〟のノウハウ・知見に〝デジタル化・自動化技術〟を掛け合わせ、ハイブリッド型の高品質物流を実現していく」と方向性を示す。

物流DXは物流センター業務だけではない。様々な貨物や運送場所について最適な車両の組み合わせとルートを計算する「統合配車システム」を導入し、輸配送業務の効率化を推進している。配車担当者の属人的スキルに頼るだけでなく、システムを活用することで、より少ない車両台数によって空車で走る距離・時間をより短くすることが可能となる。他社と貨物情報を共有することができ、1台の車両に複数企業の貨物を組み合わせて積載できるなど車両の有効活用につながる。車両数を減らすことができるため、CO2排出量の削減にも寄与する。システムでは最適な貨物の組み合わせと最適ルートを決定した後、実運送を行う協力会社に配車を連絡する。協力会社にとっても1台当たりの売上高が向上し、メリットがある。

協力会社と緊密に連携、「SDCAサイクル」を回す

サントリーグループでは安全な物流の実現がサプライチェーンの基礎となり、安全は最重要課題だと認識。サントリー安全推進事務局が中心となり、「安全に配慮した物流の推進」に取り組んでいる。サントリー物流協力会社と連携して発足した「サントリー安全推進委員会」には現在、サントリー物流協力会社33社が参加。「法定速度遵守と防衛運転の実施」「正しい養生の徹底と3急(急発進・急ブレーキ・急ハンドル)運転禁止」「アイドリングストップとタイヤ止めの完全実施」「ヘルメット・安全靴の完全着用と5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底」「合図・指差呼称の励行と安全確認の徹底」などを物流安全5原則に定め、サントリー物流協力会社の全体で共有し安全推進活動に取り組んでいる。

田村智明執行役員(安全推進部長)は「グループの物流には協力会社の力が不可欠。協力会社各社と一致協力し、しっかりと〝安全〟に取り組むことが物流のサステナビリティを実現する」と強調する。「安全の取り組みは一度行えば完了するものではなく、日常業務が安全の取り組みに直結するとの考えに立ち、安全確保やリスクマネジメントの深度化に様々な工夫を凝らしている」と語る。活動のひとつに「標準(Standard)」「実施(Do)」「評価(Check)」「改善(Action)」の「SDCAサイクル」がある。改善手法として広く用いられる「PDCAサイクル」に類するものだが、「P=計画」の部分を「S=標準化」とすることで、改善活動をより一層具体化できる手法とした。

田村氏は「数年前からサントリーロジスティクスでも『標準化』が業務の基本のひとつであると認識し、その考えに基づき、守るべき手順・ルールを標準化した業務手順書を作成した」と述べ、「標準手順を業務の根幹とし、それを現場に落とし込み、SDCAサイクルを回しながら安全品質をより高める取り組みを行っている」と説明する。フォークリフトオペレーターやドライバー向けの作業手順書は年2回のペースで更新し、常にブラッシュアップすることで高い安全品質の維持に貢献している。また、田村氏は「3Ha」というキーワードを説明する。これは、①「初めての業務」②「変更した業務」③「久しぶりの業務」の頭文字の〝3H〟と、「後からも見逃さない」の〝a〟から取ったもの。「こうしたキーワードを念頭に、現場担当者とも安全意識のさらなる浸透を図っている」と述べ、人材教育・研修の重要性を強調する。

また、同社では自社拠点や協力会社の倉庫、輸送協力会社150社以上の管理者が一堂に会する安全大会を毎年開催していたが、現在は感染症予防の観点から会場に集まるのではなく、オンライン方式での開催に切り替えている。安全関連の法令改正など情報共有や優良事例の共有を図ることで、協力会社とともに安全品質の向上を図っている。

今後も同社は物流DXとともに、これまで培った知見やスキルを活用し、様々な工夫を組み合わせることで、より安全な物流を確保するとともに、物流DXによる効率化や生産性向上を推進。サステナビリティ経営に取り組むことで安定的なサプライチェーンを維持し、社会貢献に努めていく。
(2022年7月21日号)


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