ニチレイロジG本社、新中計は「成長への基盤強化の3年」
ニチレイロジグループ本社(本社・東京都中央区、梅澤一彦社長)は今期からスタートした中期経営計画(23年3月期~25年3月期)を「飛躍的成長に向けた基盤強化の3年」と位置づけ、各事業で基盤整備を進める。16日に開かれた2021年度事業報告会で梅澤社長が明らかにした。とくに、国内においては24年問題を「最大の課題かつ大きな機会」(梅澤社長)と捉えて次世代に向けた事業基盤構築を推進。海外事業では、前中計で実施したM&Aの投資シナジーを中心に売上・利益の両面で成長を図る。その上で、計画最終年度には売上高2600億円(22年3月期実績比16%増)、営業利益162億円(11%増)を目指す。
ニチレイロジ関東をロジネットに統合
国内事業においては24年問題に対応した輸配送基盤の強化として、次世代輸配送システム「SULS(サルス)」の整備に着手する。同社独自の強みである「国内最大規模のベースカーゴ」「全国約80拠点の自営DC」「約100社の協力運送会社ネットワーク」を活かしてトレーラ中継輸送とドライバー荷役の倉庫拠点側へのシフトを進め、待機時間を解消。法令を遵守した安定的かつ持続可能な輸配送を実現する。運行に必要な24パレット積みトレーラはニチレイロジグループが購入。東名阪からスタートした仕組みを、順次全国へ水平展開する。
また、大都市圏の基盤強化策として、23年4月に、港湾物流機能を持つニチレイ・ロジスティクス関東を、輸配送子会社ロジスティクスネットワークへ統合する。保管と運送の一体運営化と、貨物および機能の再編でサプライチェーン一貫物流サービスを創出し、多様化する顧客ニーズへ機動的に対応する。同社ではこれまでも全国で地域保管機能と輸送機能の統合を進めており、関東はその最終案件となる。
併せて、これまで神奈川を中心に果汁や乳製品を取り扱ってきたグループ倉庫会社キョクレイが23年10月を目途に「神戸六甲DC」(仮称、神戸市東灘区)を開設して西日本へ進出する。設備能力約2・2万tの4階建て冷蔵倉庫を新設し、うち冷凍は1万t、冷凍冷蔵約7000t、冷蔵5000tとなる。関西における果汁・乳製品の保管を想定し、ドラム缶解凍機能も導入。既存の本牧および大黒物流センターとの一体運営で通関から輸配送に至る一貫物流サービスを提供する。
欧州で前中計の投資、M&A効果を最大化
海外では、売上の9割を占める欧州事業で前中計に投資とM&Aで庫腹16万tを増強しており、その効果発出による事業収益の最大化を図る。ひとつは港湾ビジネスの拡大で、オランダでは前中計に増強した港湾地区での集荷に注力し、英国では前中計で獲得したケビンハンコック社の付加価値サービス機能とノリッシュ社が持つ10万t超の保管能力を最大活用したワンストップサービスの拡大に取り組む。輸配送では広域運送のさらなる取扱増に加え、フランスでは2拠点の増設で強化したクロスドック機能の本格稼働による集荷拡大を図る。3点目として、ポーランドで既存ネットワークとアルミール社のネットワークの融合を進め、事業基盤を強化する。
また、中国では大手コンビニチェーンの出店増に対して高品質な物流サービスを提供するとともに華東地区への展開で基盤整備も推進し、急拡大する同国定温市場での成長を達成する。ASEANでは、タイで前中計に冷蔵倉庫の2期棟が本格稼働し、複数温度帯への対応と付加価値サービスが可能となったことから、一連の機能を最大限活用した集荷拡大と保管輸送一貫サービスを進める。マレーシアでは保管機能に強みを持つNLCCN社とLittTatt社の連携強化を通じて業容を拡大。ASEANでは、進出エリアの周辺国・地域への新規参入も視野に入れる。
業務革新では、前中計に入庫系作業に加えて、庫内ピッキングと出庫系作業もタブレット化するとともに、IT人材およびDX人材の育成を加速させる。また、前中計のRPA化の効果が年31万時間となり目標をほぼ達成したことから、新中計では創出された余裕時間・人員の高度活用を進める。無人フォークリフトなどの自動化機器の横展開や対応温度帯拡大、さらにはXR技術の活用も研究する。
このほか、働きがいの向上として3ヵ所(川崎、梅田、横浜)のサードプレイスオフィス活用や、社内SNSツール“MIRU心(ミルコ)”の稼働、社外向けコミュニケーションスタジオの設置などでインナー・アウターコミュニケーションを活性化。ニチレイグループの長期経営目標に対しても、収益力向上や環境負荷低減、ダイバーシティーなどで貢献する。
最終年度の売上目標2600億円への増減内訳は、国内事業における24年問題対策効果やTC事業の売上増を含む大都市圏の集荷増で133億円、海外事業の成長で179億円を見込む。営業利益目標162億円に対しては、国内での増収効果や業務改善で56億円、海外事業成長などで13億円の増益効果を見込むものの、各種コスト上昇で35億円、新拠点稼働一時費用15億円、環境投資の償却費増で3億円などのマイナス影響も織り込む。
3ヵ年の設備投資額は、前中計の1・3倍となる650億円を予定し、新冷蔵倉庫の開設や、域内配送デポの増強、システム投資なども想定する。とくに、拠点投資への考え方としては「これまでDC事業はかなりの部分を自社アセットで賄ってきたが、今後、自社アセットへの投資は主に大都市圏でネットワークの根幹をなすようなアセットを対象とし、それ以外は他社アセットを柔軟に使って売上拡大につなげたい」(梅澤社長)との方針を示した。
(2022年5月19日号)