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燃料高騰で運賃見直しを荷主に直接要請=国交省

2022.04.19

国土交通省は燃料費高騰に苦しむトラック事業者を支援するため、燃料価格の上昇分を反映した運賃への見直しを行うよう荷主に直接働きかけを行う。中小零細企業が9割超を占めるトラック事業者は他業界と比べ、価格転嫁が進んでいない。このため、国交省では、地方運輸支局による荷主への協力要請を継続して実施するほか、本省の担当者が荷主を直接訪問し、運賃引き上げなどへの協力要請を行う。国交省担当者が荷主に直接働きかける“異例”の取り組みとなる。

ウクライナ情勢で燃料価格が先行き不透明に

長引くコロナ禍で景気の回復が停滞する中、トラック事業者の適正運賃収受に向け、全国の運輸支局では荷主への働きかけを強化している。昨年秋以降、2月時点で40件以上の懇談会を開催。地元商工会や農業団体に所属する荷主に向けて運賃の見直しへの協力を要請している。

そうした中、2月にロシアによるウクライナ侵攻が起き、燃料価格の先行きがいよいよ見通しにくい状況となったことを受け、国交省では本省・貨物課による荷主への直接の協力要請を開始。今月から来月にかけてまずは長野県、茨城県の荷主を訪問し、運賃の見直しなどへの協力を求める予定だ。

貨物課職員が地方に出向き、直接働きかけ

本省の貨物課職員が地方に出向き、運賃見直しを直接働きかけるのは珍しい事例となる。2県にとどまらず、今後も機会をとらえて直接の協力要請を行っていく考え。国交省の関係者によると、「丸2年のコロナ禍に加え、燃油価格高騰がトラック事業者への大きなダメージとなっている。適正な運賃・料金の収受に向け、様々なチャネルを通じて荷主への働きかけを進めていく」としている。

同省は昨年秋以降、燃油価格高騰への対応として荷主への働きかけを本格化。11月10日に貨物課長名で燃料価格の上昇分を反映した運賃・料金への見直しを行うよう荷主団体に協力を要請するとともに、運賃・料金を不当に据え置く荷主は改善要請や勧告・社名公表の対象になることを明示。また、公正取引委員会と連携の上、運賃などの不当な据え置きは独占禁止法違反の「買いたたき」に相当し、法的な対応をとることを明確化している。

「値上げしたいが、できない」が3割

しかし、トラック事業者の価格転嫁は遅れが目立つ。帝国データバンクの調査によると、「運輸・倉庫」は、燃料が高騰する中でも、失注につながる懸念などを理由に値上げが進んでおらず、「すでに値上げを行った企業」および「今後1年以内で値上げする予定の企業の割合」は5割に届かない。「値上げしたいが、できない」も3割にのぼり、全国(16・4%)を大きく上回っている。
(2022年4月19日号)


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