国交省、貨物鉄道の輸送量拡大へ議論開始
国土交通省は17日、鉄道貨物輸送の機能向上や輸送量拡大に向けた方策などを探る「今後の鉄道貨物物流のあり方に関する検討会」(座長=根本敏則・敬愛大学経済学部教授)を立ち上げ、初会合を開催した。検討会では、国内物流における貨物鉄道の輸送分担率の拡大などに資する国の支援の方向性を議論。初会合を含め計6回の会合を重ねた後、7月にも中間報告をまとめる。そこで盛り込まれた方策を2023年度の貨物鉄道関連の予算要求に反映させるとともに、JR貨物の業績向上を支援する取り組みにつなげる。
検討会の参加メンバーは鉄道事業者からJR貨物、同東日本、同東海、同西日本などJRグループが参加。荷主や関係団体から全国農業協同組合連合会(全農)、全国通運連盟、鉄道貨物協会、全日本トラック協会、日本内航海運組合総連合会(内航総連)、日本港運協会、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が加わり、国土交通省、農林水産省、経済産業省、環境省など行政と有識者で構成する。事務局は国交省鉄道局鉄道事業課(貨物鉄道政策室)が務める。
挨拶に立った国交省鉄道局の石原大官房審議官は「大量輸送が可能で労働生産性や環境性能に優れた貨物鉄道には大きな役割が期待されている」と強調。一方で「固定化されたダイヤや積み替えが不可避という鉄道特有の性質や、自然災害への脆弱性、社会や荷主の高度なニーズへの対応不足により輸送機関別分担率はほぼ横ばいとなるなど輸送量が伸び悩んでいる」と指摘。「貨物鉄道の利便性の向上や輸送量の拡大に向けた方策や、国などによる支援の在り方を検討会で議論していく」と検討会の趣旨を説明した。
貨物鉄道の利便性向上と輸送量拡大をテーマに
今後の議論では、①貨物鉄道の使い勝手を改善することで輸送力を最大限に活用②鉄道以外の輸送モードとの連携を強化することで総合的な物流サービスを実現③地球環境保護の観点から荷主に貨物鉄道の利用を促進――の3テーマを決定。
関係者へのヒアリングも行うこととし、第2回会合では通運会社、第3回会合では荷主から聞き取りを行う。第4回会合では物流不動産をヒアリング対象としているが、これはJR貨物の駅施設の機能強化やマルチテナント型物流施設「東京レールゲートWEST」(20年3月開設)、「同EAST」(今年7月竣工予定)、「DPL札幌レールゲート」(今年5月竣工予定)などの展開促進に有益な知見を得るため。
続いて、JR貨物取締役兼常務執行役員・経営統括本部長の犬飼新氏が同社事業の主な取り組みと課題を報告。貨物鉄道の輸送量が17年度まで微増傾向にあったが18年度以降は微減傾向となった要因について「自然災害による運休の増加や災害時の低い代行輸送率など鉄道輸送の安定性やネットワークへの信頼が低下した」ことを主要因として示した。加えて、商品競争力の低さ、鉄道ダイヤの硬直性や駅のキャパシティによる輸送力の限界性、集配トラックの供給力不足や鉄道利用の敷居の高さなどを挙げた。
犬飼氏の説明を受け、参加メンバーから今後の議論テーマについて意見が提出された。通運会社と連携した手荷役からパレット輸送への転換促進をはじめ、輸送力強化や温度管理コンテナの活用による商品競争力の向上、港湾機能とのスムーズな接続や内航海運との連携強化など様々なテーマが挙げられたことを受け、次回以降は具体的な議論を進めることとした。
(2022年3月24日号)