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多品目・複数区間で海上シフト実現=鈴与/鈴与カーゴネット

2021.12.21

モーダルシフト最優良事業者賞(大賞)を受賞した、鈴与(本社・静岡市清水区、鈴木健一郎社長)と鈴与カーゴネット(同、松山典正社長)。食品や飲料、建材など多岐にわたる品目の輸送を複数区間でトラックによる陸送からフェリー・RORO船を用いた海陸一貫輸送へ移行したことで、CO2排出量の低減とドライバー運転時間の削減を実現した。こうした実績に加え、社内にモーダルシフトの専門部署を構えることや、豊富なトレーラシャーシ本数とバリエーションを用意し、多様な輸送ニーズに対して最適な運び方を可能としていることが“範となる取り組み”として高く評価された。

多様なシャーシを用意、安定輸送体制を構築

鈴与カーゴネットが保有するトレーラシャーシ本数は1100本。15年前には300本だったが、環境負荷低減への要請から海上モーダルシフトニーズが高まることを想定し、増車を続けてきた。車種も、当初は汎用型シャーシのみだったところ、容積勝ち荷物の輸送に適した「3軸超低床シャーシ」や、T11パレットが汎用シャーシ比で110%積める「14mシャーシ」、積載重量を増やした「26t対応3軸シャーシ」などラインナップを強化。後方に行くほど内高が高くなる「テーパーシャーシ」や「ジョルダーレール付シャーシ」なども取り揃えている。

また、北海道から九州に至る主要なフェリー・RORO船乗下船港に営業所を置き、自社車両を配備するとともに、強固な協力会社ネットワークも構築。モーダルシフト推進部隊の「フェリー輸送事業本部(東京)」と併せて、各地域には「営業本部」の営業専属スタッフ、および受注情報や輸送実績をはじめとしたビッグデータをもとに最適配車を分析する「CS本部(本社)」を配置し、オペレーション部隊と営業・企画部隊が一体となって、お客様の輸送ニーズにきめ細かく対応できる組織体制を確立している。全国での豊富な輸送実績を背景に、多くの船会社と信頼関係を構築していることも特徴のひとつ。コロナ禍でも安定して輸送本数を拡大させており、船枠の確保につながっている。

安定輸送の確保にはBCP対応も重要となるが、同社ではトレーラシャーシのスイッチによる全国長距離輸送ネットワークの構築により、台風などで船便が欠航になってもトレーラの陸送で柔軟に対応できる。貸切便による直送輸送ももちろん可能としており、「自社のインフラとして多様なバックアップ手段を持ち、海上荒天時にも荷物を安定して届けられるようにしていることは、お客様に対してより大きな安心感を提供できる」と松山氏は自信を示す。

シャーシ稼働率を高め、輸送需要に応える

豊富なシャーシラインナップを揃えながら、その運用の最適化にも余念がない。「鈴与運輸システム」では、各営業所の輸送モード毎の配車業務を一元管理し、システム上で全国に所在するシャーシの在庫情報を確認できるため、同システムを用いてシャーシ在庫の滞留や偏重を防ぎ、効率的なシャーシ配置を実現している。

こうしたシャーシ稼働率の上昇も、荷主企業からの輸送依頼に安定して応えるための施策の一環。フェリー輸送事業本部長を務める亀井遊太取締役は「多様なシャーシを持つゆえに、顧客の出荷予測や波動性を踏まえて、どのシャーシをどこへ配置すべきかは複雑な判断になる」と説明する。そうした判断を今後、システム面から支援できるような仕組み作りも検討し、最適なシャーシ配置と配車で、より多くの輸送ニーズに対応できる体制を強化していく。

中期計画で年間7万本の取り扱い目指す

前期(2021年8月期)のフェリー・RORO船輸送の年間取扱本数は目標の5万5000本を達成し、今期はさらに5万8000本への増送を目指す。24年度に施行されるトラックドライバー時間外労働の罰則付き上限規制に伴い、モーダルシフトへの需要がますます高まると見て、シャーシ本数も増強。今後も顧客のニーズに対応できるようにシャーシを増車し、現中期経営計画の最終年度である26年8月期には、年間取扱本数を7万本に引き上げる考えだ。

直近の荷動きとしては自動車関連品が復調傾向にあるうえ、食料品・住宅設備を中心とした貨物の取り扱いも好調。新規案件の獲得にも成功しており、引き続き主力貨物である工業製品に加え、日用品といった一般消費財の貨物の取り込みにも注力していく。航路としては、わが国経済の大動脈でありながら、24年問題の影響が懸念される長距離輸送区間の東京~九州(新門司・苅田・博多)および、鈴与グループの本拠地である清水~大分の各航路を中心にモーダルシフトニーズを捉えたい考え。課題は上り貨物の獲得だが、中小ロット輸送をサービス化するなど、幅広い貨物のモーダルシフトニーズに応えることで輸送量の確保を図る。

松山氏は「脱炭素社会の実現に向けたCO2排出量削減への要請が高まるなか、モーダルシフトは製造メーカーにとっても大掛かりな設備投資が不要な施策。コロナ禍で投資が難しい状況下において関心を持っていただける機会は多い」と話す。その上で、「今回素晴らしい賞をいただけたのは、モーダルシフト推進にご理解をいただいた荷主企業様のお陰であり、弊社としても十数年にわたってフェリー輸送を含めたモーダルシフトに注力し、組織や仕組み作りを進めてきたことが評価されたもので、信用の証ともいえる。今後も24年問題やCO2削減、BCP対応といった荷主企業様の課題解決に貢献していきたい」と展望する。
(2021年12月21日号)


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