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輸送モードの“複々線化”で安定供給実現=F‐LINE

2020.12.17

F‐LINE(本社・東京都中央区、深山隆社長)は日本物流団体連合会(物流連)が主催する「モーダルシフト取組み優良事業者公表・表彰制度」において、2020年度の「モーダルシフト最優良事業者賞(大賞)」を受賞した。同社の地球環境への負荷低減を推進するという方針のもと、幹線輸送を担当する南関東支店マルチモーダルサービスセンターが食品メーカー各社にリードタイム延長などの協力を得て、トラックによる陸送から海上・鉄道輸送へのモーダルシフトを実現した。災害時にも複数の輸送モードへの“複々線化”による柔軟に対応できる安定的な供給体制を構築した。同社が荷主とともに取り組んだ「幹線輸送のリードタイム延長」は、持続可能な物流を実現する有効なスキームとして注目されそうだ。

海上輸送では21港・20航路を利用

マルチモーダルサービスセンターは12人体制で、味の素グループ各社の貨物をベースに、食品メーカー向けの長距離輸送の「荷主窓口業務」と「受注業務」を担い、ドライ貨物についてはトラック(自車)・鉄道・船舶を、低温貨物では全輸送モードに対応し、気象情報、道路状況、鉄道運行等の様々な情報を駆使して最適なモードを選択する。

これまでに鉄道輸送に関しては31ftコンテナを私有化し、「レールライナー®」として関東~関西間での往復輸送を16年3月から開始し、GPSによる動態管理も実施。海上輸送では、太平洋ルート、瀬戸内海ルートと日本海ルートで航路の複線化に取り組み、20年3月現在、21港・20航路を利用している。
マルチモーダルサービスセンターで手配した輸送の19年度の実績(輸送トンキロベース)をみると、500㎞以上の輸送については、ドライ貨物でトラック33%、鉄道13%、船舶54%、低温貨物でトラック38%、鉄道14%、船舶47%と6割超でモーダルシフトを実現。全輸送をトラックで陸送した場合に比べCO2を約40%抑制していることになる。

日本海・瀬戸内海の2ルートを利用

20年度の「モーダルシフト取組み優良事業者公表・表彰制度」では、19年度に実現したトラックから海上・鉄道輸送へのモーダルシフト3案件により最優良事業者賞(大賞)を受賞。転換にあたりリードタイムが最大のネックとなっていたが、メーカー各社と交渉し、トラック輸送に比べリードタイムが1日延びることを了承してもらえるよう働きかけた。

また、近年、自然災害が多発していることから、トラック・鉄道・船舶など、複数の輸送モードの併用(複々線化)の実現に取り組み、災害時にも柔軟に対応できる供給体制を構築しており、環境負荷低減や安定的な輸送の実現に対して「範となる取り組み」として高く評価された。3案件のうち2つは味の素社をはじめ複数メーカーの貨物について、中部地区から福岡向けにトラックから鉄道・海上輸送へのモーダルシフトを実現。海上輸送では、敦賀~博多(日本海航路)、大阪南港~新門司(瀬戸内海航路)の2つのルートを利用し、いずれもリードタイムを1日延ばしてもらうことで、安定的に輸送できるようにした。

幹線輸送はリードタイムN+2で設計を

「中部圏~福岡の輸送距離は約700㎞だが、ドライバー不足や拘束時間の規制により、いずれトラックによる陸送は難しくなる。18年の西日本豪雨をはじめとして自然災害が頻発しており、今後は、鉄道と船舶の併用が必要」と業務本部東日本ブロック南関東支店の和田信幸マルチモーダルサービスセンター長は話す。

海上輸送については、「昨年4月に開設された敦賀~博多航路が同年7月からデイリー運航となり選択肢が広がった。博多港は福岡第1物流センターに近く、CO2削減にも有効で、リードタイムを延ばしてもらえる場合はトラック輸送から敦賀~博多航路と瀬戸内海航路との船舶による複線化を提案したい」という。

「将来的には、関東~関西でも、翌日着のトラック輸送はありえないという時代になる」とし、「幹線輸送についてリードタイムの設計をN+2で設計すれば、スムーズに無理のない輸送ができる。ドライバーの働き方改革や安定輸送の実現、CO2の削減にも寄与する」と強調し、持続可能な物流を引き続き提案していく考えだ。
(2020年12月17日号)


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