次期中計でESG・DX・協創加速=三井倉庫HD・古賀社長
三井倉庫ホールディングス(本社・東京都港区)の古賀博文社長(写真)は8日、本社で会見し、同社グループの概況や今後の事業戦略などについて説明した。来年度から始まる次期中期経営計画について、ESG、DX、社内外の協創の3つが軸になるとの考えを示し、取り組みに注力していく考えを表明。古賀社長は物流を取り巻く外部環境がますます激しくなるとの認識を示した上で、「今後は勝ち負けの2極化が進む。三井倉庫グループが勝ち残るためには、次期中計が非常に重要になる」と強調した。
ESGの取り組みでは、顧客のサプライチェーン(SC)の持続可能性を支援する新サービス「SustainaLink(サステナリンク)」をリリース。環境・労働力・災害(BCP)の3つのリスクに対し、「知る」→「見える化」→「改善」のステップで課題解決を提案。環境面ではまず、物流工程におけるCO2排出量の見える化などを手がける。
DXに向けては、先月にグループの「DX戦略」を策定・公表。通常のシステム投資とは別枠で2025年3月までに総額100億円を投資する。SCMデジタルプラットフォーム(PF)に情報を集約することで〝デジタル物流企業〟への変革を急ぐ。顧客向けにはSCの見える化を通じて複数拠点の在庫の可視化などの新サービスを提供していく。投資額のうち3~4割はデジタルプラットフォームのクラウド化に充てる。古賀社長は「DXを実現する前提となる業務標準化についても、トヨタ生産方式によるカイゼンなどを通じて〝圧倒的現場力〟を実現していく」と述べた。
協創については、異業種との連携に注力することで、新たな価値創造を目指す。具体的には貿易情報連携PFを運営するトレードワルツに出資。コンソーシアムへの参画だけでなく出資も行うことで、物流・金融・商流のSCM情報を一元管理できるようにする。また、グループの三井倉庫ロジスティクスはGMOグループと提携し、顧客のEC事業進出をシステム構築から物流まで包括的に支援できる体制を構築した。
グループ内協創でも、ナレッジ基盤構築を目指し、社内ポータルサイトを一新したほか、東京・港区のHD本社3階にグループ社員専用の共有スペース「PARK(パーク)」を新設し、グループ内での連携効率をさらに高める。
構造改革に成果も「まだスタートライン」
三井倉庫HDは17年3月期に大幅な減損損失を計上するなど財務基盤が悪化。直後に打ち出した5ヵ年の現中計(18年3月期~22年3月期)で抜本的な構造改革に取り組み、目標を上回る成果を上げた。17年3月期に2・6%だった営業利益率は、22年3月期見通しで7・5%まで向上。約1700億円あった有利子負債も1000億円を切るなど財務体質を改善した。
構造改革を主導してきた古賀社長は「中計の目標を前倒しで達成することができたが、やっとスタートラインに立ったに過ぎない」と強調。「物流を取り巻く環境はますます激化し、物流事業者は持続可能なSC構築への貢献が求められている。自ら変革していくことで、グループの目標である〝ファーストコールカンパニー〟を実現していきたい」と述べた。
(2021年12月14日号)