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「One三井倉庫」に向け〝変化〟加速=三井倉庫HD

2021.02.16

三井倉庫ホールディングス(HD、本社・東京都港区)が先日発表したグループ会社のトップ人事が話題を呼んでいる。4月1日付で、中核事業会社のひとつである三井倉庫の社長にトヨタ自動車出身で三井倉庫エクスプレス社長を務める久保高伸氏が就任。4年間にわたり社長として三井倉庫を率いてきた木納裕氏はHDの人事・HR(ヒューマンリソース)部門とIT部門を管掌する。また、久保氏の後任となる三井倉庫エクスプレスの社長には、直近までトヨタ自動車の物流管理部長だった一柳尚成氏を起用。一連のトップ人事を主導したHDの古賀博文社長(写真)は、「真の〝One三井倉庫〟に向かって、グループの変化を加速していくというメッセージを込めた」と語り、〝刺激策〟を通じてさらなる変革を促す。

最大のリスクは「変化できないこと」

この数年、三井倉庫グループは苦境から再建の道を辿ってきた。2017年3月期決算で大幅な減損損失を計上し、最終赤字に転落。その直後にHD社長に就任した古賀氏は、大胆なコスト削減によって収益改善を主導するとともに、M&Aによって連結化した各事業会社の融合に努めてきた。その結果、業績は順調に回復し、来期に最終年度を迎える中期経営計画(5ヵ年)は1年を残して数値目標をクリア。古賀氏はグループの現状について「ベース収益の要である三井倉庫と、他の各事業会社が生み出すフロー収益とが相まって数字がついてくるようになってきた。また、事業会社間の連携や協業も進み、グループ従業員全体のモチベーションが高まってきた」と手応えを語る。

だが、その一方で、物流業界を取り巻く環境は加速度的に変化している。「これからの数年間に起こるであろう変化はこれまで以上に激しく、その変化に対応できた物流会社だけが生き残っていくだろう。その意味で、22年度から始まる新たな中計は非常に重要になる。来期1年はそのための〝発射台〟となる年であり、ここで歩みを止めるわけにはいかない。最大のリスクは〝変化できないこと〟だと思っている」と、さらなる変化の必要性を強調する。「その中で〝100年企業グループ〟である三井倉庫グループは、コロナ禍という厳しい環境下でも底堅く収益を生み出せる体質になってきたが、それでも安住は許されない。今回の人事は、新たな変化を生み出せる人材は誰かと考えた結果だ」と久保氏を起用する理由について説明する。

メーカー出身ならではのプラスαを 

「(久保氏は)お客様の側から物流を見てきた人物であり、トヨタで培われた厳しさや精緻さを備えている。また、三井倉庫エクスプレスの社長を約6年務め、お互い気心も知れている。三井倉庫の良い伝統を大事にしながらも、メーカー出身者ならではのプラスαをもたらしてくれることを確信している」と評価する。トヨタ自動車の知見を活かした現場力強化への期待も高い。「この数年〝圧倒的な現場力〟の実現に邁進してきた。そのためのKPI管理も行い成果も上がっているが、そこにメーカー起点の新たな目線を植え付けることで、現場力をもう一段高めてほしい」と語る。三井倉庫にとっては、初めてプロパー外からのトップを迎えることになるが、「社員の皆さんにとっては、ある意味でサプライズかもしれないが、『さらに変化を加速していく』というメッセージ、刺激策だと受け取ってほしい」と狙いを強調する。

トヨタからエアカーゴ、そして倉庫へ

今回の起用について、当の久保氏は「(人事を聞いたとき)率直に言って、驚いた。グループ内で進んでいる意識変革については、事業会社のトップとして発信する側にいたが、自分自身が刺激剤になることは想定外だった」と思いを語る。

トヨタ自動車では生産部品物流部長、車両物流部長などを歴任したほか、調達部門でもキャリアを積んだ。「トヨタでは多くを学んだが、トヨタの物流がすべてにおいて万能、というわけではない。お客様の業種や規模は多種多様で、ニーズも様々。そこはむしろ三井倉庫エクスプレスの6年間で学んだことがプラスになっている」。エアカーゴは緊急輸送などトラブル回避として利用されることもあり、ともすれば〝悪玉〟扱いされることも少なくないが、「三井倉庫エクスプレスに入って、エアが需給の調整弁としての役割が大きいことが理解できた」。在任中には「善玉エア」という言葉を商標登録。「需給の調整弁の最たるものが倉庫であり、その点でエアとの親和性も高い。これからは倉庫マネジメントと海上輸送や航空輸送を組み合わせて一体的なソリューションとして提供することがSCMのカギになる。そこを〝One三井倉庫〟として進めていきたい」と抱負を述べる。

トヨタ生産方式に代表されるオペレーション改革にも期待が集まるが、「三井倉庫でも現場力強化で一定の成果が出ているが、カイゼンにゴールはない。『これで良し』とならないのがトヨタ的であり、テクニック論ではなく心構えの問題だと思う。そこを伝えていければ」と強調する。

事業会社トップの経験を活かして

一方、三井倉庫社長からHDの人事・HR・IT部門を担うことになる木納氏について古賀氏は「在任中、三井倉庫の業績を伸ばしてくれた。社員からの人望も厚く、バランス感覚もある。これからはグループ全体を俯瞰するHDの立場から、いま最も重要な部門である人事やITを担当してもらい、さらに広い視野でグループ全体を見てほしい」と説明。「事業会社の立場で採用や働き方、情報システムなどについて〝こうあるべき〟という視点から今度は担当者の立場で実現させてほしい」と期待を寄せる。

木納氏は「事業会社で社長を務めながら、人材確保の難しさやIT高度化の必要性を感じていた。そこにコロナ禍が加わり、多様化する働き方への対応がさらに重要になっている。これからの三井倉庫グループの成長にとって非常に重要な分野を担うことになった」と気を引き締める。4年にわたる社長経験は新ポストでも大いに役に立つ。「グループの中でも従業員の数が最も多く、彼らの色々な思いを受け止める立場だった。それを採用や働き方改革などの施策に活かしていきたい。ITでもオペレーション面だけでなく、RPAによる事務効率化など全体のDXに取り組んでいきたい」と抱負を述べる。

トヨタの知見を一般物流で活かす

久保氏の後任として三井倉庫エクスプレスの社長に就任する一柳氏は、昨年末までトヨタ自動車で物流を長く担当。また、改善を指導する生産調査部の経験もあり、トヨタ生産方式のDNAを色濃く受け継ぐ人物。古賀氏も「トヨタ内でも高い評価を受けていたが、今回、是非にとお願いして来ていただいた。まずは、エクスプレスの社長として、顧客起点の物流をトヨタクオリティで実現してほしい」と高い期待を寄せる。

一柳氏は「最初はびっくりして少し悩んだが、声をかけていただいた有難さに加え、違う世界に身を投じるチャンスだと思った」と決断した経緯を語る。「トヨタの物流方式は、先人達が関係機能と一体になりシステマティックにつくりあげた世界。そこから学んだ知見を一般物流の世界でどう生かしていけるかが、今の一番の関心事」と新天地での抱負を述べる。

三井倉庫エクスプレスは、トヨタ自動車のハウスフォワーダーだったTASエクスプレスと統合した経緯もあり、トヨタ自動車由来の貨物が一定量を占める。「そこをベースにしつつも、それ以外の部分をいかに伸ばしていけるかがテーマだと思う。長くメーカーにいた実感として、荷主やお客様は物流会社からのソリューション提案を待っている。いかに先手を打って価値を提供できるかだ」と、成長に向けた展望を語る。
(2021年2月16日号)


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