加食業界、リードタイム延長で提言案を提示
食に関する6つの専門展示会を包括した複合展示会「FOOD展2021」が10月27~29日の3日間、東京ビッグサイト青海展示棟(東京都江東区)で開催された。28日には味の素、キユーピー、三菱食品、国分首都圏の4社と日本加工食品卸協会(日食協)による「『納品リードタイム延長問題』――メーカー・卸間の取り組み」と題したセミナーを実施。パネリストとして、メーカーから味の素上席理事食品事業本部物流企画部長の堀尾仁氏、キユーピーロジスティクス本部本部長の前田賢司氏、卸から三菱食品SCM統括オフィス室長代行の小谷光司氏、国分首都圏執行役員首都圏業務センター部長の殿村貴茂氏が登壇。日食協専務理事の時岡肯平氏がコーディネーターを務めた。
メーカー、卸の実証実験の概要を報告
セミナーでは今年6~7月に行われたメーカー・卸の連携による実証実験の概要を報告した。実証結果に基づき、日食協がまとめた「製配販各層に向けた提言」の案を提示。実証実験にはメーカー2社(味の素、キユーピー)と卸6社(伊藤忠食品、加藤産業、国分グループ本社、日本アクセス、三井食品、三菱食品)が参加。受注日の「翌日納品」を「翌々日納品」に切り替えた場合、受注締めを11時から13時に2時間後ろ倒しにする影響を検証した。
味の素は受注締め時間を遅らせることで物流事業者への出荷指示が13時から15時に後ろ倒しとなる影響を検証。キユーピーは「翌日納品・11時受注締め」「翌々日納品・13時受注締め」「翌々日納品・11時受注締め」の3案を比較し、効果や影響を計測した。
味の素の実証では荷揃えが夜間作業となる例があったが、直送・中継輸送や近距離・長距離のいずれも車両出発への影響はなかった。キユーピーの実証でも受注が後ろ倒しされても概ね物流上の不利益は生じなかった。一方、卸では13時受注締めの場合、総受注件数の71%を反映でき、15時まで締め時間を延ばせば95%までカバーできることから、流通品質を担保するためにメーカーが15時まで後ろ倒しすることが必要だとした。また「翌々日納品」では在庫の増加傾向が見られ、欠品の増加が避けられないとした。
製配販各層が歩み寄るべき項目を提示
これらの実証結果を踏まえ、日食協では製配販各層を対象にリードタイム延長を実現するために製配販各層が歩み寄るべき項目を示した。
それによると、メーカーへは、受注締め時間は13時締めを第1ステップとし、さらなる後ろ倒しの可能性に取り組む。締め時間の後ろ倒しの条件を配販と共有し、15時までの後ろ倒しの可能性を追求することや単発的に発生する緊急対応への柔軟な対応を行うことを提言。卸に対しては、メーカー発注の原則EDI化、緊急対応など負荷業務の抑制や、配販連携により精度の高い販売情報を共有し、需要予測の精度向上を図ることを示した。小売へは、特売や新商品の適正リードタイム日数の確保と計画の数量化や追加発注の抑制や、定番品の発注締め時間の前倒しへの協力、賞味期間に伴う納入期限の統一化を検討するよう提言した。
セミナーの締め括りに際し、味の素の堀尾氏は「リードタイム延長にとどまらず、加食業界の他の課題解決にも取り組みを発展させることが重要。今後は小売も含めたサプライチェーン全体で考えることが不可欠だ」と総括。キユーピーの前田氏は「卸とメーカーが連携して標準化・デジタル化を進めるなど、やるべきことは多い。ASNの活用や検品レスなども今後の課題だ」とした。三菱食品の小谷氏は「リードタイムの延長に関して、製配販で痛みを分かち合いながら各層の妥結点を見出したい」と述べた。国分首都圏の殿村氏は「実証実験を契機にメーカーと卸が改善に向けて同じ方向を向くことができた。この動きをさらに広めたい」と意欲を表明した。
(2021年11月2日号)