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経産省/国交省、フィジカルインターネット会議初会合

2021.10.12

経済産業省と国土交通省は6日、「フィジカルインターネット実現会議」の第1回会合をオンライン方式で開催した。2040年を目標とした物流の将来像として「フィジカルインターネット(PI)」の実現に向けたロードマップを策定することが目的。今回を皮切りに全5回程度開催し、来年3月末までにロードマップを策定する。併せて、同会議の下に業界ごとのワーキンググループ(WG)を設置し、30年までを目標とするアクションプランをつくる。ロードマップとアクションプランは今年6月に設立された官民物流標準化懇談会に報告する。

PIは近年欧米を中心に発達した物流に関する新たな考え方で、物流事業者、メーカー、卸・小売が一体となった全体最適の観点から効率的な物流システムの構築を目指すもの。IoTやAI技術を活用することで物資や倉庫、車両の空き情報などを見える化し、規格化されたコンテナやパレット積載された貨物を複数企業の物流資産(倉庫、トラックなど)をシェアしたネットワークで輸送するという共同輸配送システムなどを構築する。

会議冒頭、挨拶に立った経産省の畠山陽二郎商務・サービス審議官は「物流の危機的状況を打破するため効率化を極限まで進めるPIの実現に向け、オールジャパンで取り組む」と方向性を示した。国交省の寺田吉道公共交通・物流政策審議官は「総合物流施策大綱で掲げる物流のデジタルトランスフォーメーションや物流標準化を推進し、中長期的な視点からPIの実現を図る」と意欲を述べた。

「PIが物流分野の産業構造を変革する」との声

意見交換では、ローランドベルガーパートナーの小野塚征志氏は「世界で最も国際競争力のある物流をPIによって日本が実現するという目標を描くこともできる」と述べ、「その実現に向けて物流標準化や機械化・自動化が突破口になる」と強調した。日本ロジスティクスシステム協会理事の北條英氏は「PIではデータ共有型のプラットフォームが重要な役割を果たす」と指摘。PIでのプラットフォーマーとして「ITベンチャー、野心的な3PL、在来型から脱皮を図る輸送機器メーカー、リース会社や保険会社、金融機関などが名乗りを上げる可能性がある」と述べた。野村総合研究所上級コンサルタントの藤野直行氏は「PIは究極のオープンな共同物流機構であり、物流資産の最大稼働効率を目指す機能がある。PIを通じて物流分野の産業構造の変革が期待される」と語った。

東京大学教授の西成活裕氏が「PIは手段だが物流にとどまらず生産分野とも情報を共有することが必要だ」と指摘した上で、欧米とは事情の異なる我が国の物流を踏まえた日本型のPIの定義が必要だと強調した。

それに関連し、ロードマップやアクションプランには製造側の視点を盛り込むべきとの意見や、着荷主や消費者の観点も重要との指摘があった。

効率化推進は荷主が積極的な役割を果たす

全日本トラック協会物流政策委員会副委員長の原島藤壽氏は「トラック業界では約5万7000社のうち55%が車両数10台未満の小規模事業者であり、50台以上保有する事業者は6・5%に過ぎない。元請・下請・2次下請といった多層構造の中、荷主の力は絶大だ」と述べた上で、共同輸配送や納品時間の平準化など効率化を実施するためには荷主が主体となった積極的な取り組みが必要だと説明。さらに、PIが目指す輸送リソースの共有化に関して「トラック輸送の約3分の1を占める自家用トラックと営業用トラックの関係が今後の課題となる」と指摘した。日本冷蔵倉庫協会理事長の土屋知省氏は「異業種も含めた共同物流は効率化に資するものだが関係者間でのルールづくりやシステムの相互接続のためのコード共通化が不可欠となる」と述べた上で、PIの実現によるスムーズで効率的な物流への期待を表明した。
(2021年10月12日号)


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