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国交省22年度概算要求、グリーン化とDX推進に焦点

2021.08.31

国土交通省は8月26日、2022年度予算の概算要求を公表した。一般会計は6兆9349億円(前年度比1・18倍)となった。また、東日本大震災復興特別会計は380億円(0・95倍)、財政投融資は1兆7634億円(0・88倍)とした。このほか防災・減災や国土強靭化、新型コロナウイルス感染症対策などの事項要求を行う。物流関連では物流ネットワークを支えるインフラの維持・強化を推進するとともに、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、グリーン化を促進する。併せて、デジタルトランスフォーメーション(DX)の促進により働き方改革や物流生産性向上を加速する方針。

デジタル化・自動化を推進、DXを支える人材育成も

今年6月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度~25年度)」が掲げるDXの推進による物流生産性向上や「グリーン物流」の実現を図るとともに、自然災害に対応した強靭な物流システムの構築を主眼とした。物流生産性向上の推進では1億2800万円を要求。DXの前提となる情報や輸送機器、外装などハード面や出荷情報、製品情報、物流用語の統一などソフト面での標準化を進めるともに、業務のデジタル化や自動化機器の導入促進を図る調査事業を行う。また、DX推進を支える高度な物流人材の育成に注力する。

生産性向上をテーマとした新規施策では、倉庫内の遊休スペースの効率的利用の推進のため1500万円を要求。伝票やパレットなどの標準化と連携しながら倉庫スペースの規格の標準化を進め、遊休スペースの効率的な利用を図るため22年度に実証実験を行う。

18年度に内閣府が開始した戦略的イノベーション創造プログラム「スマート物流サービス」は22年度が最終年度となる。引き続き、物流・商流データ基盤の構築に向けた研究開発を進めるとともに日用消費財、ドラッグストア・コンビニ、医薬品医療機器、地域物流の4テーマでの物流効率化実証を実施。加えて新たな効率化テーマでの実証事業を行う予定。
グリーン物流の実現では環境省との連携により過疎地域でのトラック輸送からドローン利用による配送への転換や自立型ゼロエネルギー倉庫モデル導入支援事業として倉庫内の照明・空調エネルギー消費削減や無人フォークリフト・無人搬送車の購入やリース利用への支援を行う。

倉庫の物流DX支援では物流総合効率化法の認定計画に基づいて取得した倉庫施設の特例措置(倉庫税制)の延長を要求。倉庫でのバース予約システムに加え、自動化・機械化機器の導入を補助する。
災害に強い強靭な物流システムの構築に向け、「BCP策定ガイドライン」を作成する。大規模地震以外に豪雨や大雪、パンデミックなど多様化する自然災害に対応し、荷主と事業者の連絡体制や円滑な支援物資輸送の構築を支えていく。

ドライバー時短へ、ICTを活用した実証実験

自動車運送業関連ではデジタル技術を活用したトラックドライバーの労働時間短縮や電気トラック(EVトラック)、燃料電池トラック(FCVトラック)を利用したCO2排出量削減などを中心に予算を要求した。

トラックの働き方改革では予算1億円でトラック運送の実態調査を行うほか、ICT(情報通信技術)を活用することで農産品物流などドライバーの長時間労働が多い輸送品目での物流改善に向けた実証事業を行う。実証事業の詳細は決まっていないが3300万円の予算でICTによる作業情報管理や集荷量の変更情報の共有、最適な集荷ルートの策定などを検証する。

運行管理者の負担軽減にも引き続き取り組む。IT点呼や自動点呼の普及に向け、予算3400万円を要求した。

アルコール依存症のドライバー対策を推進

安全対策では健康起因事故防止や飲酒運転の根絶に注力する。22年度は新たに緑内障など視覚障害によって引き起こされる事故の防止を図るため、視野検査の普及に向けたモデル事業を行う。また、アルコール依存症のドライバーによる飲酒運転が多いことを踏まえ、事業者による指導監督やドライバーの自覚を促す方法に関して調査を経て指針を示す。

そのほか環境省と連携したエネルギー対策特別会計(エネ特)による低炭素ディーゼルトラックやEVトラック、ハイブリッドトラックなどの導入補助を継続。低炭素ディーゼル車や費用の2分の1から4分の1を補助する。また、EV車普及に向け、車両の導入や充電設備などの整備事業を22年度も実施する。車両への補助は標準的な燃費の車両との差額の2分の1から3分の2を補助。充電設備の導入費用は2分の1を補助する。

資源エネルギー庁と連携した取り組みでは引き続き、事業者と荷主の連携促進のため車両動態管理システムや配車計画システムの導入費用を補助する。また、サプライチェーン全体の輸送効率化を図るため、トラック予約受付システム、無人配送ロボットなどの導入費用の2分の1を補助する。要求額は現在調整中。また、電動モビリティのシェアリングによる地域での人流・物流のサービスの実現に向けた実証事業を実施する。
(2021年8月31日号)


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