メニュー

オタフクソース、持続可能な物流へサプライチェーンを改革

2021.08.05

オタフクソース(本社・広島市西区、佐々木孝富社長)は、持続可能な物流の実現に向けた取り組みを推進する。安定的な輸送網の確保、在庫の適正化、地球温暖化対策などをテーマに、各種プロジェクトを発足。今後も需要予測システムの開発のほか、卸企業との連携により、パレット単位での発注への協力を呼び掛けるなどさらなる物流効率化を目指していく。

BCP対策、CO2削減でモーダルシフト

同社は北海道、関東(神奈川)、中部(愛知)、関西(大阪)、広島、九州(福岡)の6ヵ所に物流センター(DC)を構え、主に本社工場(広島市西区)から全国各地に商品を届けている。北海道を除く各DCへの輸送はトラックが中心だが、CO2排出量を削減するため、関東向けはトラックに加え、鉄道輸送も利用。今年4月からは、2018年に発生した広島豪雨など年々高まる自然災害の対応として、一部RORO船を活用した海上モーダルシフトも開始した。

全国6ヵ所の物流センターのうち、九州DCを17年7月、関西DCを18年10月に開設。以前は、九州と関西に在庫型の拠点がなく、本社工場から現地に商品を輸送するのに、夜間にピッキングを行っていたため、庫内作業を担う物流パートナーの労働負荷が課題となっていた。DCを設置することで、夜間のピッキング業務をなくし、作業員の負担軽減を実現したほか、在庫の分散化で災害発生時の「運べない」リスクにも対応する。
また、地域ごとに物流パートナーと提携し、同業他社の商品を混載して得意先に共同配送する体制を確立することで、高い車両積載率を保っている。上昇傾向にある物流費を抑制しつつ、CO2排出量を17年比で約40%削減。今後も共同配送をさらに促進し、関東向けの車両積載率98%を達成する。

平均在庫日数を短縮、レンタルパレット化が契機に

19年4月から、自社の専用パレットから日本パレットレンタル(JPR)のレンタルパレットに切り替え、サプライチェーンの大幅な効率化を実現した。従来は1300㎜×1100㎜の木製パレットを使用していたが、使用済みパレットの回収や食品への衛生・品質管理の観点から、物流パートナーよりJPRの1100㎜×1100㎜のプラスチック製レンタルパレットへの切り替えについて提案があったという。
一方、仕様やサイズが異なるため、レンタルパレットの導入にかかる初期投資や運用費などが発生。上昇した分のコストを回収するため、サプライチェーン改革に着手した。

オタフクソース執行役員の小田孝広ロジスティクス部部長は「サプライチェーン全体を見直すため、生産・販売・物流部門が連携して『在庫イノベーションプロジェクト』を発足し、在庫適正化を図った」と振り返る。生産から出荷までの平均在庫日数を60日から53日まで短縮し、パレットの使用枚数を削減。過剰在庫による保管費用の圧縮と商品廃棄の抑制にもつなげた。
さらに、紛失や破損で必要となるパレットの購入費を削減。パートナーからはDC内における回収パレットの保管スペースの確保や返送にかかる車両の手配業務など運用にかかる作業がなくなったため、「業務が楽になった」などの声が上がっているという。

現在は平均在庫日数40日を目標に据え、需要予測システムの開発で新たなプロジェクトがスタートしている。

賞味期限の年月表示で物流面でもプラスに作用

同社では昨年から、賞味期限が1年以上の家庭用商品67品目について、賞味期限の表示方法を「年月日」から「年月」に変更した。製造日から賞味期限の3分の1にあたる期間内に小売店への納品が求められる「3分の1ルール」などの商慣習は、食品ロスだけではなく、配送や納品部門における生産性の低下を招き、労働者不足が進む物流業界でも大きな課題となっている。

製・配・販の各現場で月別の賞味期限管理とすることで、物流拠点間の転送を減らし、CO2排出量の抑制が見込まれる。賞味期限の日付ごとに分かれていた保管スペースも削減できる上、先入れ先出し作業の軽減による労働生産性向上で働き方改革にも貢献する。

物流業界の働き方改革に貢献、パレ単位の発注も

国土交通省の「ホワイト物流」推進運動にも参画。自主行動宣言では「パレット等の活用」や「異常気象時等の運行の中止・中断等」など計6項目を掲げている。その中で、最も重視していることはパートナー企業との連携だ。商品の積み込みなど一連の附帯作業を全て自社に取り込み、現在は車両到着後30分以内の出発を徹底するなどパートナー企業の働き方改革に貢献する。
小田氏は「当社は大手企業に負けないくらい働き方改革を強力に進めているが、それはパートナー様に対しても同様。当社の荷物を運んでいただけるよう、日々努力している」とし、「物流業界に働き方改革が広がり、物流効率化につながることを願っている」と語る。

今後はパレット単位での発注について得意先に協力を要請するなど卸企業と連携を深めていく。ある程度の物量を一度に納品する体制とすることで、物流費とCO2排出量の削減が可能となる。一方で、卸側は保管スペースを確保する必要があるため、打ち合わせを続けていく方針だ。

コロナ禍で家庭用ソースが伸長、店舗には様々な支援も

同社の商品は、家庭用と業務用の物量が約半分。昨年度は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、家庭用商品が大きく伸長した一方、お好み焼き店をはじめとする飲食店の営業自粛により、業務用商品は落ち込んだ。その中でもお好み焼き店に対する支援活動として、同社の製品を使用していない店舗にも、飲食物の「持ち帰り可能」を通知するのぼりを提供。また、当時不足していたパーテーションを一括購入し、希望する店舗に配付した。“お家時間”に最適なレシピも新たに開発した。

また、今年4月にはグループのユニオンソースを吸収合併した。ユニオンソースの物流センター(栃木県宇都宮市)をオタフクソースの関東DCに移管し、倉庫が1ヵ所となったことで、ユニオンソースとオタフクソースの商品を共同配送できるようになるなど物流効率化がさらに進んだ。
(2021年8月5日号)


関連記事一覧