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ランテック、横須賀~新門司航路で新サービス

2021.07.27

ランテック(本社・福岡市博多区、山中一裕社長)は1日に就航した東京九州フェリーの横須賀~新門司航路を利用して、新たな定温輸送サービスを開始した。同航路の就航船に専用の衛星通信アンテナを取り付け、国内で唯一となるフェリー航送中のリアルタイム温度監視と冷凍機の遠隔操作を実現したもの。これにより、トラックや鉄道利用時と同レベルの温度管理品質を確保したフェリー輸送サービスを可能にした。

東京九州フェリーの横須賀~新門司航路は、両港を21時間で結ぶ高速性が大きな特徴。横須賀および新門司港を24時前に出航し、翌21時前後に到着するスケジュールは中1日配送が可能で、「関東~九州を結ぶ鉄道コンテナ輸送やトラックの一人運行とほぼ遜色ないリードタイム」(甲斐田一男・生産管理本部経営戦略室室長)という。フェリーを利用することで、交通渋滞や事故のリスクを回避して発着の定時性を確保するとともに、環境対策や無人航行による労働省力化にも対応。さらに、車両は船内格納となるため温度・湿度安定や振動の減少などの安全性も向上するという。

一方で、ランテックがトラックや鉄道輸送時に標準サービスとしてきた荷室内のリアルタイム温度監視は、船倉まで電波が届きにくいことから対応が困難とされてきた。そこで、同社では横須賀~新門司航路にする就航船2隻の船倉に各4基の専用ルーターを取り付けるとともに、船尾に衛星通信アンテナを設置。船倉内のどこにトレーラを駐車しても衛星通信が届く環境を整備した。

これにより鉄道輸送時と同様に、荷室内の端末から10分置きに温度情報が伝わるとともに冷凍機の遠隔操作にも対応した。設定温度に対し、庫内温度にズレが生じた場合、24時間体制で稼働するランテックの事務所に、警報と冷凍機の故障内容が通知され、必要に応じて冷凍機を遠隔操作して電源のオンオフや設定温度の変更が可能。冷凍機故障時には到着港に整備担当者が駆け付け、故障内容に応じた修理が迅速に行える体制を整えた。これは鉄道輸送時に使用している動態温度監視システムの経験を活かしたもので、無人航送時も同様の輸送品質を提供する。

フェリー会社側でも通常、冷凍機の見回りは基本的に数時間ごとの目視により到着までに3~4回行っているが、「さらなるトレーサビリティ強化のためにも、今回のシステムを導入することでより高い管理とした」と原弘規常務取締役生産管理本部長兼自動車・鉄道管理部長は説明する。

ランテックでは新門司港の至近に「門司支店」(北九州市門司区)があり、関東側でも「湘南支店」(神奈川県伊勢原市)、「京浜支店」(川崎市川崎区)、「かわさきファズセンター」(同)を構えることから、各支店を活用した効率的な輸配送が行えることも強みのひとつ。さらに、同社がフェリー航送に使用する冷凍セミトレーラ(写真)はパレット積載枚数を通常より2枚多くした24枚積みに対応しており、荷主企業の大量一括輸送ニーズに安全・安心の品質で応える。

フェリー利用の拡大へ大阪港などでも検討

現在、横須賀~新門司航路では毎日セミトレーラ1本を往復で輸送しており、上り便は同社の小口混載定温輸送サービス「フレッシュ便」を、下り便では定温管理の菓子製品などのメーカー商品を運んでいる。温度管理機能などを活かして、今後同航路の利用をさらに拡大する考えにあるが、基本的には既存の鉄道・トラック輸送からのシフトではなく、新規顧客の獲得を図っていくという。冷凍食品や日配品、農畜産品などの利用が見込まれ、荷主企業の間でも環境対応や長距離輸送におけるドライバー不足や労務環境問題対策への関心が高まっていることから「提案は非常にしやすい状況」と甲斐田氏は話す。

ランテックではこれまで、長距離輸送においては31ft鉄道クールコンテナの利用を中心としてきたが、2018年の西日本豪雨災害による山陽線運休を契機にリスクヘッジとしてフェリー輸送の利用を検討。関東~九州は既存航路だとリードタイムが合わず活用が難しかったが、横須賀~新門司の新航路が就航したことで「当社の輸送力と総合力を活かせる新たな輸送モードとして利用を増やすこととした」と原氏。同航路のほかにも、大阪南港発着便など、同社の既存支店を活用できるフェリー航路の活用を前向きに検討していくという。
(2021年7月27日号)


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