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GENie、宅配事業でメディカル分野が急拡大

2021.07.01

セイノーグループでラストワンマイル事業を担うGENie(本社・東京都中央区、田口義展社長)でメディカル配送事業が拡大している。昨年12月から、処方薬の“即時”配送サービス「ARUU(アルー)」を開始するとともに、今年5月には同サービスのインフラを用いたがん検査の検体輸送も3都市でスタート。同事業が今月から全国主要都市へ業容拡大することに伴い、今期中に処方薬の配送ネットワークも全国で確立したい考えだ。

ラストワンマイル配送網をオープンPF化

GENieは2017年4月に、セブン‐イレブン・ジャパンの“お届け専用会社”として、セイノーホールディングスの100%出資により設立された。“買い物弱者”の解消に向けて“お届け・御用聞き”サービスを提供する宅配スタッフ「ハーティスト」が、蜘蛛の巣のように張り巡らされた配達網で商品を届ける「スパイダーデリバリーネットワーク」の構築を目指しており、現在はハーティスト160人が在籍している。

今回新たにメディカル分野にも業容を拡大。調剤薬局チェーンを展開するミライシアホールディングと、札幌市および小樽市の一部で処方薬の即時配送サービスを試験的に開始し、患者や薬局から高い評価を得たことで「ARUU」としての本格展開に至った。

今年1月には、セイノーホールディングスがアンカーLPとして参画しているLogistics Innovation Fundが出資するオンライン薬局「ミナカラ」が東京都内でARUU(サービスイメージ)の利用を開始。処方薬の宅配では、5月に「阪神調剤薬局」などを展開するI&Hからも神戸市内の配送を受託したほか、他県においても別の調剤薬局チェーンがARUUの活用を開始している。
処方薬以外のメディカル関連品の宅配も広がっており、5月にはHIROTSUバイオサイエンスからがん検査の検体輸送を一括受託し、まずは東京都、名古屋市、大阪市などの政令指定都市で稼働した後、今月末には全国47都道府県での業務がスタートする計画にある。また、訪問看護に用いられる医療機器の宅配なども行っている。

コロナ下でメディカル分野でもラストワンマイルニーズはますます高まっており、調剤薬局や医薬品卸などからの問い合わせは急増しているという。とくに、医薬品などを扱う事業特性上、品質管理レベルを重視する荷主企業は多いが、ARUUとしての受託案件が増えていることも、こうした企業への安心と信頼感につながっているようだ。

その上で、メディカル関連品のさらなる取扱拡大に向けて、先月からARUUを個建て料金で利用できる新プランを東京23区においてリリースした。これまでは基本的に車建てでの契約だったが、「まずは多くのお客様に少量でもARUUを使ってもらい、品質が確認できた上でお届け事業の拡大を検討してほしい」と田口社長は話す。

処方薬宅配市場が拡大、コロナで事業化進展

メディカル分野の宅配については、3年ほど前から構想を開始。ハーティストの訪問先から「薬も一緒に届けてくれないか」との声が多く寄せられたことがきっかけとなった。そうした中、新型コロナの拡大に伴い、処方せんの服薬指導に関する規制緩和が行われたことで、事業化が大きく進展した。

田口氏は、「現在、日本における処方薬の宅配率は0・51%に留まるが、米国では30%に上る。コロナ下で宅配サービスの浸透が進み、日本においても処方薬宅配市場は拡大が見込まれる」と展望する。
こうしたビジネスには大手宅配会社も参入しているが、「宅配便は基本的に診療翌日の配達となり、処方せんを返送する必要もあるが、ARUUは即日配送で、処方せんもその場でハーティストに手渡せば返送不要となる。ただ、大手宅配会社とはそれぞれの強みを活かした棲み分けができるはず」(同)と見る。

セイノーグループでGENieと同じくラストワンマイル事業を展開するココネットとの連携も検討していく。同社ではスーパーマーケットの買い物宅配やネットスーパー、通販宅配を扱うほか、ギグワーカーなどによる置き配サービスを用いたLCC宅配も構想している。田口氏は「今後、商品や配達先の要望に応じて多様な配達手段を最適に使いわけていきたい」と話す。
(2021年7月1日号)


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