エスライン、特積み以外の収益拡大へ新部署発足
エスライン(本社・岐阜県岐南町、山口嘉彦社長)は今期、特積み分野以外の収益拡大に向けた専門部隊を立ち上げ、輸送サービスの充実を図る。併せて、IT機器やマテハン設備の積極的な導入で、生産性向上と利益率の上昇にもつなげる。5月28日にオンライン方式で行われた2021年3月期の決算説明会で山口社長が説明した。今期は中期経営計画(20年3月期~22年3月期)の最終年度に当たるが、新型コロナの影響もあって当初計画(売上高560億円、経常利益25億7000万円)には届かないものの、売上高500億円(前期比4・6%増)、経常利益18億3000万円(12・3%増)の2ケタ増益を見込む。
今期重点施策としては、中期計画の柱のひとつである事業構造改革「輸送サービスの充実」への取り組みとして、エスラインギフの「物流開発部」内に貸切・専門輸送・国際物流・引越サービスなどを専門的に行う部署を発足させ、各分野における収益の拡大を図る。
同社グループ事業会社の拠点が多く所在する中部地区をドミナントエリアと位置付けた「中部地区ドミナント戦略」では、同地区のグループ事業会社がドライバーと車両の状況を共有し、荷主の要望に応じた多様な輸送サービスに対応する車両を適切に配車する「配車センター」を開設する。
また、名古屋港に入港するコンテナのデバンニングから一時保管・流通加工、さらには国内配送までの物流サービスをシームレスに提供する「コンテナセンター」も稼働し、両センターの内容を充実するとともに質を高め、関東や関西への展開も視野に入れる。
さらに、「物流サービスの拡大」に向けて、物流施設での作業効率向上や自動化を推進。とくに、今年4月に開設した「小牧物流センター」(愛知県大口町)は同社初のグループ2事業会社による協業物流センターであり、上層階で商品保管と自動ソーターによる物流加工業務を行い、その商品を1階から特積み輸送や貸切輸送で発送できることを強みに、安定稼働と拡大を進める。
「働き方改革」では、ITによる効率化を進め、通信型デジタルタコグラフやAI配車システムなどのIT機器や自動ソーターなどのマテハン機器を積極的に導入し、配送業務や倉庫内作業の効率化、生産性向上につなげる。人材育成も強化して、支店長を中心とした管理職員を対象に強化プログラム教育を実施するほか、学卒入社を対象に運転免許取得支援制度も拡充する。
AI用いた配車効率化が外部委託費の縮小に寄与
前期(21年3月期)の決算は、売上高が477億8200万円(2・5%減)で2期連続の減収も、営業利益は15億300万円(54・4%増)、経常利益は16億2900万円(54・0%増)と2期ぶりの増益を確保した上、経常利益は過去2番目の最高益を達成した。
貨物輸送量は前の期からの減少傾向が続き、下期には回復に転じたものの、通期では特積み輸送量が139万t(6・7%減)、貸切輸送量146万t(3・3%減)といずれもマイナス。営業日数は前期より1日増えたが、月別の輸送量は全ての月で前年同月を下回り、特積み収入も249億9700万円(5・7%減)と減少した。
こうした中、利益面では、減収によるマイナス影響を外部委託費減によるプラス効果で吸収した。運行コースの改善や運行効率の向上、幹線便の自社化により、21年3月期第4四半期における外部委託費比率は前年同期から3・1ptマイナスの41・0%、幹線便自社化率は5・1pt上昇の59・8%へ改善した。
具体的には、AI配車システムを用いた配車コースの検証が奏功。AIによる配車計画を参考に各現場で効率的な配車を考え、幹線運行でも各車両の配車や積載状況をデータ設計した。この結果、外部委託費は幹線運行で月5000~6000万円、集配で同約2000万円ほどの削減効果を達成している。
(2021年6月3日号)